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22-2

「どうするんだ。今この場で登録すりゃ、階段上がって来る金も必要ねえぞ」

「あっ」

「いったん下の階に戻ってから考えるってんなら、次はここまで上がって来るのに金を払わなきゃならねえ」


 今なら全部タダ!

 さ、詐欺じゃないだろうな。


「リヴァ、登録しちまえ。せっかくタダなんだからよ」

「お、俺、騙されてないよな?」

「ぶわっはっは。だーいじょうぶだって。こいつとは二十年来の付き合いだ。顔はこえーが、人を騙すような男じゃねえ」

「おいエルヴァン。顔がこえーは余計だクソ」


 神父とは顔見知りなのか。まぁ神父だって冒険者だったんだ、知ってる奴だっているだろう。

 あ、冒険者登録って……もしかして種族とか──


 セシリアは登録させない方がいいだろう。


「はいっ」

「お、そっちの嬢ちゃんは登録する気満々みてぇだな」

「え、いや、おい。セシリア」


 それはダメだ。

 でもどうやって誤魔化す?

 神父を見ると、あろうことかこの中年、セシリアの肩に手をまわして「そーかそーか」なんて言ってやがる。


「で、リヴァはどうすんだ? (心配すんな。カードに出るのはステータスの数字だけだ)」

「え……本当か?」


 神父が頷く。

 そういえば神父のカードも、ステータスしか出てなかったな。


「じ、じゃあ……ここで登録します」

「よし、じゃあ待ってろ。今カードの準備をするからよ」


 ギルドマスターが部屋を出ていくと、さっきの職員二人も一緒に出て行った。

 準備って何をするんだろう?


「カードはな、特殊なマジックアイテムだと思えばいい。持ち主の血を垂らすことで、その瞬間のステータスを表示するマジックアイテムだ」

「その瞬間って、あぁ、つまり登録したステータスじゃなくって血を垂らした時のステータスを表示するのか」

「そういうことだ。ステータスが成長しても、その都度血を垂らせばどんだけ増えたか分かるって訳だ」

「ふぅーん。そのカードの準備に手間取るのか」

「カードを悪用されねえようにな、厳重に封印されてんだよ。封印はギルドマスターと職員複数の同時作業でしか解除できねえ。それにまぁ、三十分ぐらいかかるんだよ」


 意外と大変みたいだ。


「あ、冒険者登録、本当にセシリアは大丈夫なのか?」

「ん、はい?」

「カードはステータスの状態しか読み取らない」


 神父がカードを取り出し、ステータスが表示されるのとは違う裏面を見せた。

 そこに神父の名前と数字が刻まれている。数字は151。


「この名前は手彫りだ」

「え、自分で名前を彫るのか!?」

「いやぁ、俺はギルドの職員に頼んだよぉ。あんま字は綺麗じゃねえからさぁ」

「そうなんだ……じ、じゃあ俺も頼もう」


 カードには他には何もない。


「こんなうすっぺらいカードだからな。ステータスを表示させる以上の性能は、付与できねえんだよ」

「あぁ、それが限界ってことか」

「ただ身分証明書にはなる。カードに名前を彫っておけば、持ち主が誰だか分かるだろ。もし別人がそれを拾って悪用しようとしても、血を垂らせば本物の持ち主かどうか分かるんだ。他人の血には反応しねえからな。やってみるか?」


 それならとちょっと試してみた。

 ハンマーの刃で指に小さな傷をつけ、血をカードに付ける。


 ……反応しない。

 へぇ、さすがマジックアイテムだ。


「んぉ、んぉ……わたひ、とーろうして、いいの?」

「あぁ、心配ない。身分証はあると何かと役に立つ。持ってる方がいいだろう」

「うん、はいっ」


 一安心したところで──


「ただ待つだけって退屈だな」

「だなぁ」

「ぶぅー」

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