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20-2

「じゃあ岩塩と胡椒とか、とにかく料理に使える調味料系とか頼むよ。人間の町に行かなくていいからな。安全に手に入る、物々交換でいいから」

「はい」

「魔石以外に何があるといい?」

「んー、こえとか、こえ」


 空間収納袋をセシリアに持たせ、地上で食料を仕入れて来て貰うことにした。

 何日もダンジョンに引き籠るためには、食料が必要だ。

 地下街で買う物より、セシリアが持って来る地上の食べ物のほうが断然美味いので、どうせならそっちの方がいい。


「ハ、ハムがあったら……嬉しいんだけどな」

「うん、はいっ。さん、にち、ぐあい」

「三日ぐらいか?」

「はいっ」


 地下街に来るときは夜にしろと念を押して彼女を見送った。

 

 寝床には戻らず、教会へと向かう。

 今回の件でギルドから事情聴取があるだろうって、神父が言うので、教会で待ってなきゃいけないからだ。


「お、セシリアちゃんは帰ったのか」

「あ、あぁ。帰ったよ」


 神父にはセシリアが有翼人だってのは話してない。

 ダンジョンで知り合った──としか言ってなかった。


「外は暗いけど、大丈夫なのか?」

「いつも夜だったし、大丈夫だ──うぇ!?」


 外はって……セシリアが外に出たの、知ってるのか!?


「はっはぁーん。あのなぁリヴァ、俺様は超絶イケメン最強神父だぜえぇ。知ってたに決まってんだろ」

「し、知ってって……どこまで知ってんだよっ」

「んふぅー。お前がー、あの子にー、惚の字だってグハァ。急に殴るとか酷いリヴァくぅん」

「次はこっちで殴るぞ」


 神父に貰ったハンマーをチラつかせた。


「それさすがに死ぬから止めて。ったく、わーったよ。アレだ。お前ぇが随分前に聞いてきただろ。エルフやドワーフ以外の亜人について」

「あ、あぁ」


 セシリアが上から落ちてきた後の話だな。


「そん時お前、有翼人の話したら表情変わったんだよ」

「ちっ。目ざとい奴だな」

「観察力が鋭いと言って欲しいなぁ。冒険者になるなら大事なことだぞぉ。あと乙女心を知る上でも大事なんだからな。今のままだとモテないぞお前ぇ」


 ほんっとこいつは的を射たことを不真面目に言いやがる。


「まぁあとな。俺はここで身寄りのない子供を拾っては面倒みてんだ。親のいるガキだって、だいたい顔は覚えてんだよ。そもそもあんな綺麗な子がいたら、俺が忘れる訳ねえだろ」

「ロリコンめ」

「いやぁー、リヴァくんったらぁ。でもほらぁ、ロリコンなんていくらでもいるだろう。それでなくたってこの町じゃ、ちょっと見た目が良ければ直ぐに人攫いに連れて行かれるんだ。あの年齢までここにいるような子じゃねえんだよ」


 だから外から来た女の子だってのは、見た時から確定していたらしい。

 確かにな……この教会で暮らす子供たちの八割は男だ。

 そしてこの教会にいたって、教会の外にでてひとりで歩いてりゃ、連れ去られることもある。

 実際、俺が幼い頃に女の子が遊びに行ったっきり帰ってこないなんてことが何度かあったし。

 そのたびに神父は女の子を探し回り、帰って来た時には泣いて自分を責めていた。俺たち子供には見えない場所で──だが。


「とにかくな。絶対に他の奴らには知られるな」

「や、やっぱマズいのか」

「あぁ。有翼人は今や希少種だ。希少ってことはそれだけで価値が上がる。有翼人は奴隷の中でも最も高値で取引される種族だ」

「それを知ってる奴に見つかれば、狙われるのは必須か……」

「まぁ世の中悪い人間ばかりじゃねえ。絶対にそうなる訳じゃねえが、どこに悪い奴らが潜んでるか分からねえからな。危険を避けるために、隠しておく方がいいだろう」


 話さないのが吉。それは変わらないってことだ。


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