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2-2

 強奪スキルの検証を始めて一週間。

 このスキルは一日一回しか使えないことが判明した。


 更に一カ月──このスキルが失敗する条件が分かった。


[対象の筋力が術者の筋力を下回っているため、強奪に失敗しました]


 相手のステータスが俺より高くないと、強奪は出来ないらしい。

 しかも失敗も一日一回にカウントされ、この日は強奪スキルの使用が出来なかった。


 翌日、同じ相手に今度は『体力』の強奪を試みる。

 これは成功した。


 つまりステータス単位で成功判定があるんだな。

 しばらくは体力一本に絞って、失敗するようになったら敏捷の強奪、それから魔力だ。


 そうして三カ月も過ぎると、全ステータスの強奪が失敗するようになってしまった。

 平均すれば一つあたり30ぐらい増えたことになるはず。

 元々のステータスがどのくらいだったか分からないから、なんとも言えないなぁ。


 困ったときは生臭坊主だ。

 物心ついてから九歳になる頃まで、俺もあそこにいた。

 前世の記憶が蘇る前の俺は、ここでの食い扶持を減らすために自分から教会を出て行ったんだ。

 時々戻って来ては怪我を治して貰ったり、休んだりはしていたけどな。


「おーい、なま──神父」

「あぁ? わざわざ言い直しやがったなクソガキ」


 神父の癖に口が悪い。

 だけど俺が頼れる大人はこの人しかいないし、実際物知りなんで助かっている。


 知りたいのはこの世界の一般人の平均ステータスだ。

 冒険者はあれこれ突出しすぎていて当てにならない。


「神父。ステータスの平均値ってあるのか? こう……一般人の平均とかさ」

「まぁたステータスか。知ってどうするんだ? 冒険者カードや教会の鑑定水晶で見る訳でもないだろうに」

「鑑定水晶!? そ、そんなのあるのかよっ」

「でっけー教会にはない。もちろんここには──」


 小さい教会だしある訳ないか。


「あーあー、期待しねぇ。で、平均的な数値ってあるの?」

「まぁ……はぁ……この俺様が教えてやろう! なんせベテラン冒険者だからな」

「元だろ」

「だいたい魔力以外は40前後ぐらいだ。魔力は20ぐらいだな。お前ぐらいのガキで50以上あれば、将来魔術師になれる可能性もあるってぐらいだぞ」


 魔力は他のステータスより低いのが当たり前なのか。


「神父のステータスってどんくらいだっけ?」

「俺様かー? ふっふっふ、見たいんだな。輝かしい俺様のステータスを!」


 神父はポージングを決めて懐からカードを取り出すと、指先をガリっと噛んで血を滴らせた。

 カードは血によって反応するらしい。


 血のついたカードには、神父のステータスが浮かんだ。


 筋力:98 体力:397 敏捷:139 魔力:2018


「は? なんだよこのめちゃくちゃなステータス。魔力四桁って……。それ以外も一般人の平均を軽く超えてんだけど」

「ふっふっふ。まぁそれぐらいないと、冒険者なんかやってらんねえよ」


 普通に生きていく分には、さっき言った魔力以外は40前後、魔力も20ぐらいで不自由なく暮らせる。

 それ以上を必要としないなら、わざわざ体を鍛えたりはしない。


 ──と神父は言う。

 だけど一般人であっても、重い物を運ぶ仕事をしている人の筋力や体力はもう少し高い。

 足が速い──と言われる人も、普通よりは敏捷が高かったりする。

 これも神父の話だ。


「じゃあ……ゴロツキどもとかも?」

「んぁー、そうだなぁ。奴らも他の連中よりかは、少し高いだろうなぁ。ま、俺様程じゃあねーけどな」

「はいはい。ありがとうな、神父」


 話を聞いて教会を出た。

 一般人の平均が40前後……俺は子供だから半分だと仮定して……筋力、体力、敏捷は50前後ぐらいまで上がった……のかな?

 強奪していた相手がゴロツキばかりだし、他より少し数値が高いかもとしたらそんなもんだろう。


 ──長生きしろよ坊主。


 そう言われたんだ。絶対長生きして見せる。

 そうだな、差しあがって目標は──


「前世と今の年齢を合わせた二倍!!」


 えぇっと、前世が二十三歳で事故死して、今が十歳。

 合計三十三歳だな。

 その二倍ってことで──六十六歳。


 うん、ささやかな目標だな。


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