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2-1

 ステータスオープン!

 ──は、この世界にはない。

 冒険者になるとカードが発行され、それには持ち主のステータスが表示されるらしい。


「リヴァ、そんなこと聞いてどうするんだ?」


 地下三階の町でただ一つの教会。

 俺みたいな親のいねー、地下街で暮らすガキどもに飯と寝床をくれるお人好しの神父は元冒険者だった。

 自称、超一流らしい。

 超一流がなんで地下街にいるんだよっていう。


「どうもしない。知りたかっただけだ」

「ふぅーん……なぁリヴァ。お前、スタンピードからこっち、随分とスレたガキになってねぇか?」

「うっせぇよ生臭坊主」


 前世の記憶が蘇ったのに、十歳の子供を演じられるか。


 スタンピードが鎮圧されたのは、発生から二日経ってからだ。

 鎮圧された翌日には、ダンジョン三階の地下街と四階五階の資源区画に転がる遺体の回収が行われた。

 俺も遺体を埋めるための穴を、朝から晩まで掘り続けた。

 次々運ばれて来る遺体に、あの人がいないことにほっとすることも。

 だけど……モンスターに喰われたことで指の一本すら残っていない人も相当数いる。


 だから、生きているなんて希望は抱けない。


「おいリヴァ。ぼぉーっとしてどうしたんだ、あ?」

「……どうもしねぇ。教えてくれてありがとな生臭坊主」


 教会を出た俺は、ある場所へと向かった。

 この地下街でゴロツキどもがたむろしている、所謂スラムってところだ。

 そこには地上で罪を犯した罪人たちが集まっている。

 賞金首だの、金持ちや貴族に手を出したような奴らでもない限り、地下街まで衛兵が追って来ることはない。

 だから地下街には罪人が多いし、人口の一割はそうだろうな。


 あの日、前世の記憶が突然蘇った俺が使えるようになったスキル。

 一つは『一時停止』とでも呼ぼうか。

 もう一つは『ステータス強奪』だ。


 ステータス強奪は一時停止させている状態でしか使えないらしい。

 それはあの日、逃げている最中に使っていた一時停止の時にも分かっていたことだ。

 そして一時停止も強奪も、モンスターだけでなく人間相手にも使えた。


 面倒なのは一時停止が肉体の行動のみに影響していること。意識はしっかりしているってことだ。


「でも寝ている相手なら、止められていることにも気づかないよな」


 ゴロツキ相手ならステータスを強奪しても罪悪感はない。

 ってことで、その辺で眠りこけている奴らで実験だ。


 この世界のステータスは『筋力』『体力』『敏捷』『魔力』の四つ。

 ステータスを選択してくださいって声がしたし、選ぶ必要があるんだろう。


 路地から顔を出すと、あっちにもこっちにも寝ている馬鹿がいる。

 

 止まれ──と念じて瞬き。

 寝ている相手なので止まっているのかどうか分からないが、顔の横に黄色い三角マークが出たので成功だ。


 この一時停止、効果範囲は結構広い。

 俺の視界に映る、姿かたちがはっきり認識できる範囲のようだ。

 ただし範囲内にいても障害物の向こう側にいる奴なんかには効果が無い。

 俺が見ている──それが絶対条件だ。


 黄色いマークは距離感無視して触れることが出来る。

 さて、まずは『筋力』の強奪だ。


[強奪するステータスを選択してください]


 という声のあと、筋力と念じる。


[筋力を1強奪することに成功しました]


 やった!

 って、たったの1かよ。しかも成功しましたってことは、失敗もあり得る?

 何度かやってみれば分かるか。


 再び一時停止を使って──あれ? 黄色いマークが消えた!?




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