14-2
「かはぁーっ!?」
「ひぅっ」
女の声がして、思わず腕を振った。
「あうっ」
バンっと腕に何かがぶつかる音と感触がして、女が──セシリアが倒れた。
「うぁ。わ、悪いっ。大丈夫かセシリア!?」
「いいぃぃ……ぁい」
返事はしたが、かなり傷むみたいだ。
どうやら俺が肘鉄を喰らわせてしまったようで、右頬が赤くなっている。唇も切ったようだ。
「ごめん、ほんとごめん」
「ぁい。ぁ、ぁ……おう、しとぁの?」
どうしたの……か。
痛い思いをしたのは自分だろうに。
「ちょっと嫌な夢を見たんだ。ぜ──昔、人に騙されて死にそうになった時のことをな」
実際には死んでるんだけど。
「唇切ってるな。ほっぺたも赤く腫れてきてるし……ゴミポーションを使うか、それとも神父の所にでもい──」
ふわりと、俺の髪にふれるものがあった。
撫でられている。
セシリアが俺の頭を撫でている。
「は、おい、ちょっ」
子供に撫でられるとか恥ずかしいんですけど!?
「おし、おし」
そう言ってセシリアは俺の頭を抱き寄せた。
とくん。
聞こえるのは彼女の鼓動。
それとも……俺の?
「おしおし」
「いや、それ言うなら『よしよし』だから」
「お……いぃぃ……」
なんで怒るんだよ。八つ当たりだろ、それ。
まったく。年下のお子様になでなでされるとか、恥ずかしいったりゃありゃしねえ。
しかもこいつ……また一段とお胸様の発育が──
──隆二、私の胸、気持ちいい?
「うぐっ」
「いぃ、いい?」
気持ち悪い。
「いーば、いば……」
「悪いセシリア、少し……少し離れてくれ……」
気持ち悪い……
女が気持ち悪い。




