9-1
*カクヨムに投稿している1話分を、なろう向けに1話アタリの文字数を減らして分割投稿しています。
1/11までに投稿していたのは12-2。順次アップしていきますが、内容の変更などは一切ございません。
「っち。薬草を切らしちまったか」
「薬草? 神父が薬なんて必要なのかよ」
最近は畑と資源区画での仕事を辞めて、ダンジョン十階での狩りをメインにやっている。
魔石以外にもドロップアイテムがあるので、それも含めれば平均して一日大銅貨二枚の稼ぎになる。
畑と資源区画で働いて貰う金より、こっちの方が多い。
その日の稼ぎを預けに来たんだが、薬草がどうとか神父が呟く。
「あのな、魔法は万能じゃねえっつったろ。神聖魔法で治せるのは怪我だ。あと毒とか麻痺とか呪いとかの、状態異常効果だけだ」
「あぁ、病気とかは治せないって奴か」
「そういう事だ。解熱剤や腹下しに効く薬草は、常備しとかねえとな」
それも全部子供たちのためだもんな。
生臭だけど、根が善人過ぎるんだよ神父は。
「でも薬草なんて地下街じゃ高級品だろ?」
「だから直接自分で取りにいくのさ」
「え……神父が? つかどこに薬草があんだよ」
「あぁ、地下十一階にあるぞ」
ダンジョンに生えてんのか!?
「そうだ。お前も行くか?」
「い、行くって、十一階か?」
「あぁ。十一階の魔法陣は踏んであるんだよな?」
「まぁ一応」
十一階の転移装置を使うには金が要る。でも魔法陣を踏むだけならタダだ。
いつかの時のために直ぐ十一階に行けるよう、一度そこまで下りて魔法陣を踏むまではしていた。
ステータスの強奪もしておきたいところだが、いくら待ってもモンスターが来なかったんだよなぁ。
「十一階のどこまで進んだ?」
「進んだって言われても、魔法陣踏んだらすぐ上に引き返したから……」
「あぁ、そうか。あそこな、少し進むと外に出るんだよ」
「外?」
「外……」
神父の奢りで十一階まで転送し、そこから歩いて最初の角を曲がると……
通路の先は明るくなっていて、出口のようなものが見えた。
「あぁ、外だ。ただし作り物の世界だけどな」
「作り物?」
神父が言った意味は直ぐに分かった。
通路を進むと確かに外に出る。
どこまでも草原が広がり、見上げれば青い空が続く。
ただし──
「太陽が……ない」
「そ。太陽がねえんだ。ここは所詮ダンジョン内だ。どんなに見てくれをそれっぽくしても、地下であることに変わりはない」
「どう、なってんだ?」
風だって吹いている。だけどこの草原には終わりがない。
地平線の彼方までずーっと草原なんだ。
「魔法で作られた世界──とでも考えとけ。どこまでも続いているように見えるが、ずーっと真っ直ぐ歩くと分かるが、途中で見えない壁にぶつかるんだぜ」
「へ、へぇ……あ、この草原に薬草が生えてんのか?」
「いいや。ほれ、あそこに岩みたいなのが見えるだろう」
「んー、あぁ、なんか不自然に四角い岩だろ」
神父がその方角に向かって歩き出す。すると目の前の草むらからモンスターが突然──そう、それまで見えなかった奴が突然出てきた。
「リヴァ、たすけてぇー」
「棒読みいぃ!」




