表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/111

8-2

「あい」


 春の訪れをセシリアが持って来た。

 花だ。

 しかも根っこごと持ってきやがった。


「セシリア、ここは日差しも届かないし、持って来ても枯れるだけだぞ」

「ううん。おぉ、おぉお」


 天井と地面を交互に指差す。

 あぁなるほど。

 空気穴の真下なら、多少は日差しが届く。ここに植えろってことか。


「はぁ、これでいいですか?」

「あいっ。にひぃー」


 たまに水やりに来てやらないとな。


「水石の出番もありそうだ。そういやお前、ダンジョンに入っているらしいが、どうやってモンスターを倒してんだ?」


 これまでセシリアが見せた武器になりそうなものは、小さなナイフぐらいだ。

 でもあれじゃあなぁ。俺の採掘用ハンマーの方がマシだろう。


 防具──はおろか、まともな服すら着ていない。

 薄汚れた丈の長い上着に、七分丈のズボン。わりと最近まではその上から毛皮を羽織っていただけ。

 

「ま、まおぉー」

「魔王!?」

「いぃぃーっ。【まほう】う!」

「魔法かよ──って、魔法が使えるのか!?」

「にひぃー」


 セシリアはふんぞり返ってドヤ顔を見せた。

 まさか魔術師だったとは……驚いたぜ。


「どんな魔法が使えるんだ?」

「んー、【風】」

「ほぉほぉ。で?」

「んぎぎ。いいぃぃぃーっ!」


 どうやら風の魔法だけらしい。

 しかし風の魔法って……風属性のことなのか、それとも風という名前の魔法だけなのか。


 詳しく聞いてみると、前者のようだった。


「ほぉー、お前は精霊魔法使いなのか」

「にひぃー」

「じゃあ風属性の魔法を、いくつか使えるってことで?」

「あい」

「ところでそろそろ発音を覚えような」

「いいぃぃぃーっ」


 いつになったら筆談以外でコミュニケーションが取れるようになるのか……。


「よぉし、今夜は発音の練習をみっちりやるぞ! 俺はスパルタ教師だ!!」

「あぐぅ……うえぇ、うえぇ」

「まずはリ! リ、いってみよぉー」

「うぐああぁぁーっ」


俺の名前はいつから「うぎああ」になったんだような。


「人の名前を勝手に改変すんじゃねえ! やりなおし!!」

「いいいいぃぃ-っ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ