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7-2

「リー」

「いぃー」


 月に一度、ここでセシリアと会って発音の練習をさせるのが恒例行事となった。

 まずは分かりやすいように俺の名前でも──と思ったのだが、最初の一文字目から躓いている。


「リは難しいのかねぇ」

「あい!」

「元気よく返事すんなっ。ぜってーリから喋らせる」

「いいいぃぃぃぃーっ」

「うっせー! 癇癪起こしてもリからだ、リ!」


 今日でこいつと会うのも五度目だ。

 たった一晩だが、なんとなくこいつという人間──いや有翼人というのが分かって来た。


 怒った時、癇癪を起した時には「いいいぃぃー」と声を荒げる。

 年齢は十三歳。


 発音を教えるだけじゃなく、セシリアから外の話を聞く──というか書いて貰ったりもした。


 現在地上は冬真っただ中。

 ただこの辺りは寒くはなっても、雪はパラつく程度なんだとか。


「積もらないのか……まぁ空気穴の下に雪が積もってるのも見たことないもんな」

「ぁい。ぁ……うぅ」

【でも北の山のてっぺんは真っ白】

「そりゃそうだろ。山の上は平地より寒いんだし」


 セシリアはここへ来るときに、毎回食い物を持って来てくれる。

 最初は単純にお礼として持ってきたようだ。だが俺の喜びようと、ここでは食料の確保も一苦労だって話してからは野菜を持って来ることが多くなった。

 だけど今日はミカンがある。


「はぁ、地下街でミカンなんて……贅沢だよなぁ」

「あむっ……んんんーっ」


 セシリアが隣で目をぎゅっと閉じている。すっぱかったんだろう。


「お前、この食べ物どうやって持って来たんだ? まさか買ったりとかは──」


 セシリアが首を左右に振る。


【交換。少し離れた山で暮らす、獣人さん】

【物々交換して貰うの。魔石とか、岩塩とか】

「へぇ、物々交換ね──って魔石!? それに岩塩って!!」


 地上のモンスターを倒しても、魔石は出ない。

 どろっと溶けることもないし、地面に吸収されることもない。


 この世界では地上のモンスターは魔王が、ダンジョンのモンスターは迷宮神が創ったと言われている。

 ダンジョンモンスターの方が後で、地上のモンスターを真似て創ったとされていた。

 魔石を出すのはダンジョンモンスターのみ。

 ならセシリアはダンジョンに入っているのか?


「お前、どっかのダンジョンに入っているのか?」

「あぃ──【ずっと西の山奥にあるダンジョン。人誰もいないの】、う」

「人がいない……じゃあまだ最下層を攻略した奴も?」

【いないと思う。分からない。でも町はない】


 ダンジョンの最下層には、コアが設置されている。

 このコアを破壊すると、ダンジョン上層部からモンスターのリポップを停止させるか否かを決めることが出来た。

 しかもリポップ停止の他にも、資源区画として設定することも可能。

 鉱石類はこうしてダンジョンから採掘される。


「まぁ一階にモンスターがいたとしても、リポップ不可にしなかったってこともあり得るしな」


 俺がそう言うと、セシリアは頷いた。


 彼女は誰もいないダンジョン一階でモンスターを倒し、魔石を拾っては獣人族やエルフ族、ドワーフ族と物々交換をして必要な物を入手しているらしい。

 十三歳だってのに、しっかりしてるな。


「で、岩塩ってのはどこで手に入れてんだ?」


 岩塩──塩!

 地上ではどうか知らないが、地下街では塩は高級品だ。

 干し肉もきっと塩を掛けて食えば美味くなるはず!!


 


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