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66:どこに?

「そのお二人でしたら、お怪我を治癒したあと行くところがあると言って出て行かれました」


 転移専用部屋を出て出くわした法衣を着た子供に声を掛けると、怪我人を治療する部署ってところへ案内された。

 そこの司祭ってのがディアンとキャロンの手当てをしたらしい。

 傷は深かったが、治療したので大丈夫だと。


「ですがお二人とも出血が少なくはなかったので、出来れば数日、お休みになるようにとは伝えたのですが」


 司祭は心底心配しているようだが、どうやらディアンやキャロンの素性については気づいていないようだ。

 

 神殿を出ると、アレス王子が迷いなく歩き出す。向かう先には大きな建物が見えた。

 お城……か。


「ディアンは兄上の下へ向かっただろう。私が穴に落ちたから、その捜索隊を出して貰うよう兄に頼みにいったはずだ」

「なるほど。確かに、出来ることといったらそれしかないよな」


 まっすぐ城へと向かうかと思ったら、俺たちは入城する連中の列に並ばされる。


「顔パスじゃないのかよ」

「むしろ私が城の外を自由に行き来していると知られると、マズいんだよ。門番長には話を通しておくから、あとは中で会おう」


 アレスはそう言って、城壁沿いに歩き出した。

 王族専用の出入口・・・を使って先に中に入るんだと。


 城に入るには当然、それなりに身元を証明するものだ何故来ただのいろいろ聞かれるんだろう。

 が、俺たちの番になると年配の、他よりいい装備をしたおっさんに連行されてしまった。


 話が違う……。


 と思ったら、連れて行かれた先にアレスがいた。


「待たせた。ではこちらに。それと申し訳ない。三人には着替えて貰うことになる」

「は、なんで?」

「ぶわぁーか。こんな格好した奴が、普通城ん中うろうろしてたら怪しい以外何者でもないだろう」

「すまないリヴァ。方々で事情を説明するより、君たちには私の護衛という名目で一緒に来て貰う方が面倒がなくていいんだ」


 王族って、面倒くさいもんだな。

 

 ちょっと騎士っぽい恰好に着せ替えられた。セシリアもだ。

 神父は……着替えはしたけど、汚ねえ法衣から綺麗な法衣に変わっただけ。


「まずはクリフィトン兄さんの所へ行こう。ディアンの事を知っているはずだ」


 アレスの案内でどんどん城の奥へ。面白いことに、城の手前の方ですれ違う兵士たちはアレスに軽く会釈する程度。だけど奥へ行けば行くほど、立ち止まってきっちりとした敬礼だの挨拶をする奴らばかりになっていった。

 アレスが第三王子であることを知っている者と、そうでない者との対応の差か。

 それでも会釈するのは、どこぞの貴族のお坊ちゃんだと思っているからだろう。


 はぁ、それにしてもお城って……。


「まるでダンジョンみたいね」

「……それ俺が言おうとしたやつ」

「ふぇっ、ごめんリヴァ」

「あははははは。私も幼い頃は同じことを思っていたよ。よく迷子にもなったしね」


 自分の家で迷子とか、なってみたいもんだ。

 暫く歩いていると、アレスが突然後ろ手で何か合図を送って来た。

 左に寄れ──そう言っているようにも見える。

 隣で神父が押すので、そのまま左に寄ることに。


「ほぉ。誰かと思えばアレスタンではないか」


 前方から声がした。

 王子の名を呼び捨てにするってことは、同じ王族だろう。口調に嫌味が感じられる。

 前からやって来るのは赤い髪が派手に目立つ男。着ている服も赤系で目が痛い。


「暫く姿を見なかったから死んだと思ったのだが、そうではなかったのか?」

「お久しぶりです、ラインフェルト兄さん。残念ながら、こうしてピンピンしております」

「そうか。確かに残念だな」


 やっぱ第二王子か。半分とはいえ、血の繋がった弟が生きていて残念とか普通言うか? しかも本人を目の前にしてだ。


「そうそう。知っているか? モーリアの迷宮のことを」

「はい、噂は耳にしております」


 俺たちはそこに行ってたんだっつーの。


「我が手の者がだな、そのダンジョンの攻略を進めているのだ。直に吉報を持って来るだろう。わ・た・し・の、手の者がだ」

「それはそれは、おめでとうございます、と先に申し上げておきます」

「ふは、ふは、ふははははははは」


 自分の手下がって部分、やっけに強調しただろ。

 第二王子の手下……まさか紅の旅団の奴じゃねえだろうな?

 いや、その可能性は十分ある。


「そう言えばアレスタン。お前、いつも傍にいた近衛騎士殿はどうした? ん? それにあの司祭の小娘の姿も見えぬな。どうやら愛想をつかされたか? ん? ふははははははは」


 そう言って第二王子は廊下のど真ん中を歩いて行ってしまった。

 しばらくしてアレスが苦笑いを浮かべて振り返る。


「すまない」

「は? なんでアレスが謝るんだよ。そもそも馬鹿にされたのはお前の方だろ」

「まぁそうなのだが……とにかくクリフィトン兄さんのところへ行こう」


 あんな兄貴を持ったアレスに同情するよ。

 

 で、ひとりの兄、クリフィトンへの謁見なのだが。


「アレス!? いったい何があったんだ。ずっと連絡がなかったから、心配して捜索隊を出そうかと思っていたところだぞ」

「兄上、ご心配をおかけして申し訳ありません。それで、ディアンとキャロンはどこに?」

「ディアンとキャロン? お前と一緒ではないのか?」


 どうやらあの二人はここには来ていないようだ。

 ならどこに?

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