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61:出来るのか!?

『ぬはははははははは。魂の一片すら残らぬほど、焦がしてくれるわ』


 目の前に広がるのは、いかずち、雷、雷、雷……。

 ボス部屋の一角を除き、青白い閃光が幾筋も駆け巡っている。


 ステータスレンタル。

 とにかく俺はレンタルした。

 魔神将からレンタルしたのはもちろん魔力。

 その結果、奴の魔力を2832借りることになった。


 この能力は相手の承諾なんて必要がないようだ。


 そして今現在、俺の魔力を消費してデンが再び雷獣化した。

 だけど思ったほど魔力は吸い取られていない。


 デンは適正魔力は1500だといった。

 アークデーモンの魔力をレンタルした状態で、今の俺の魔力は3000近くある。


 適正魔力の倍。

 だからこそ、魔力の消費量が減った。


『ぬははははは。ぬはーっはっはっは』


 デンは楽しそうだ。魔力の全快を得て喜んでいるんだろう。

 まぁ相手は魔神将だし、好きなだけやってればいいか。


『ぬは──あ、ダンジョンに還りよったか。三分持たなかったな』

「え? 倒したのかデン!?』

[レンタル主が死亡しました。レンタルしたステータスが回帰します]


 ん? レンタル主が死んだから、ステータスが……戻るってことか?


『にゃに!? わ、我の姿が……我が……かわいい子猫ちゃんにいいぃぃぃっ』

「あ、俺のレンタルが戻ったからだな」

『にゃにぃーっ!? レンタル? 借り物なのかっ』


 突然魔力が2800も増えるだけでも、チート級だろ。んなもん永続スキルだったら、俺は余裕で魔王にも神にもなれるっつぅの。

 

 アークデーモンが死んだなら、地上に戻れる魔法陣が出る──はずだ。

 どこに出たんだ?


 どこ──だ、ここ。


 さっきまでの所とは違う。

 辺り一面、正方形の真っ白なタイルが敷き詰められた、ただそれだけの場所。

 壁はない。天井もない。代わりに雲一つない空が広がるだけ。


「驚いているね。まぁ無理もないか。ここ八十年ほどは新規の攻略者は現れていないもんね」


 へ?


 突然子供の声が聞こえたが、俺以外に誰もいない。


「ごめんごめん。僕は迷宮神。肉体は──持ち合わせていないんだ」

「神!?」

「そ。それでね、簡潔に説明すると、君はあのダンジョンを最初に攻略した者なんだ。まぁ幸運が重なってイレギュラーな攻略の仕方だけどね」


 それは、いきなり最下層に降って来たって意味だろう。


「もちろん、それも僕が仕込んだものだからね。ズルではないよ」

「そ、それで、迷宮神が俺になんのようなんだ」

「うん。僕が創造した迷宮はね、真っ先に主を倒した人に迷宮を管理する権利を与えているんだ。知っているだろう? 迷宮の上層五階がどうなっているか」


 資源区域にするか、その他にするか。

 あぁ、そういやそうだったな。それの決定権は一番最初に、ダンジョン主を倒した奴に与えられるんだった。

 だからほとんどのダンジョンでは、国家絡みの冒険者や兵士が攻略することになっている。


 森の迷宮の探索にしても、最下層を把握するまでに留まるんだろう。

 もしかしてアレスは攻略チームに選抜──されてたら、俺たちと一緒にいるわけないか。


「ここに呼ばれたのは俺だけか? アレスやセシリアは?」

「君だけ。倒したのは大精霊だけど、召喚主は君だからね。ちなみにこの場で決定出来ない場合は、迷宮はその入口を閉ざすことになっているよ。もちろん、君たちはちゃんと地上に出してあげる」

「相談もできねえってことか……それで、俺が知ってるのは居住区と資源区画の二種類だが、それでいいのか?」


 迷宮神と名乗る声は「他にもある」と答える。


「これから僕が見せる景色から選んでくれてもいいよ。ただしポイント制になっていてね──」

「ポイント?」

「そう。とにかくまずは選択できる景色を見せてあげよう」


 すると俺の足元を残して周辺の景色が変わった。

 まずは、何もないただの洞窟だ。俺が生まれ育った地下街だな。建物がないと、ただの洞窟なんだな。


「これはポイントを必要としない。ただの洞窟だからね。ポイントが必要なのかここからだ。まずは草原」


 草原だ。地平線の彼方までずっと続く草原だ。

 それから森、、砂漠、山、海。

 海だけの階層って、どうやって先に進むんだよ。船か?

 最後に資源区画だ。


「君たちが呼ぶ資源区画ってうのは坑道のことでね、ポイントによって何が得られるか変わってくるんだ」

「必要ポイントを順に教えてくれ」

「坑道と洞窟以外は全部ポイントだよ。洞窟はさっきも言ったように、ゼロだ。そして坑道は──」


 鉄や銅、低確率で金銀が取れる一般的な資源なら50ポイント。宝石類や石系のマジックアイテムが採掘出来る坑道なら100ポイントだ。

 更にレア素材の採掘率は、10%だけ引き上げることができ、+10ポイントになる。

 

 攻略者に与えられるポイントは100。

 俺が育った地下街の資源区域が二階分、居住区域という名の洞窟が三階分なのも頷ける。


「ちなみに君が暮らしていた迷宮フォレスタンは、それぞれ確率を10%ずつ上げているんだ」

「確率を上げている? だけどポイントが足りないじゃないか。攻略したダンジョンによってポイントが違うのか?」

「違わないよ。ポイントは等しく100だ。だけど交換条件で、ボーナスをあげることもできるんだ」

「交換条件?」


 その時、心なしか悪意のようなものを感じた。 


「スタンピード」


 な……に。


「数年から数十年周期で、ダンジョンモンスターを暴走させる。その仕組みを組み込めば、ボーナスポイントを上げているんだ」

「じゃあ、スタンピードは人為的に発生させられているのか」

「そういう訳でもないよ。発生そのものは完全にランダムだからね。例えば迷宮フォレスタンでは五年から十五年の間に発生するように設定されていて、ボーナスは10ポイントだ。一年から十五年に設定すれば、50ポイント上げるよ」


 一年から十五年。

 つまり、最悪な場合、一年ごとに発生するかもしれないってことだ。


「他にもね、スタンピードのクリア条件でもポイントが発生するんだ。例えば時間式。一定時間経てば自然消滅するスタンピードはね、その時間によってボーナスが付く」


 四八時間以内ならボーナス無し。四八時間以上、七二時間なら+10ポイントという風にだ。

 時間の他にはスタンピード内にボスを配置させそいつ倒せばいいとか、モンスターを一定数倒せばいいだとか。

 クリア条件が厳しくなればなるほど、ボーナスは増える。


 そう迷宮神は言う。


 ふざけやがって。

 死人がより出やすい方がポイントがでかくなるってことじゃねえか!


「君はどんな風に管理する?」

「こんなのが管理だって言えるのかよ!? 見た目をどうするか決めて、スタンピードの発生率をどうするか……最初に決めちまったことがこの先もずっと続くだけのそれが管理だって言えるのかよ!?」

「うぅん、そう言われてもねぇ。君たち人間がそうしているだけで、僕としては有効活用して欲しいと思っているんだヨ、ほんと」

「有効活用だと?」

「そもそも、スタンピードに関しては、ボーナスを欲しさえしなければ必要ないことじゃないか」


 そうだ。ボーナスを貰う交換条件がスタンピードなんだ。ボーナスを必要としなければ、スタンピードも発生しない。

 なら、安全に暮らせる居住区が作れるってことか?


 いや、いくら安全でも、地下での暮らしは肉体を蝕んで寿命を縮ませる。


 けど草原……森……山って、ダンジョン内のあの構造みたいなものか?


「そ、草原を選択した場合、その……空はどうなるんだ?」

「よく聞いてくれたね。囲まれた空間ではあるけど、そこは地上と全く変わらないんだ。風も、太陽の日差しも降り注ぐ、君が育った地下街とは違う、地上そのものだよ」


 ダンジョンであってダンジョンでない。

 そんな空間を作り上げることが出来るのか!?



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