表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

なろうラジオ大賞3

ウジュルマカラ・エベレケセ・ハットトリック

 石を積み上げて作られた宮殿。

 その中に大きな堀があり、少年たちが一つの球を奪い合っている。


 腰巻を身に着けただけの、褐色肌の少年たち。

 サッカーボールほどの大きさの球の中には砂が詰まっており、どっしりとした重量感がある。


 球を相手の陣地にある大きな輪の中へ放り込むのだが、妨害を退けながらゴールするのは非常に困難である。


 チームの長であるヴァルハは黒髪の小柄な少年。

 持ち前のすばしっこさで相手を翻弄し、一気にグラウンドを駆け抜けてゴールを決める。


「やったな、今日も!」


 親友のマチナが肩を抱いていう。

 背が高く、金色の髪をした美しい少年。

 ヴァルハとは幼馴染だ。


「王に一番近いのは、お前なんじゃないか?」

「そんな……俺なんて……」


 照れくさそうに俯くヴァルハ。


「あのさ……話があるんだけど」

「なんだよ?」

「ここじゃちょっと……」

「…………」


 深刻そうなマチナの表情にただならぬものを感じたヴァルハは、彼と共にひと気のない場所へ行く。


「実は俺……生贄になるんだ」


 マチナの言葉にヴァルハは頭が真っ白になる。


「今までありがとうな。

 儀式までまだ時間があるけど……」


 その後の彼の話はほとんど頭に入らなかった。

 このままではマチナが殺されてしまう。


 やるべきことは一つ。


「おおおおおお! 決まったぁ!」


 試合で次々とゴールを決めるヴァルハ。

 そして……。


「すごいぞ! 一試合で三度も決めた!」

「奇跡だ!」

「王様ばんざーい!」


 三度得点したヴァルハは奇跡を起こした少年として、王になる権利を獲得。

 まず彼が最初に下した命令は……。


「俺は王マチナを愛妾として側室に迎え入れる!

 この決定に文句がある奴は前に出ろ!」


 民衆の前で宣言するヴァルハ。


 マチナを救うにはこの方法しかなかった。

 何故なら王の愛妾は生贄にされずに済むからだ。


「ヴァルハ……」

「お前は俺が守る。何があっても……絶対に!」


 そう言ってマチナの唇を奪うヴァルハ。

 二人は民衆が見守る中、熱い口づけを交わした。






 かつて存在した古代文明ウジュルマカラ。


 その国の王は代々、国技である『闘球エベレケセ』にて選ばれた。


 人の皮を張り合わせて作られた球をゴールポストに入れるという単純なルール。球技と言うより格闘技に近い競技で、一回ゴールが決まるだけでも珍しい。


 そのため三回ゴールを決めた者は英雄となり、王となる資格を得る。

 後世の考古学者たちは近代のスポーツになぞらえて、その栄誉をハットトリックと翻訳した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 全て嘘? つまりこれはハットトリックならぬ、ハッタリトリックなのでは? うーん、ただここまできれいに書かれると、本当かもと思ってしまって、虚構だと言い切る自信がなくなる。 見事。
[良い点] 思わず検索したらこの作品だけが出て来た!
[一言] 勝った方が生贄になるというのは、また別の文明の話でしたっけ? 生贄になるのは名誉なことだとか、なんとか……。 令和のニホンに生きていて良かったと、つくづく思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ