表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛相談に乗ってみたら、真面目で可愛い後輩女子に告白されていた。  作者: 久野真一
第1章 後輩と付き合い始めたがあんまり進展しないので困った
9/56

第9話 俺と後輩のとある平日(2)

 登校しながら、俺と(つむぎ)は雑談に花を咲かせる。


一貴(かずたか)先輩と(ひめ)ちゃん、どうなったんでしょうか?」

「どうなったんだろうなあ。仲良くはなったみたいだが」


 二日前の土曜日に、顔合わせが成功して以来、進捗は聞いていない。


「姫ちゃん、押せ押せなタイプじゃないから、誰かが押してあげないとって思うんですよねー」

「それはよーくわかる。タカも同じタイプだしな。悩んでるようだったら、背中押してやろう」

「ですよね」


 などと、親友の恋路について話し合う俺たち。


 しかし、紬の奴も、結構この件に乗り気だな。紬にとっても仲の良い姫のことは気になるのだろうか。


「そういえば、(えにし)ちゃん、ちょっと腕上げました?」

「負かされてばかりだと悔しいからな。割と練習したよ」


 話しているのは、昨日プレイしたFPS、『コールオブジューシィ』についてだ。FPSファーストパーソン・シューティングゲームは、ゲームにもよるが、プレイヤースキルに左右される面が大きいので、強い相手を打ち負かすには相応の練習が必要だ。


 で、紬はとにかく反射神経が鋭いので、素だとなかなか手ごわい。というわけで、新作をプレイするたびに、俺は紬に負けまいと練習を重ねていた。


「さすがは縁ちゃん、執念深いですねー」


 執念深いとか。いや、わかるが。


「努力したと言ってくれ」


 そんなどうでもいい事を話す。


 ただ、こうして話していて思うのだが、一昨日はキスを済ませたものの、話しててちっとも色っぽい雰囲気にならないのはいかがなものか。昨日も遊びまくって、寝ただけだし。


(ま、いいか)


 俺たちは俺たちのペースで進めばいい。どうでもいい話をしながら歩くのもそれはそれで心地いいのだし。

 

 そうこうしている内に、気が付けば校門の前。家からだいたい歩いて20分くらいのところに、公立成風高校(せいふうこうこう)はある。偏差値はそこそこだが、一応進学校なので、ほとんどの生徒が大学に進学する。


 一年の教室と二年の教室は別なので、玄関で別れる俺たち。


 ガラっと扉を開けて、自分の席に座る。窓側で、前から三番目というちょうどいい席で、教師に当てられにくいし、寝てても気づかれにくいというポジションだ。


「おはー、縁」


 最初に声をかけてきたのは、痩せ型で、短くカットした髪が特徴の、内野茂(うちのしげる)だ。学校ではオタ友としてよくつるんでいる。悪い奴じゃないんだが、女子が相手になるとキョドることが多々あるせいで、特に女子からは微妙な評価を受けることになっている。


「おっす、茂。何読んでんの?」


 茂の読んでいる雑誌が気になったので聞いてみる。


「最新号のトラマガ。縁も良かったら読む?」

「トランジスタマガジンだっけ。電子工作方面はわからないんだよなあ」


 電子工作をする人間にとっては必携だとか。しげっちゃんは、オタはオタでも技術オタで、自作PCや電子工作など、技術を使って何かを作るのが好きな奴だ。


「おう、縁。昨日の「はたらかない魔王さま」は見たか?」


 会話に加わってきたのは、郷野努(ごうのつとむ)。長身に鍛え上げられた肉体で、体育会系ぽい身体つきだが、根っからのアニオタで、毎シーズンの深夜アニメを全部チェックしている。面白いアニメの情報を教えてくれるので助かっている。


「いや、見てない。昨日は紬と遅くまでFPSしてたからなあ……」

「例の後輩か。羨ましいものだ……縁は、アニメの世界の住人じゃないのか?」

「失礼な。ちゃんと現実だって。つーか、一昨日から付き合ってるからな」

「「!?」」


 二人とも揃って驚く。まあ、当然か。俺だって驚いてるくらいだ。


「「お前、まだ付き合ってなかったのか!?」」


 違う驚かれ方をしていた。


「縁、紬ちゃんと付き合い始めたの?」


 さらに、会話に加わってきたのは一貴。見るのは一昨日ぶりだ。


「おっす、タカ。一昨日は良かったな」

(ちょっと、それは秘密にして欲しいんだけど)

 

 小声で咎められる。おっと、口が滑った。


「すまん、つい」

「それで、紬ちゃんと付き合い始めたっての本当?」

「ああ。まあな」

「おめでとう、縁。いつ付き合うのかなって思ってたから、一安心だよ」

「タカにもそう見えてたのか……」

「「も」?」


 タカがそう問い返した直後に、予鈴が鳴った。


「いや、なんでも。続きはまた後でな」


 ということで、皆は散り散りになる。そして、一限の授業が始まったわけだが、少し自己嫌悪する。


 つまり、親友のタカから見ても、紬からの好意は見え見えだったわけで、それに気づくことができなかった……違うな、自信が持てなかったのが少し情けない。


(もうちょっとあいつのことをちゃんと見てやろう)


 そう決心した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ