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第54話 結婚式(仮)と結婚披露宴(仮)

 その日の放課後。例によって、俺たち四人、つまり、俺、タカ、(つむぎ)(ひめ)は、姫の邸宅に集まっていた。


(えにし)君、どうしてばれちゃうかな?」


 責めるような声の姫。


「いや、すまん。紬が思ったより鋭くてな」

「縁ちゃんが墓穴掘っただけなんですけど」


「ふーん?」


 姫が冷たい視線を向けてくる。


「まあまあ、それくらいにして。皆で一緒に、でいいじゃない」


 そう仲裁するタカ。


「それに、皆でやった方が面白くないですか?」

「うーん。確かに、そうかも」

「紬の希望も取り入れられるしな」

「失敗した人は黙ってて?」

「ハイ」


 姫としてはそれなりに真剣にサプライズをやりたかったようで、少しご機嫌斜めな様子。


「でさ、正味のところ、ドレスとかって準備できるのか?」

「レンタルでもそこそこかかりそうですよね」

「そこのところは大丈夫なんだよね、姫ちゃん?」


 事情を知っているのか、タカは訳知り顔だ。


「うん。パパが知り合いのデザイナーさんに頼んでくれて。友人価格ということで、1万円で借りられそうだって」

「い、いちまんえん……」

「凄いですね。さすが姫ちゃん」


 姫の計画を聞いて、ウェディングドレスのレンタルの相場を調べたことがあるのだけど、安いもので最低5万円くらいかららしい。それを思えば、どれくらい破格かはわかろうというものだ。


 しかし、1万円という価格がどうにも引っかかる。


「それで、その1万円も私が出そうと思うんだけど……」


 と伺うように言う姫。


「さすがに、そこは俺たちに出させてくれよ。な?」

「そうですよ。さすがに、申し訳なさ過ぎます」


 1万円くらい痛くもないのかもしれないが、さすがに気が引ける。


「じゃ、四人で割り勘ってことでどう?」


 引きそうに無いと悟った姫の提案。


「それなら、まあ」

「そうですね。姫ちゃんも、気が済まなさそうですし」


 自分の発案でやるものだから、自腹でやりたいというところだろうか。


「よし、じゃあ、ドレスはそれでいいとして、会場と神父役は?」

「神父役は僕に任せてよ」


 どんと胸を叩くタカ。


「ま、妥当か。よろしく頼むな。しかし、お前が神父ってのも……」

「似合わない?」

「いや、案外合ってるかもしれない」


 昔から、真面目な場で文章を読み上げるのは、タカがよくやっていたことだ。卒業式とか、入学式とか。


「あとは会場か」

「はいはい。それも準備してあるよ。小さな教会で、2時間だけ貸し切りだけど」

「つくづく手際がいいな。でも、助かるよ」


 その後も、細かいところを詰めたのだが、だいたい姫が大枠を用意してくれていたおかげで、ほとんどやることがなかったというのが正直なところだ。


「なんか、あっけないですね……」


 ぽつりと紬が漏らす。


「今回はごっこだし。将来的に、ほんとにやる時に取っておこうぜ」

「気持ちはわかるんですが、釈然としないんですよね」


 不完全燃焼といった感じの紬。しかし、だからといって何かできるわけでもないしなあ。あ、そういえば、アレはどうだろうか。


「なあ、ついでにDVD流さないか?」


 思いついた事を口にしてみる。


「それって普通、披露宴でやる奴だよね?」


 姫のツッコミ。


「今回は正式なものじゃないし、混ぜたっていいだろ。で、どうだ、紬?」

「いいですね、DVD作り。やりましょう!」


 DVDを流して云々と妄想していたのを思い出して言ってみたのだが、思いの外乗り気のようだった。


「じゃ、結婚式のエンディングにDVD流すってことで」

「「それもう、全然結婚式じゃないと思うよ」」


 姫とタカからツッコミを食らう。


「別に、それくらいいいだろ?披露宴も兼ねてってことで」

「私も、そっちの方が楽しそうです」

「紬ちゃんがいいなら、いいか」

「元々、紬ちゃんのためだからね」


 そうして、結婚式(仮)のためのDVDを作ることが決まったのだった。


「ちょっと楽しくなってきましたね」

「お前の昔の写真、いっぱい掘り出さないとな」

「私も、縁ちゃんの写真掘り出しておきますから」


 そんな事を言い合う俺たち。

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