第47話 ダブルデート(1)
瞬く間に日は過ぎて、今日はダブルデート当日。服装は、近くの男性向け衣料品店で適当に店員さんに見繕ってもらった。
下は伸縮性が高い黒のスラックスで、足を細く見せる効果があるらしい。上は白と水色のストライプのTシャツに、ネイビーブルーのサマージャケット。正直、これでいいのか自信がないのだが、店員さんに任せたので、大丈夫だろう、きっと。
お向かいの佐藤さんちのインターフォンを鳴らすと、待っていましたとばかりに扉が開いた。やけに早いな、おい。
「おー、おはよう。紬」
そう、何気なく挨拶したのだが、いつもとちょっと違うイメージの服装に、少しドキっとしてしまう。
「どうですか?ボウリングだとスカートは難しいなと思ったんですが」
紬の出で立ちは、白のロングパンツに、水色のシャツで、活発さを感じさせながらも、夏らしく清涼感がある。
「ああ。似合ってる。意外と活発な感じも似合うな」
「良かったです。普段、スカートなことが多いから、自信無かったんですよ」
褒められて素直に照れている様子が可愛らしい。
「縁ちゃんもその、似合ってますよ」
「そうか?適当に選んだんだが」
「はい。まるで、店の人に選んでもらったみたいです」
その言葉にギクっとなる。
「実は自信無かったから、店の人にコーディネイトしてもらったんだよ」
見栄を張っても仕方がないので、あっさり白状する。
「やっぱり。でも、そこで見栄張らないのが、縁ちゃんらしいですね」
紬の奴は楽しそうにそんな事をいう。
「今更見栄張っても仕方がないからな。じゃ、行こうぜ」
言いながら、手を繋ぐ。
「でも、晴れて良かったですね」
空を見上げながら、眩しそうにして言う紬。
「傘差しながらだと手も繋げないしな」
やはり、デートは手を繋ぎながらしたいものだ。
「姫ちゃんはどんな服してくるでしょうか」
「スカートなイメージがあるけど、ボウリングなんだよなあ」
「転ばないように気をつければ大丈夫ですよ」
「ま、それもそうか。タカは……予想がつかないな」
「ずっと一緒だったのに?」
「デートの時にどういう服を着てくるかはまではちょっとな」
「それもそうですね」
そんな、何でもない雑談をしながら待ち合わせの駅前広場に向かう。
「あ、紬ちゃん、縁君、こっち、こっちー」
俺たちを見つけたらしい姫が手を振っているのが見える。側にはタカの姿も。
「おまたせ、姫、タカ」
「おはよう、紬ちゃん、縁君。よく似合ってるよ」
なんて言う姫の服装は、桃色のロングスカートに、白地のプリントTシャツといった出で立ち。子熊のキャラクターがあしらわれていて、可愛らしい。
「姫ちゃんもよく似合ってますよ」
「ボウリングの時は気をつけろよ」
うっかり裾を踏みつけて転んだら目も当てられない。
「タカは……さすが鍛えてるな」
細めの紺のデニムに、白地に何やら英語の文字が書かれたTシャツ。バスケットボール関係の何かに見える。シンプルなだけに引き締まった身体が目立つ。
「姫ちゃんとしては、一貴先輩の服どうですか?」
「スポーツマンって感じがして、かっこいい、かな」
ちらちらとタカの方に目線を送る姫。
「だ、そうだが、どんな気分だ?」
ちょっとからかってみる。
「うん。まあ、嬉しいかな」
褒め言葉に照れ照れになっているタカは幸せそうで何よりだ。
「紬ちゃんはどうなの?縁君の」
興味津々という様子でたずねてくる姫。
「似合ってますよ。お店の人にコーディネイトしてもらったんですけど」
「おまえ、そんな事ここでバラさなくてもいいだろ」
「見栄張らないんじゃなかったでしたっけ?」
「それはそうだけどさ」
なんて言い合っていると、生暖かい目線が。
「さすがに年季が入ってるね、二人共」
「もう熱々というより、慣れてるよね」
そんな感じで冷やかされてしまう。
「俺たち、まだまだ熱々、だよな?」
「そんなこと聞かないでくださいよ、もう」
ぷい、とそっぽを向く紬。
「訂正。やっぱり、まだまだ初々しいかも」
姫にそんな事を言われてしまう俺たちだった。
「とにかく。出発しようぜ。まずはボウリングだよな」
というわけで、一路、近くのボウリング場へ。
※ダブルデート(2)に続きます