第34話 俺の後輩が反響に辟易した件
さて、噂を払拭するはずが大暴露大会になった後のことだ。
クラスの連中はどんな反応をするやら。
自業自得だが、少しだけ気が重くなる。
ガラっと扉を開けて、すたすたと着席した俺。
予想通り、わらわらとクラスメイトが寄って来る。
「後輩ちゃんとお前、幼馴染だったんだな。色々聞かせてくれよー」
とか。
「お前ら、いや、お前だけ爆発しろ」
とか。
「さすがに独り身には目に毒だったんだけど」
とか。
「校内放送使って惚気話流すなよ!」
といった苦情もあれば。
「鈴木君、何考えてるかわからなかったけど、ラブラブだったんだねー」
貶してるのか褒めているのかよくわからない発言も。
「ねえねえ、佐藤さんだっけ?どこまで進んでるの?」
といった興味津々な女子の質問もあった。
「ちょっと非常識過ぎるよ。もうちょっとTPOを考えてだね……」
といった説教も。
実に色々な話が飛び交った午後だった。
幸い、クラスの奴らは面白がるのが大半だった。
ま、紬が教室に来ているの見てたしな。
そして。
「ああいう事やる前に、せめて相談して欲しかったな」
少し不機嫌な様子のタカ。
「早いとこ変な噂を止めないとって思ったんだよ」
「僕も、フォローできるところはするから」
「そうか。助かる」
心配してくれる奴がいるのはいいものだ。
まあ、何はともあれ、クラスの方はなんとかなりそうだ。
(問題は、紬の方だな)
放課後。
校門前で待ち合わせると、紬はすたすたと歩き出す。
「はー。もう、大変でしたよ……」
げんなりした様子の紬。
「そんなにか?」
「縁ちゃんは平気だったんですか?」
「凄かったが、大体予想通りだったからな」
「そこが不思議ですけど。あんな騒ぎ起こした後なのに」
腑に落ちない、といいたげだ。
「紬、よく俺のクラス来てただろ。皆だいたい知ってたんだと」
「ええ!?あれ、そんなに注目されてたんですか?」
「どうもそうらしいぞ」
「これからは、気をつけなきゃですね」
肩を落とす紬。
「で、俺はいいんだ、俺は。紬はどうだったんだ?」
そう聞くと、はあーーと大きなため息。
「それがですね。聞いてくださいよ」
同じように、面白がってる程度の奴も多かったが、問題は女友達だったらしい。
「心配して損した」
「プレイだったら、先に言って欲しいんだけど」
「私らが馬鹿みたいじゃん」
そういう逆ギレというか何というか。
的はずれな心配をした女子の一部が不満をぶつけてきたらしい。
「といっても、理由話す前に勝手に盛り上がってたわけですけど」
「それは、ひどすぎないか?」
「そうなんですけど。怒っても仕方がないから、流しました」
「怒れよ。つか、俺が怒るぞ」
紬にそんなことを言った奴をとっちめたい気持ちに駆られる。
「物騒なことはやめてくださいよ」
言おうとした先に釘を差される。
「ちょっと勘違いしただけですし。一時的なものですよ」
「おまえがそう言うなら……」
世の中、うまいことばかりとは行かないようだ。
「あと、悪いことばかりじゃなかったですし」
「お祝いでもされたか?」
「それもありますね。前から応援してくれてた子とか」
「そっか。良かったな。で、それもてのは?」
前を歩いていた紬は俺の方に向き直る。じっと俺を見つめる瞳は何を考えているんだろうか。
「久しぶりに、昔の事話せて楽しかったんですよ」
「昔?」
「出会った時のこととか」
「ああ、普段はそういう話、あんまりしないもんな」
普段、だらだらと二人でいる事が多い俺たち。
昔の事を色々話し合ったのは、久しぶりだったかもしれない。
(昔か……)
ふと、この後輩と出会った時の事を思い返す―