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第28話 俺たちのことが噂になっている件について

 いつもと少し違う登校風景を経て、教室の扉をガラっと開けて入る。

 すると、教室の雰囲気がいつもと違う事に気がついた。

 まるで、教室中の奴らが俺に注目しているような。


「俺がなにかしたか?」


 異様な雰囲気に飲まれかけるが、かろうじて疑問の言葉を発する事に成功する。


「あのさ、(えにし)。胸に手を当ててよく考えてみた方がいいよ」


 親友のタカからの問いかけ。こいつには珍しく胡乱な目つきだ。


「しかし、別にクラス中から注目されることなんて……」

「本当にない?」


 再度の問いかけ。今朝から登校するまでのことを思い返すと……あ。

 

「ひょっとして、登校した時の?」

「やっと気がついたんだね。今、クラス中その噂で持ちきりだよ」


 男子も女子も俺の方をちらちらとみやりながら、ヒソヒソと話をしている。


「鈴木君、登校途中にカノジョと熱烈なキスしてたんだってー」

「うわー、大胆。カノジョって、ひょっとして、よく教室に来る後輩の?」

「そうそう。熱愛だよねー」

「でも、さすがに時と場所はわきまえて欲しいよねー」


 だの、


「いくら彼女持ちといってもさ、ちょっと目の毒だよな」

「バカップルここに極まれりというかなんというか」

「よく登校途中にできるよな」

「キスだけじゃなくて、エッチもしてたらしいぜ」

「なんちゅう奴だ」


 だの。


「待て待て、さすがにキスまでだって!」

 

 慌てて弁解する。


「つーことは、キスまではしてたんだな?」


 噂をしていた連中の一人が近づいてくる。


「あ、ああ。まあ」

「せめて、ひっそりとしてくんねえ?」


 目がマジだ。


「そ、そうだな。今朝のはやり過ぎだった。すまん!」

「ほんと勘弁してくれよー」


 そう言いながら、遠ざかっていく。


「僕もね。君と(つむぎ)ちゃんと仲がいいのは嬉しいけどさ……」

「わかった、わかった。時と場所は弁えるから」

(えにし)はともかく、紬ちゃんの事は気をつけてあげないと」

「わ、悪かったよ」


 これはもう、平謝りするしかない。


「謝るなら、紬ちゃんにね」

「そ、そうだな」


 正直、俺一人が噂されてもどうでもいいが、紬の事は考えられていなかった。

 そんなこんなでクラス中がわいわいがやがやの中、担任が来てホームルームが始まる。いつものように事務連絡をした後、担任の先生が俺を手招きする。


(鈴木君。1限の休み時間に、職員室に来るように)

(え、えーと。俺が何かしましたか?)

(今朝のことで、少しお話があります)

(ひょっとして、紬の?)

(紬?ああ、佐藤さんのことね。まあ、そういうことよ)

(やっぱまずかったですか)

(別にそこまでじゃないけど、担任としてちょっと注意をね)

(わ、わかりました)


 担任の先生を見送って、俺はため息をつく。

 そして、今更ながら後悔がこみ上げてくる。


(紬の方は大丈夫かな)


 そんな事を思いながら、落ち着かない1限を過ごしたのだった。

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