第2話 親友(女)に親友(男)を紹介することになった件について
ぷるるる。着信音が何度か鳴る。取り込み中かと思ったが、その直後に聞きなれた声が、スマホ越しに響いてきた。
「縁君、どうしたの?何かあった?」
電話に出たのは、三条姫。小学校の頃、塾で同じクラスになって以来の付き合いだ。中学高校とも別だが、ちょくちょく連絡を取ったり遊んだりしている。
姫は、黒髪ロングにお人形さんみたいに整った容姿で、和風美人というのがよく似合う奴だ。誰とでも分け隔てなく話せる奴で、塾に通っていた頃は人気だった。女子校通いの今でも、女子人気は高くて、誰それと遊びに行ったという話をよく聞く。
「おっす、姫。あのさ。単刀直入に聞くが……」
「ん?どうしたの?」
聞こえてくるのは、疑問の声。長々と前置きしても仕方がないか。
「おまえに一目惚れした奴が居るっていったら、どうする?」
「えー。何言ってるの?そんなことあるわけないよ」
軽く笑い飛ばされる。気持ちはわかる。
「それがマジなんだよ。大マジ」
「ほんとに?ていうか、なんでそれを知ってるの?」
そういえば、そうか。親友が姫に一目ぼれしたらしい経緯を話す。
「ちょ、ちょっと待って?えーと、どうすればいいんだろ……」
電話の向こうでも、あたふたしているのがわかる程動揺している。
「落ち着け、姫。聞きたいのは、おまえの意思なんだ」
「意思?」
「ああ。タカは……俺が言うのもなんだが、いい奴だ。それは俺が保証する。で、付き合う付き合わないはともかくとして、一度会ってもらえないか?」
「……」
「姫が気乗りしないんだったら、断ってくれてもいいし」
俺としては、タカの恋を応援したいし、姫が乗り気ならくっつけたい気持ちもある。ただ、姫も、軽い出会いは嫌と思ってる節があるし、無理強いはしたくなかった。
「わかった。会ってみる」
考えさせて、という返事が来るものと思っていたけど、予想以上に速い決断だ。
「いいのか、本当に?」
「縁君が言うんだったら、変な人じゃないだろうし。信用してるから」
「そうか、良かった」
「でも、まずは会うだけだからね?」
「それはもちろんだ。で、当日だが……」
そうして、二人の顔合わせの段取りを付けることに成功したのだった。とりあえず、タカと姫で、お互いの連絡先は交換してもらったので、当日は二人に任せるという手はずだ。
正直、俺が居た方がいいんじゃないかという思いもあるが、タカとしても俺と姫が親しげに話してたらいい気分じゃないだろうし、何より別に姫にそういう感情を持っていないのに、タカに誤解されるのは避けたい。
ここまでで一通りの準備は整ったわけだが、もう一人話を通しておきたい奴がいる。そのもう一人に連絡を付けるべく、帰路についたのだった。