記憶の恩恵
何の前触れもなく、薄暗い洞窟にいた。洞窟の出口を探していると、醜悪な猿のような化け物と遭遇してしまった。逃げ続けるうちに猿の化け物の群れに囲まれ、窮地に陥る。その絶望的な状況で望んだのは、力だ。化け物を皆殺しにできる力。全てを自分の思い通りにできる力。死に抗うその願いは成就し、《グレース》という力を手にする。それは魔法とは違う、その人しか使えない特別な力であった。記憶を自由自在に操る《グレース》を用いて、ダンジョンという名の洞窟を脱出する。そして、異世界の情報を他者の記憶から把握し、金さえあれば現代社会並の快適な生活水準を維持できると知ったことで、元の世界に帰れなくても良いと考えるようになる。