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2020新年特別企画―――「この娘の彼氏になる人は大変そうだ」


 「ゆうちゃん、明けましておめでとうございます!今年もよろしくね!」


 「はいはい明けましておめでとう。今年もよろしく」


 1月1日。元旦だ。この日を含め世間一般的に『正月』と呼ばれる年始めの3日間というのは、例え高校生以下中学生以上でも夜中に1人で出歩いてても補導されることはない、未成年にとっては魅惑の時間だ。

 まぁ、神社にお参りに行く道程(みちのり)だったり、その神社に出ている出店の周りだったり、その帰りの道程(みちのり)だけに限るけど。


 私達もその例に漏れず、除夜の鐘が聴こえてきてそのあとSNSとかで友達や親戚に新年の挨拶をしたあと、元々約束していた舞花と一緒に神社に詣でる事にしたのだ。


 そして2人の家の近くにある神社近くで待ち合わせをして、会った直後の挨拶がさっきのだ。


 舞花の格好は見事な浴衣姿で、この場合は振り袖になるのかな?取り敢えず着物で、髪は成人式の振り袖の女性みたいにかなり盛られている。

 着物の色は赤とピンクを基調とした花柄で、髪に刺さっている簪では藤の花が揺れている。

 歩く度に木を擦るような音が聴こえるため、履いているのは下駄のようなものだろう。


 ……あの藤の花、明らかに造花じゃなくて生花なのは突っ込まない方が良いだろうな…。


 対する私の格好は暗い黄土色のコートに紺のマフラー、ズボンは白のパンツで白の中がムートンになってる足首ぐらいまでのブーツ。

 なんでだろう、自分と舞花の格好が違い過ぎて、錯覚や勘違いだと思うけどまるで私の女子力が低いように感じるのは解せない。



 私が改めて舞花との女としての差について思考を巡らせている内に神社へと辿り着く。

 神社には沢山の人が居て、参道は並ぶ人で一杯だ。正直並ぶのが億劫に思う。

 まだ最後尾から境内というか参拝するところが見えるのは救いだと思うけど。


 「ゆうちゃん、早く並ぼう!」


 舞花に手を引かれて私達も列に並ぶ。

 人が密集するところに入ると、やはり見えるのは自分の周りの人間だけになる。そうなりやすい。それ故か、私達が自分達の周りしか見えないのと同様に、周りも私達を含めた周囲に目が行く。

 そして何度も言うが舞花は可愛い。そんな彼女が今は着物姿だ。これが自然の摂理だと言わんばかりに視線が集まる。


 「…………ゆうちゃん、なんか怖い……」


 周りの人間から視線を集めている事は普段の学校生活通りだが、今は普段より多くの人に見られていて、尚且つ舞花も誰に見られているのか認識出来る程度には人と人との間が近い。

 それ故か、舞花が私の腕に抱き付いてきた。


 ギュムッと私の腕が舞花の胸の谷へと収納される。

 それを見た周りからヒソヒソと声が聞こえる。


 「なんだあの可愛い娘?ていうか胸。なんだよあのサイズ。やべぇーだろ」


 「てか胸デカ過ぎ。そんで可愛過ぎ。それに比べて横のは…………アレ、女か?」


 「いやいや流石に女の子じゃない?そうじゃないと俺はあの横の奴を殴らないといけなくなる」



 「………………」


 「……ヒロ君?鼻の下伸びてるんだけど?」


 「……………………、……痛い痛い痛い!ごめんユリ、俺が悪かったから耳を引っ張らないで!」



 「おっぱいでかい」


 「おっぱいおっきい」


 「対して横のは……女か?」


 「…………中性的な女装男子という可能性が微レ存?」


 「もし中性的な顔の女装男子なら、それはそれで俺はイケるぞ!」


 「この変態!良いぞもっとやれ!」



 「デュフ」



 貴様等!!


 誰が!男!なんだよ!?私は歴とした女だ!!


 クソぅ……。舞花が着物着て私が私服だと毎回こうなる……。なんで私、頑張って女の子らしい格好をしても女装男子とかに間違われるんだろ……。


 隣の舞花を見る。

 相変わらず彼女は怯えたように私の腕をその胸部の収納スペースに仕舞い込んで、不安そうにしている。


 ………………。


 「……ゆうちゃん?なんで急にナデナデしてくるの?」


 「アンタが怖がってるからよ。ほら、私の腕1つでアンタの不安が紛れるならいくらでも貸してあげるから、取り敢えずキョロキョロするのをやめなさい」


 「……うん。……やっぱりゆうちゃんは優しいね……。


 ゆうちゃん!だぁーーいすき!!」


 そう言って舞花は私の体に抱き付いてきた。


 「コラコラ、はしゃぐな馬鹿。ほら、列が進んだよ?私達がここで止まってたら後ろの人達に迷惑掛かるから進もう?」


 「うん!」


 はぁー、ホントこの娘ったら……。

 この娘の彼氏になる人は大変そうだ。



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