「愛故よ」
「おっぱいってさ」
「(また始まった……)」
「ぶっちゃけ肉の塊だよね」
「お?何舞花?私に喧嘩売ってるの?」
「でもさ、ただの肉の塊だとそれは結局に贅肉になるわけじゃん?」
「無視か?無視なのか?ねぇ舞花?私に喧嘩を馬鹿みたいに買ってほしいの?ねぇ?」
「ゆうちゃんなんかうるさい。 でさ、じゃあただの贅肉とおっぱい、何がその絶対的な差を生んでるかと言うと、やっぱり乳房。つまり乳首だと思うんだよね」
「よぉし、舞花が私に喧嘩を売りたいのはよぉぉぉおおおくわかった。その喧嘩、爆買いしてあげる」
「喧嘩なんて売ってません。 でね、思ったの。贅肉をおっぱいみたいな形に整形して、乳首みたいなのをなんとか作れば、おっぱいを複製出来るんじゃないかって」
「……………………はい?え、さっきまで怒髪天を衝く勢いで怒りに支配されてたんだけど、一気に冷静になったじゃん。 は?舞花、アンタ何言い出してんの?」
「昨日の晩にテレビで乳ガンの治療をすると乳房は十中八九摘出するって話と場合によったらおっぱい事態も失くなるって話を今ふと思い出してね…。
治療で乳首を失くしたりした自分を思い浮かべると、やっぱりおっぱいって女性の象徴なわけじゃない?それが失くなると思うと遣る瀬ない気持ちになっちゃって……。だから治療とはいえおっぱいを失くした人達の女性としての自尊心を少しでも回復出来る方法は無いかなって考えてさ…。
急にこんなこと考えるのってやっぱり変かな?」
「………………」
この子はまたも突拍子もなく難しい事を言う。
話の枕は完全に喧嘩を売られてるとしか思えない内容だったし、話の中盤はサイコパスかと思うような発言をするお馬鹿。だけど、最後まで聞けばかなり立派な事を考えてる。
本当にこの子は、そもそも何を視てこういう事を考えるだろうか。時々この子と私は別次元か別世界の人間なのかと思ってしまう。同時にこうも思う。「これが天才というヤツか」と。そもそも着眼点が違うのが、こんな話が出てくる源泉なんじゃないだろうかと考えてしまう。
そしてこういう話題を私に振る時、必ずと言って良いほど彼女は私に話を振る。私としてはたまにこうやって唐突にレベルの高い話を振られて困るのだが、今回のような話の内容が他人事とは言えない内容だと深く考えてしまう。そして本人は、自分の考えてる事に自信を持ってない、持てない事が有る。
だから話された内容をしっかりと考えて、考えた結果、私はこう言うのだ。
「仮に私が変と言って、貴女はそれで考えることをやめるの?逆に変と言わなかったとして、それで貴女は考えることをやめるの?
違うでしょ?貴女はいつも馬鹿な話からこういう話まで真面目に考えてるじゃない。だから私は貴女にこう言うの。
そんなこと知らない。貴女が考えなさい」
「…………やっぱりゆうちゃん、私に厳しくない?」
「愛故よ」