「そんなこと知らないわよバーカ」
「数学上未解決な問題って有るよね?」
「…………はい?」
数学の授業のあと、私の許にやって来た舞花は唐突にそう私に切り出してきた。
それだけで私は察した。いつもの胸ネタが8割を絞めるなか、今回は残りの2割であると。
「ほら、ヒルベルトの23の問題って有るでしょ?あれの未だ証明が出来てない問題の話。未解決問題って広い目で見たらそりゃ私達みたいな最低限の知識しか持ち合わせていない一般人程度じゃ解決なんて出来ないけどさ、こと数学に於いては未解決の問題の証明って出来ると思うんだよね」
「えっと…、うん。………え?ごめん、何が言いたいかわからない」
「数学って道徳や現代文と違って答えは必ず有るじゃん?人間の定めた道徳や現代文ってものをテストとかの問題にすればそりゃ答えってのは存在する訳だけど、それはあくまでルールを敷いた時の話。対して数学は必ず答えという物が有るよね?
だから、数学上の未解決問題ってのにも答えって有ると思うんだよね」
言いたい事の理屈はわかる。わかるけど、この幼馴染みは急に何を言っているの?
「数学には答えが必ず有る。それなのに未だに答えの証明が出来ない。でもこの問題を提唱、世に出した人が居る訳だよね?」
「う、うん…」
「だから逆説的に考えて、実はそもそも提唱した人達それぞれは答えを出してたと思うんだよね。言わば提唱した人達から私達へ対する問題。または宿題みたいなものだと思うんだよね。そんな宿題を纏めたのがヒルベルトさんで、そのヒルベルトさんが纏めた問題の中でも証明困難なものが現在まで残ってる。
研究者って、自分が提唱したものを改めて実現証明することでその研究が認められるらしいんだよね。つまり数学者って研究者として見た時に未解決問題を提唱した人達っていうのはその問題は失敗されたものという扱いを受ける筈だと思うんだよ。なのに残ってる。
前置きが長くなったけど、だから私は気になったんだよね。なんで失敗した事例が現代まで残ってるんだろって。何か陰謀的な何かを感じるんだよね。
ねぇゆうちゃん、ゆうちゃんはどう思う?」
本当に唐突にこの子は何を言ってるんだろ…?ヒルベルトの23の問題について私がわかる筈が無いし、舞花の話も正直妄想の域の話だし、仮に舞花の話が正しいと仮定したとしてもそれがなんで今でも残ってるのかとかわかる訳がない。
だから私は、彼女にこう言ってやるのだ。
「そんなこと知らないわよバーカ」
「あ!ゆうちゃんが馬鹿って言ったー!酷い!」