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女ボス

 僕と桜は僕の家に行くことになった。


 僕は死を決意していたので、家の物を全て売り払ってしまった。

 スマホも解約した。PCも寝具もテーブルも何もない。


 桜はそんな部屋みてため息をついた。


「うーん、生活できる環境じゃないわね……」


 僕はおどおどしながら桜に謝った。


「ご、ごめん……」


 桜は僕にデコピンをした。


「いて!?」


「むやみに謝らないの! 大樹は悪くないんだから。こんな環境にしたおじさんとおばさんの責任でもあるんだからね」


 ……親か。どこにいるんだろうね?


「とりあえず……今日はわたしのマンションで寝なさい? 部屋は余っているはずだから」


「女の子の部屋に行くなんて……レベルが高いよ……」


「はぁ……いいから来なさい!」



 僕らは歩いて数分の所にある、桜のタワーマンションへと向かった。

 とてもきれいなマンションだ……


 部屋に入ると、まるでショールームみたいに綺麗な部屋だった。


「ここは昨日から借りてる部屋なのよ。夏休み中はここから出勤しようと思ってね」


「出勤?」


 僕は首を傾げた。


「そうよ……って、大樹はテレビ見ないの??」


 ――僕は全くテレビを観ない。娯楽は小説と漫画だけであった。


「うん……」


「はぁ……まいっか……とりあえずそこ座んな」


 桜はソファーを指さした。





 女の子の部屋にいると思うとドキドキするけど、桜だと思うと少し気が楽になる。

 毎日一緒に遊んでいたからな……


 桜はお茶を入れて持ってきてくれた。


 僕はお茶をくちに含むと噴いてしまった。


「え!? 不味!? こ、これ、お、お茶だよね……」


 桜が僕を睨んだ。


「……悪い。私、料理全般壊滅的なのよ」


 僕は少し考えたあと、席を立った。


「ちょっとキッチン借りるね」


 ほどなくして、僕はお茶を桜に作ってあげた。



「はい、熱いから気を付けてね」


「……ありがと。……ふぅ、ふぅ……あ、美味しい」


 僕の趣味は料理だった。だから桜よりはお茶をうまく入れる事が出来ると思う。

 そんなこと言わないけどね……


 桜はお茶を美味しそうに飲みながら僕に言った。


「早速本題に入るわ」


 僕は姿勢を正した。






「あなたが二度と死ぬ気が起きないように変える必要があるわ」


 僕は俯いてしまった。


「……うん」


「あなたは私と再会することができた……本当に良かった……」


「……うん」


「正直、私的には今のままのあなたでもいいと思っているけど……あなたは嫌よね?」


「……うん」


「なら変わりましょう」


「うん……何をすればいいのかな?」


 僕は疑問に思った。

 だって、僕はデブでキモくて臭くて不細工だ。

 どうやって変えればいいのか全然わからない。


「そうね……明後日から夏休みでしょ? 明日の終業式は休みなさい。そして、私と合宿するわよ!」


「が、合宿? ど、どこで」


「ここか、あなたの家よ!」


 ええぇーー!!  

 僕は心の中で悲鳴を上げた。

 女の子と二人っきりなんて……怖いよ……


 桜は僕の事を気にせず話を進めた。


「まずはあなたが生活できるように買い物をしましょう!」







 幸い僕には貯金がある。

 親から毎月送られてくるお金と、手切れ金とばかりに置いてかれた通帳。


 僕らは次の日、街で生活必需品を買いそろえた。


「こんなところね……家具は後から来るとして……寝具もあるし……これでひとまず大丈夫ね!」


 桜は時計を見た。


「あ、私はそろそろ仕事に行かなきゃいけない……少し心配だけど……行ってくるね!」


 桜は僕の家を出ようとした。


「行ってらっしゃい」


 桜の顔が赤くなった。


「……悪くないわね……行って来ます!」



 僕は再び部屋で一人になった。

 でも、桜が与えたミッションがある。


 僕を変える方法その一。

 健全な肉体には健全な精神が宿る。


 僕は初めてジムへ行くことになった。





 ***********




 私はイライラしている。


「どうしたの、雅~」


「あん? どうもしないよ……」


 なんでいじめられても絶対来るはずのあいつが来ない。

 今日は終業式だろ? 絶対来るだろ?


「あ、もしかして奴隷君がいないからだ!」


「うっせーよ!! ……あいつがいないと不便なんだよ!」


 ……くそ、なんでこうなっちゃったんだよ。


 私は大樹を独り占めしたあの女が許せなかっただけだった。

 いつの間にか私を中心に大樹をいじめていた。


 クラスの空気を壊す事が出来なかった。そんなことしたら私がいじめられる。

 ずるずると引きずって、高校になってもやってることは変わらなかった。


 あいつはどんどんデブになって不細工になっていく。

 なんでだよ! お前は昔はもっとカッコよかっただろ! 


 私はクラスの中心にいる大樹とじゃれ合っているのが好きだった。

 だから、昔みたいにじゃれ合っていれば大樹もカッコよくなると思ったのに……


「麻生~、カラオケ行こうぜ!」


 私は心の仮面を被りなおして、友達に返事をした。


「オッケー! 今いくよ!」


 私は教室を出るときに、落書きで汚れている大樹の机をちらりと見た……





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