雨のち曇り編(5)
第5話「過去の話・前編」
少し前に視線を感じて以来から、何度も感じていた。
だが誰かは全く掴めずモヤモヤしていた。
そんな中、時期ももう6月下旬に入り、ジメジメプラス暑さで
地獄の毎日になろうとしていた頃。
僕は、建たち以外にクラスメイトの人達と大分打ち解け始めて
来たのだ。
名前も顔と一致出来るようになり、急に声を掛けられても
対応が直ぐに出来るようになってきていた。
「大変だ大変だ、ゆーうーとぅl!!!」
廊下の向こう側から、このクラスまで物凄い勢いで走って登場したのは
斎藤建だった。
扉の近くに生徒がいたので、ぶつかりそうになりそうだったので
「あぶねぇよ」と言われて怒られていた。
建は「ワリィな」と返した後、直ぐ僕の席に近づいた。
紫稀:「どうした?そんな慌てて」
僕の側にもう一人、滝川紫希がいた。
建 :「大変なんだよ!!てか悠斗、お、お前掲示板見てないのか?
掲示板にお前の事が書かれてて、大ニュースになってるぞ」
只今悠斗達はお昼休中で昼食を採っていた、食堂でやっと買った
パンをちぎって食べていたのだが、あまりの衝撃に手に持っていたパンを
床に落下させてしまった。
3秒ルールのカウントもとっくに過ぎたので、食べるのは既に遅し。
悠斗:「えっと・・・どうゆう事?」
僕は何の事か分からず、建に聞き返した。
その時紫稀が建に近づき問いかけた。
紫稀:「掲示板って事は、悠斗の事が新聞部に書かれてたって事だよね?」
建 :「ああ、そうだ。」
建は険しい顔をして、紫稀が「まぁ、落ち着け」と促したが
建 :「馬鹿野郎。落ち着こうにも落ち着けるか!!」
悠斗:「建・・・・新聞の記事ってどんな内容なの?」
僕は心臓をばくばくさせて、建に尋ねた。
そしたら建は、手に握っていた学園新聞の記事を広げて僕に見せた。
僕は眼光を広げて数分停止してしまった、それは内容が良くも悪くも
見覚えがあった。
プリントされていた写真は、僕が野球をしていた姿が映っていたのだ。
そう、1年前のリトルリーグ時代の事件の内容だったのだ。
悠斗:「なんで・・・・・」
見たくもなかった内容が書き込まれていた、大きな文字には逃亡・イジメ
裏切りなどと記載してあった。
クラスメイトもその記事を見て騒つい始めた。
バンっ!!
僕は思考が混乱してしまい、机を押しのけて教室を走り去って逃げてしまった。
建 :「悠斗!!!」
建は大きな声で僕を呼び止めようとしたが、僕は立ち止まることはなかった。
建 :「なんで、なんでこんな記事が。それに誰がこんな情報を知ってたんだよ
ちくしょ・・・・」
そう言って建も逃げた僕を追いかけ教室から抜け出し走った。
見ていた男性教師が「コラァ!廊下は走るな!」と怒っていたがそんなのも
気にせず走って行ったのだ。
紫稀:「やっぱり・・・悠斗・・・・君はあのチームに居たんだね」
紫稀は新聞記事を見つめて、悲しい表情をし僕を追いかける事はしなかったが、
その代わり混乱していたクラスメイトを落ち着かせていた。
僕は一体どうなるんだろ、まだこの学園に来て間もないのに・・・・無茶苦茶になった
感情を押さえつけず事が出来ず、ただ只管遠くに逃げていった。
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全校生徒が見る大きな掲示板で、周りがザワザワしていた。
そんな中掲示板を静かに見つめていた男、例のアキラと名の男だった。
アキラは悠斗の事が書かれてあった新聞を見ていた。
アキラ:「そうか・・・だからアイツはここに来たのか、野球部の無い
学校に・・か」
ビリビリ
そう言いながら掲載されていた、掲示板を少しずつ綺麗に
剥がしていった。
生徒:「おい、何勝手に新聞部の掲載剥がしてるんだ」
新聞部の部員の一人がアキラに怒鳴りつけてきた、アキラは
部員を睨んだ。
アキラ:「なら、本人にちゃんと許可とって掲載したんだよな?
捏造ばかり書く新聞部さんよ」
そう言ったら、部員は黙り込んだ。
アキラ:「こんな情報を誰が知ったのかは聞かないし知らないが。おかげでアイツが
辞めた理由がわかったんだ。」
そのまま、アキラは掲示板から離れまた何処かへ消えていった。