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第36話 いらぬ気遣い

はい、予告より1日早い前倒し更新です。

別に早い分にはいいよね?


 最初に対象(・・)が声を発した時、彼は、まさかそれが自分に対するものだと思わなかった。


「そこにおられる方、敵対の意思はおありでしょうか?」


 しかし、こうして宿の屋根に潜み、対象を監視すること1時間ほど、この近くに自分以外に対象から声を掛けられる存在はいないと断言できる。


「・・・・・・無回答であれば不本意ですが敵と看做(みな)し」「わかった! 姿を見せる。逃げないし敵対の意思もない」


 判断に費やした時間は1秒も掛かっていない。

 ここで対応を誤れば、絶対にただでは済まない予感があった。


「そうですか。では、部屋の鍵は開けておきますので、ちゃんと入り口からお越しください」


 こうなったら腹を(くく)るしかない。

 彼は溜息混じりに張り付いていた屋根から身を起こすと、次の瞬間には音も無く屋根の上から姿を消した。




「どうぞ。開いていますよ」


 部屋の前に立つと、扉をノックして(おとな)いを告げる間でもなく、中へと(いざな)う声が聞こえた。

 長年に裏街道に身を置いてきた者として、あまり人に気付かれるような行動は無意識に避ける傾向があることは自覚している。

 今も、意識して気配を消していたわけではないが、それなりの行動を取ったはずだった。

 それなのに、部屋の中に入る人物は、まるで身近にいて観察するかのように、自分の行動を正確に把握していた。


「・・・・・・失礼する」


 忸怩(じくじ)たる思いの中、扉を開けて中へ入った。

 部屋は二人部屋。

 その中央には小さい丸テーブルが置かれ、それを挟んで両サイドに寄せてベッドが設置されている。

 染めているのか、初めて見る鮮やかなピンク色の髪の少女は、テーブルの向こう側、窓を背に椅子に腰掛けて待っていた。


「どうぞ、立ち話も何ですから、お掛け下さい」


 そう言って自分の正面の席を指し示す。

 彼は言われるままに席に掛けながら呟いた。


「本当に・・・・・・いたんだな」


 サクラコは、その呟きを聞きとがめると聞き返す。


「いた? ですか?」


「3人で宿に入ったのは確認した。その後、2人が出掛けた事も。しかし、俺が位置に着いた時点で、あんたが残ってるはずの部屋に人の気配無かった。

 何度も直接目で確認しようかと迷ったが・・・・・・そして部屋から気配がしたと思ったらこの(ザマ)だ。確かに俺も似たようなことはできるが・・・・・・」


 あれは次元が違う、という言葉は飲み込んだ。

 サクラコがベータ・アースとの通信を行っていた時のことだ。

 膨大なプログラムを走らせる必要のあるベータ・アースとの通信中、サクラコ本体は必要最低限の機能を残してサスペンド・モードに入る必要がある。

 サスペンド・モードのサクラコは完全に無防備となるが、男の存在は把握していたし、緊急時は直ちに復帰して対処できた。


「いましたよ、ちゃんと。でも、良かったですね、余計なことをしないで。

 あなたの存在は知っていましたし、特に害も無いようでしたから、こうしてお招きしたのです。

 私はただ座っていただけですから、別に見られても構いませんが、女性1人の部屋を覗こうなんて、軽蔑されても文句言えないでしょう?」


「害も無い・・・・・・か。見張ってるつもりが見張られてたってことか・・・・・・」


 男は自嘲気味に笑った。


「お名前・・・・・・は、お聞きしません。貴方の立場もあるでしょうから。私のことはご存知ですね? 一応、名乗りますと、サクラコと申します。

 前以(まえも)ってお知らせ下さったら、きちんとした御持て成しの準備も出来たのですが、生憎こういう場所ですので・・・・・・」


 サクラコは足元に置いた保冷バッグから、缶入りの炭酸飲料を2本取り出して、1本を男の前に置いた。

 機会があれば後でニイロやサリア達と一緒にと、特殊輸送車両(バス)に備え付けの保冷庫から移しておいたもので、ベータ・アースでは老若男女に御馴染みの、赤い缶入り炭酸清涼飲料水(コーラ)だ。

 戸惑う男に、サクラコはにこりと笑って説明する。


「別に警戒することはありませんよ。ただの飲み物ですから。コーラと言って、私共の国では、子供から大人まで、普通に愛飲されています。

 こうして開封して、後は缶から直接飲むなり、カップに注いで飲むなり自由です。

 炭酸・・・・・・まあ、簡単に言うと無害な泡ですね。エールの泡と同じものですが、炭酸が入ってますから、開封前に無闇に振ったり乱暴に扱うと、開封した時に噴出(ふきだ)してしまいますので注意が必要ですが、それを楽しむもの、この飲み物の楽しみ方かも知れません」


 そう言って解説しながら、開封してカップに注いで見せる。

 シュワシュワと小気味良い音と、泡を放ちながら、謎の黒い液体がカップに注がれ、同時に甘く爽やかな香りが漂った。


「冷えた状態が一番美味しく飲めますので、(ぬる)くならない内にどうぞ。本当は氷があればいいのですが、そこまでの準備はしてなくて・・・・・・

 あ、慣れないで一気に飲むと咽てしまうかも知れませんから、最初は少しづつ」


 普通であれば、何が盛られているかもわからない飲み物に口をつけることは決して無いが、こちらに敵意は無く、相手を信用しているとアピールするためにも躊躇うことは出来ない。

 見ればカップの中の黒い液体は、今も不気味にシュワシュワと音を立てて泡を吹き出していて、見た目の印象と真逆の、漂ってくる爽やかな香りが、男の混乱に拍車をかける。

 男は意を決して差し出された黒い液体の入ったカップに口をつけた。


「美味い・・・・・・」


 エールよりも強めの泡が口内をピリピリと刺激し、未知の柑橘系の爽やかな香りが、泡と共に鼻腔を駆け抜ける。

 甘いがさっぱりとした喉越しは、嫌な後味を残すこともなく、口の中をきりりと引き締めた。

 思わず残りをゴクゴクと飲み干すと、とたんに胃の腑からゲップが上ってきた。


「こ、これは失礼・・・・・・」


 思わず顔を赤くして謝罪する。


「いいえ、それもまた、この飲み物のお約束の一つです。美味しく飲んで頂けたなら、それで結構ですよ。

 それに、先程も言った様に、これは気取って飲むものではなく、余暇に気軽に飲む、ごく普通の飲み物ですから安心して下さい。

 気に入って頂けたのでしたら、もう1本余分にありますから、お土産にどうぞ」


 サクラコは、そう言って開封していない缶を1本差し出した。


「・・・・・・それでは、一応、お聞きしますけど、どちらの手の方で、何の目的で潜んでいたのか、お教え下さいますか?」


 普通なら答えるはずの無い質問だ。

 しかし、男の方は、こういった場合の対処法の指示も受けていた。そんな想定は無用だと思っていたが・・・・・・。


「一応、名前も告げておく。アロックだ。俺をここに送ったのは、帝国第二王女、ティリザ様に仕えるファノ家。目的は、王国から帝国に向かったという情報を元に、おそらく通るであろうこの街であんた達を待って、その監視と、第三者からの襲撃等があった場合の・・・・・・護衛だ」


 護衛という言葉に自嘲気味のニュアンスが入る。

 あっさり見つかっておいて、護衛も何も無いものだと。


「そうですか、チャク・ファノさんの所の方でしたか。それにしても、随分簡単に明かして下さいましたね」


「ああ、もし見つかった場合は、あんた達には全て話していいと指示が出ていた・・・・・・馬鹿げた指示だと思っていたが、これではチャクを笑えんよ」


 指示されたのは『対象の動向を監視し、特に第三者の接触があれば早急に報告すること』『対象を第三者から保護すること』、そして最重要の指示は『決して対象と敵対せず、必要があれば全ての情報の開示を許可する』だ。

 ファノ家に仕える者は、長年に渡って(おの)が技術を鍛えて来た。

 もし露見すれば(おのれ)の技術の拙さの結果であり、その場合は全てを内に秘めて自力で退路を開くか自決するのみ。

 それを、見つかったらさっさと降参してしまえという、前代未聞の指示に憤りを感じたのは、アロックだけではなかったはずだ。

 結果は裏目に出たが、屋根の上に潜んでいたのは、ただ監視するだけならば見つかるはずがない、という男の矜持(きょうじ)が行わせたことだった。


「後学のために聞かせてくれると有り難いんだが、なぜわかった? 簡単に見破れる程度のものだったのか?」


「ええ、そうですね。簡単でした。でも、自信を無くされることは無いと思いますよ。言うなれば、私達の方が反則しているようなものですから。

 種明かししましょうか。そこの窓から、少し上の方を覗いて見て下さい」


 アロックは言われるままに、椅子から立ち上がると窓辺へと移動した。


「そうですね、だいたいあの辺りを・・・・・・クラブ」


 そう言って窓辺に並んだサクラコが指差す辺り、4~50mほどの空を見つめると、突然、空の一部が陽炎のように揺らぎ、そこに異形の物体が出現した。


「あ、あれは・・・・・・」


 それを目にしたアロックは絶句する。

 話には聞いていた。コルエバンの英雄が使役する(しもべ)がいる、と。


「ありがとう、クラブ。もういいですよ」


 サクラコがそう言うと、上空の異形は了解したとでも言うように、マニピュレーター()を一振りし、また陽炎のような揺らめきを残して消え去った。


「騒ぎになるので普段は姿を見せていませんが、ああやって護衛してくれています。ですから、あなたの行動は一部始終把握していましたし、必要ならあなたを排除することは簡単でした」


「あんなものが・・・・・・観客がいるとも知らず、とんだ茶番を演じてたというわけだ・・・・・・。

 しかし、姿を消す魔道具の存在なら知っているし、周囲に魔力の反応は無かった。我々とて、そのくらいの用心はしていたのに・・・・・・あんた達の力は、帝国の魔導技術を上回っているってことか」


 アロックはがっくりと肩を落とす。


「上か下かはともかく、私達からすれば、魔法や魔力云々(うんぬん)の方が、よっぽど意味不明なのですけどねえ。

 でも、これでおわかり頂けたように、私達に護衛は不要です。むしろ、武力を行使する際の邪魔にしかなりません。

 あなた方にも都合があるでしょうから、監視まで止めろとは申しませんが、敵対の意思が無いのであれば、私達が武力を行使する際に巻き込まれないよう、出来る限り距離を取られることをお勧めします。

 そうですね、絶対安全と言えるのは半径2kmほどでしょうか。一応、警告しておきますので、それ以下の距離で巻き込まれた場合は不運と思って諦めて頂くしかありません」


「ちょっ、ちょっと待ってくれ。2kmってそんな・・・・・・それでは」


 2kmも離れて監視など、出来るはずが無い。無茶が過ぎる要求だ。

 アロックは抗議するが、サクラコはすぐに畳み掛けてきた。


「別に監視するなとは言ってないではありませんか。元々、自分達に対する監視を黙認すると言ってる時点で、こちらがする必要もない譲歩をしていると理解できませんか? 普通は監視など断られて当然でしょう?

 しかも、親切に安全圏の目安までお知らせしているのですよ? 対象を監視するなどという業務に()いている時点で、危険は織り込み済みなのではないのですか?

 後は、そちらの責任に於いて、そちらの判断にお任せしますということです」


「ぐっ・・・・・・」


 全く反論が出来ない。

 サクラコに見つかった時点で逃げなかった自分を呪うが、クラブを見せられた後では逃げて逃げられたとも思えない。

 答えに詰まるアロックに、サクラコはさらなる追撃を仕掛けてきた。


「それで、あなたは戻られたら、今言ったことをお仲間に周知して下さい。

 それと、こちらも譲歩するのですから、あなたのお仲間の一番偉い人に、こちらの要求も伝えて下さいね」


「・・・・・・要求?」


「はい。簡単なことです。お仲間で魔人形、首狩り姫でしたか、あれを動かせるレベルの魔力を持った女性を全員を集めて、私達と引き合わせて頂きたい、と。

 人数が数千人とかですとさすがに考えますが、チャクさんのお話では、一応、それほど大人数ではないと伺いました。

 時期の方はなるべく早く、理想としては私達が帝国に到着してすぐ、というのが理想ですが、そこまで無理は言いません。前以(まえも)って可能な時期をお知らせ下さったら多少は待ちます」


 どれほどの無茶を要求されるのか身構えたが、サクラコの言った条件は意図が不明すぎて、アロックには判断できる範疇の外だ。


「わかった。その件は確実に上に伝える」


「では、連絡はいつでも、屋根からではなく普通に訪ねてきて下さい。そちらから連絡が無い場合は、帝国に入った時点で、ファノ家、でしたね。そちらに連絡を入れるようにしましょう。

 私はこれからニーロの所に行きますので。一緒に行くなどと無粋なことは言わないで下さいね?」


 話は終わり、ということだった。




 アロックは、疲れた様子で、このソーコーの街で、臨時の拠点としている一軒屋に戻った。

 途中、いつものように尾行を警戒し、いくつものフェイクを織り交ぜながらの帰還であるが、あのサクラコという女に見せられた『反則』を思えば、それらの行動が全て虚しく感じられてしまう。

 建物に入る間際、ちらりと上空に視線をやるが、雲一つ無い快晴の空が広がるのみだ。


(上から堂々と監視されてりゃ、何したって無駄じゃねえか・・・・・・しかも、こっちはいるかどうかすら見えないときてる)


 無論、建物の中や軒先の死角を利用してみたり、変装してみたりと工夫は思いつくが、向こうもそのくらいの事は承知で種明かししたのだということくらい理解できる。

 恐らくまだ、手の内を明かしていない手段で防げるのだろうと予測できた。

 今、この瞬間に、あの女がこの場所に『道案内、ご苦労様でした』と、澄ました顔をして訪れてもアロックは驚かない。

 情報を扱う部署に身を置くからこそ、一方的に知られているかもという予想に、具体的な恐怖を感じるのだ。

 ファノ家の上層部からの、神経質すぎとも思える『絶対に敵対するな』の指示が、今のアロックには心底理解できた。


「アロック、どうした? 何かあったのか」


 先に拠点にいた森蜥蜴人フォレスト・リザードマンのナクがアロックに声を掛ける。


「対象と接触した。至急、上に報告を上げにゃならん。鳩便出せるか?」


「接触したのか!? 何で!?」


 アロックの答えに、ナクは驚きの声を上げる。

 別に接触自体は禁じられていなかったが、ナクは仲間内でも隠行術に長けるアロックが対象と接触したということに不審を覚えたのだ。

 アロックは、かいつまんでナクに経緯を説明した。


「対象が使役してるって魔人形(ゴーレム)か・・・・・・じゃあ、俺の行動も? いきなり対象の男の方が店に現れた時は驚いたが、ありゃこっちを知ってて来たのか」


「そっちも?」


「ああ、ザルドの店でシージージャと打ち合わせしていたら、いきなり現れたんだ。

 こちらに気付いた風はなくて、どうやら北ルートのことを気にしているようだった。偶然かと思ったんだが、あれはわざとこっちに予定ルートの情報を漏らしたってことか?

 俺は一旦こっちに戻って、向こうにはシージージャが残ってるが、やつにも知らせておいた方がいいな」


 無論、誤解だ。

 ニイロがザルドの店に現れたのは単なる偶然である。


「しかし、そんなのがいるとなると、これ以上隠密に張り付くのは不可能ってことになるぞ? こうなったら、いっそ懐に飛び込むしか・・・・・・」


「いや、それはチャク(お嬢)が既に申し出て断られてる」


 アロックは首を左右に振って打ち消した。


「とにかく、向こうの要求も伝えねばならんし、上に話を上げたら、後は指示待ちだ。

 それまでは、幸いにも巻き込まれるのを承知なら、監視と護衛を続けること自体は許してくれるそうだから、これまで通りにするしかない。

 とは言っても、あの馬無しの箱馬車で移動されたら着いていけるわけも無いから、この街限定の話だな」


「まあな。森の中なら何とかして見せるが、街道を夜中も休まず走り続けられたら、馬の方が潰れっちまうからなあ。

 後は回廊の出口(向こう)で別働隊に張ってもらうしか()えか・・・・・・何だそれ?」


 アロックがナクと会話しながら無意識に手で弄んでいた赤い円筒に、ナクの視線が止まった。


「ん? あ、ああ、例の対象がな、土産だと言ってくれたんだが・・・・・・中は単なる飲み物だ。コーラとか言ったが、連中の国の飲み物だそうだ」


「大丈夫なのかよ、それ」


 ナクは訝しげに赤い円筒を見た。

 赤地に白で模様が描いてあるが、文字のようにも見える。


「対象が今更俺達に危害を加える理由も無いだろう。始末するつもりなら、とっくに始末されてるさ。

 向こうの宿で出された物も飲んだが、確かに美味かった。甘いんだが複雑な甘さで、香りは柑橘系に似てる。エールより強烈な泡が口の中で弾けるんだ。

 皇族や貴族だって、これより美味いものは飲んだことがないかも知れんぞ?

 それに、この容器の材質、鉄に似てるが、ただの鉄じゃないことは確かだ。押せば凹むほどの柔らかさで、しかも軽い。

 この滑らかな加工や着色の技術なんかは、相当の鍛治師でも再現できるかどうか・・・・・・もったいないが、これも送って報告するべきだろうな」


「へえ、そんなに美味いのかよ・・・・・・俺も飲んでみてえが、やっぱ報告に回すべきなんだろうなあ。どうせならもっと貰ってくりゃ良かったのに、お(めえ)も気が利かねえなあ」


 ナクは手渡された缶を持ち上げたり眺めたりしながら、冗談半分にアロックに文句を垂れた。

 それに対し、アロックは意外にも真剣な表情で呟く。


「そうか。タダは無理でも買い取るって手はあるか・・・・・・機会があれば売ってもらえれば・・・・・・1個小銀貨1枚なら何とか・・・・・・10個くらいは・・・・・・」


「ちょっ、小銀貨って本気かよ! はあ? これ1個で小銀貨1枚出すって? ただの飲み(もん)なんだろ? そんだけ美味かったってことか!?」


 ナクは森蜥蜴人フォレスト・リザードマンの特徴でもある大きな目を見開いて、手に持った缶とアロックを交互に見比べた。

 ベータ・アースの日本と、ガンマ・アースのこの地域とでは、当然、物価が違う。また、食料品などの日々の必需品は安く、耐久消費材は価格が跳ね上がる傾向にある。

 なので一概には言えないが、概ねの目安としては小銀貨1枚は1万円程度と置き換えるといい。

 小銀貨は4枚で大銀貨(銀貨)となり、銀貨2枚(約8万円)あれば家族4人が1ヶ月を食っていけた。


「美味かった。連中の国では誰もが普通に飲むものだと言っていたが、本当なら夢のような話だ」


「はあ~。まあいいや。俺はそんな恐ろしい(・・・・)飲み物は願い下げだ。いいか? 相手はあくまでも監視対象なんだから、下手な接触はするなよ? 絶対だぞ? わかってるよな?」


 やや不安そうな面持ちでナクが念を押す。


「わかってるさ。仕事は仕事、そこは信用しろよ」


 ガンマ・アースが、押すなよ? のフリが通じない世界で何よりだ。

 アロックは真面目に答えると、報告を纏めるべく仕事に掛かった。



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