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第25話 誘(いざな)い

あけましておめでとうございます。

 途切れていた意識に、ピリリリ・・・・・・というアラームの音が覚醒の針を差し込む。

 ほぼ無意識に左腕に巻いた腕時計のスイッチを押してアラームを止めると、思い出したかのように冬の冷気が、分厚い毛布が僅かに口を開けた肩口からニイロの身を震わせた。

 真冬と言える季節は過ぎたようだが、それでもまだ朝は底冷えのする時期に変わりは無い。


「うう、さぶっ・・・・・・」


 部屋の中には火鉢が置いてあるが、寝る前に消していたので火の気は無かった。

 気を利かせて付けておいてくれる者も今はいない。


 しばらくの間、まだ覚醒しきっていない意識に身を任せ、体温で暖まった毛布の温もりに身を委ねていたが、それも長くは続かない。

 目覚まし(アラーム)が鳴ったということは起きる時間だ。そして、そう遠くない時間に迎えがやってくるだろう。


「じゃーない、起きるか・・・・・・」


 ニイロはそう呟くと、手早く身支度を済ませて宿の二階にある部屋から階下の食堂に移動する。

 受付にいた主人に挨拶を済ませ、奥から出てきた恰幅(かっぷく)のいい女将に朝食を頼んだ。


「おはよう、おばちゃん、今日の朝飯は何?」


「おはようさん。今朝はトローネの肉入り野菜スープだよ。トローネは焼いたやつも付けられるけど、どうすんだい?」


 トローネは体長50cmほどの、リスとカピバラと兎を足して割ったような外見の動物だ。

 リュドー周辺の草原に穴を掘って暮らしており、畑の害獣でもある為よく捕獲される。

 初めて食べた時は羊肉(マトン)に似た臭みを感じたが、それも微かなことで(じき)に気にならなくなった。


「あー、朝からがっつり肉!って気分でもないし、焼いたのはいいわ」


「そうかい、んじゃ、ちょっと待ってな」


 女将は太った体を揺すりながら、一旦奥へと引っ込んでいく。

 ニイロは適当な席に座って朝食が出てくるのを待った。

 やがて、さほど待つ間でもなく、幾つかの皿とパンを盛った(バスケット)を両の腕に器用に持った女将が、ニイロの席に朝食を運んでくれた。


「はい、お待たせ」


 スライスされたパンを盛った(バスケット)に、スープの入った深めの皿、スライスしたチーズとざっくり潰したベリー類の盛られた小皿に柑橘系のジュースのカップ。

 テーブルの上に、朝食が次々に並べられていく。


「あれ? これ頼んでないけど?」


 チーズとベリー類の盛られた小皿はパンのつけ合わせとして基本メニューだが、ジュースは頼んでいない。


「サービスだよ、サービス。何たってカジユの勇者でコルエバンの英雄様が、うちみたいな普通の宿屋に泊まって下さってるんだ。たまにサービスくらいしたって(バチ)は当らないさね」


 女将はそう笑って手をひらひらさせる。「明日は無いよ」と言いながら。

 周囲を見渡すと、他のテーブルで食事をする客にも同じジュースが振舞われている。

 どうやら言葉とは別にニイロだけが特別という訳でもなく、単に日持ちのしない余った食材を振舞っているだけのようだ。


「そ、そっか、有難く頂くよ」


 初めて聞く恥ずかしい二つ名に動揺しつつも、ニイロはそう言って、早速食事に取り掛かる。

 自分がそんな風に言われているとは知らなかった。


 コルエバンからドマイセン軍が撤退した後は、合流したサクラコと一緒に、援軍を率いてコルエバンにやって来たスローンと、さらに王都から援軍を率いて来たナルセン・ドウ・リドリスファーレ第五王子と、参謀のフォルドン伯爵を迎え入れ、戦後の後始末に追われることになった。


 ここで王都派遣軍の一行と、どこの馬の骨とも知れないニイロ達の扱いについて一悶着あったが、困惑する第五王子を相手にメリーチェが、ニイロとサクラコの功績を雄弁に語り、戦いを実際に目撃していた代官のエザクート親子によって、新兵器の脅威と、圧倒的に有利だったドマイセン軍が()(すべ)なく撤退していった事実が証言され、さらにサクラコの発案でコルエバン郊外の空き地を使った公開演習が決定打となり、雑音は見事なまでに封じられた。

 派手な演出の方が後々やりやすいだろうと踏んだニイロが指示した、ファージ4機によるグレネードの曳火砲撃と、クラブ4機による焼夷弾による爆撃を披露した作戦勝ちである。


 ニイロの武力を見た派遣軍の中からは、このまま撤退するドマイセン軍を追って逆侵攻をかけるべしという意見も出たが、ニイロ達は一切協力しない約束であること、さらに、ドマイセンの持つ新兵器への対策が無いままでは返り討ちに会う可能性が高いことを意見した結果、今回は見合わせることと決定した。


 サクラコによる情報収集によれば、力ずくでもニイロ達を従わせよという意見も派遣軍内部では出たようだ。

 もし、その主張が通るようなら、速やかに王国から退去することも考えたが、フォルドン伯爵の『このようなことで敵対していい相手ではない』という具申を第五王子が受け入れて却下されたのは幸いだった。


 これまでの情報収集によって、もはや王国に拘る必要性は正直薄いと言っていい。

 一番の目的であるアルファ・アースへのドラゴンその他の出現の謎については、王国はある意味ハズレであると判断できるし、その他の調査収集についてもどこかで切り上げる必要がある。

 ただ、せっかく築いたダスターレ伯爵との関係を捨てるのは少し惜しいので、出来れば適度な距離で関係を繋げておきたかったのだ。


 サクラコは、『やはり一度敵対して差し上げて、痛い目を見て頂いた方が良いのでしょうか』などと不穏なことを言っていたが、ニイロ自身はホッとしている反面、どうもリンデン砦に派遣した後辺りから、サクラコの言動が過激な方向に向いてるような気がするのが、少々不安材料であったりする。


 また、ニイロが一番気にしていた、サリアの故郷であるセビエネ村については、ドマイセン軍の進軍ルートから外れていたことから大した被害も無く、それどころか問題になっていた山賊の集団が、ドマイセン軍の進軍に先立って特殊部隊による露払いの巻き添えを食らった形で半壊状態に追い込まれていたことも判明した。

 山賊の残党についても、クラブによる上空からの索敵と、コルエバン領軍による地上部隊の連携によって、一網打尽となって決着した。


 その後は舞台を王都に移し、国王との謁見や褒賞の下賜、戦勝を祝っての晩餐会などのイベントを消化しつつ、今回の戦争の原因となった鉱山の鉱害問題について、王国の関係、者及びドマイセン・ビンガインの外交官等と協議を行った。

 概ねサクラコがヤノス等に提案した通り、鉱山に処理施設を建設し、その技術と知識については無条件で三カ国に公開するという線で協議は決着したが、費用の負担については王国だけでなく、ドマイセンとビンガインもそれぞれ応分を負担することになったようだ。

 それについては、三者が納得したのであれば、ニイロには口出しする意思は無い。


 以後は決定した方針に従い、極力ガンマ・アースの世界で既知(きち)の技術を使っての、現行処理施設の建設に対する指導・助言を行う日々が続いた。

 いきなりアルファやベータのオーバーテクノロジーを投入すれば、当面は劇的な改善が望めても、ニイロ達が去って以降の健全な技術発展に支障を来たす可能性が高いという判断だった。

 拠点も王都から、問題の鉱山により近いリュドーの街に移し、宿を取って生活している。


 とは言っても、ニイロ個人はあくまで素人だ。

 ガンマ・アース人よりは幅広い科学知識を持つとはいえ、所詮は学校の授業で習った程度。専門的な知識など皆無と言っていい。

 よって、実際の活動はベータ・アースのシンシア達スタッフによって作成されたプランに沿って、ほとんどサクラコに任せきりになってしまった。

 ニイロとしては忸怩(じくじ)たるものもあるが、下手に手を出してもロクな結果にならないことは目に見えている。邪魔するくらいなら距離を置いた方が、結果的には建設的だ。

 なんとなく、『あれ? もしかして、あの男より娘の方が優秀なんじゃね?』的な空気を感じつつも、今後の活動に支障を来たさないよう、(つて)を求めてやって来る、王国の貴族や他国の外交官、商人、その他の人々との交流に時間を割い過ごしているが、既に鉱山の浄化施設は物資の運搬にファージやクラブを用いた突貫工事の甲斐もあって稼動状態にあり、こうした日々もあと僅かだ。

 結果、気になる情報もいくつか得られたので結果オーライと言っていいだろう。



「そういや、サクラコちゃんはどうしたんだい? なんだか顔見ない気がするんだけどさ」


 食事を続けるニイロに、他に朝食に降りてくる客もおらず、手持ち無沙汰なのか女将が思い出したように聞いてきた。


「ん? サクラコならメリーチェ様達と一緒に、三日前からドマイセンに視察に行ってるよ。王国の使節団乗せるのに特殊輸送車両(バス)使ってるから、多分、あと一週間くらいで戻るんじゃないかな」


 スライスしたチーズを乗せたパンを口に運びながら、何の気なしに答えたニイロに、女将は大袈裟に溜息をついて見せる。


「はーあ、ドマイセンって言ったら、行って帰るだけで一ヶ月は掛かるってのに・・・・・・あたしらの常識で考えちゃいけないんだろうけど、流石はリンデン砦の戦女神様ってことなんだろうねえ」


 そう言って呆れた表情を見せる女将だが、ニイロには初めて聞くサクラコの恥ずかしい二つ名の方が衝撃が大きい。


「戦女神て・・・・・・サクラコ、そんな風に言われてるんだ・・・・・・」


「そうだよ? 知らなかったのかい。それにしても、メリーチェ様も、このところずっとリュドーにいらっしゃるけど、伯爵様は寂しがっておいででないのかね」


 そう言われるとニイロも返答に困ってしまう。

 コルエバンの一件以来、王国内ではいつの間にやらメリーチェが、ニイロのマネージャーのような立場として周囲に認識されてしまっていた。

 困ったことに本人も乗り気らしく、王都に滞在した時も当然、リュドーに移ってからもニイロ達に同行し、嬉々として来客との面談などの予定を取り仕切っている。


 お陰で助かってもいる反面、孫娘大好き伯爵からのお手紙攻勢も凄まじく、酷い時には一日に数通も届いてニイロを辟易させていた。

 なにしろ、表現は色々工夫されていても、内容は全て『メリーチェ返して』なのだから、これではニイロがメリーチェの意思に反して拉致でもしているようで始末が悪い。

 一度、『たまにはルードサレンに戻って伯爵様に顔を見せておあげになっては?』と、それとなくメリーチェ本人に勧めたこともあったが、『お爺様も、王国の為に頑張ってニイロ様のお役に立ちなさいって仰ってましたから、この大事な時に帰ったりしたら、逆に怒られてしまいますわ』と涼しい顔で却下されてしまった。

 それ以来、ダスターツ伯爵からのメリーチェ返してコールは放置することにしている。自分で孫娘にカッコつけておきながら、ニイロに返してと言われても困るというものだ。

 

「あー、伯爵様は大丈夫じゃないかな? メリーチェ様にも、お仕事頑張れって励ましてたみたいだし」


 取りあえず(とぼ)けておく。

 そんな他愛ない会話をしながら食事を済ますと、タイミングを計ったかのように宿の表に馬車の止まる音が聞こえてきた。

 どうやら出掛ける時間のようだ。




 リュドーの街の中心から、やや西側に寄った位置にある代官(やかた)に登庁したニイロは、午前中、代官のアデッティ・スコバヤとスタッフ達と共に、鉱山の浄化施設に関する報告書をなんとか処理し終え、ビンガインの使者との昼食会に(のぞ)んでいた。

 代官のスコバヤと共に報告書の処理に当っていたのは、ニイロ達がこの地を去った後、鉱山の処理施設に関する業務が、当面彼女達に委託されることになるからで、必要な知識はベータ・アース(むこう)のシンシア達スタッフが現地語(こちらの言葉)に翻訳して纏めてくれた手引書(マニュアル)を元に、ニイロとサクラコが徹底的に指導した。

 纏められた手引書の内容は、そう高度なものではなく、中学・高校の科学の教科書程度の内容で、この程度ならばニイロでもなんとか教えることくらいはできる。


「うん、いつも思うのですが、王国の料理は我がビンガインと比べても美味ですねえ。本当に羨ましい」


 ニイロの向かいに座るビンガインの男が、スープを一口啜った後で唸るように感嘆する。

 見た目は三十台後半から四十代前半くらいか、焦げ茶色の髪をきっちり七三に分けた、ビジネススーツを着せたら似合いそうに思える風体の男だ。

 名前はフェルノアンと名乗った、ビンガインの9人から成る評議会議員の1人で、元が王国侵攻には慎重派だったということもあって、使節団に抜擢され、来訪しているということだった。


「アルネアで出汁を取ったスープは、他では滅多に食べられませんからね。ディンクレルではバレの根と一緒に煮込んだものが名物ですが、ここリュドーではバレは使わずに用いるのが基本です」


 スコバヤが自慢げに料理の薀蓄(うんちく)を語るが、ニイロの脳裏には(くだん)のディンクレルで食べた料理の素材が思い浮かぶ。


(アルネアって、確か蜘・・・・・・考えちゃいけない。うん)


 慌てて脳裏に浮かんだ素材を追い払い、何事も無かったかのように食事を続けた。


「例の浄化施設も無事に稼動し始めたことですし、そうなるとニイロ殿は今後どうなさるおつもりで?」


 フェルノアンは何気ない風で尋ねるが、ニイロの今後の動向は、会う者全てが聞いてくることだ。

 明け透けに誘う者はまだいい方で、親切を(よそお)いながら、あわよくば自分の利益になるよう誘導しようという下心の見える誘いも多い。


「そうですねえ、このところ忙しかったですから、サクラコともゆっくり相談できてませんし、まだ具体的には考えてませんよ」


 そう言ってはぐらかす。


「ニイロ殿には、まだ教わることが多いのです。今出ていかれては困ります」


 すかさずスコバヤが割って入った。

 スコバヤは恐らくダスターツ伯あたりにニイロを引きとめるよう言われているのだろう。

 いちいち聞いていれば、ずるずると先延ばしにかかるであろうことは疑いようも無いが、ここはフェルノアンの手前もあるので、あえて反論はせずに濁しておくことにした。


「まあ、サクラコが帰ったら相談して、それからですよ」


「そうですか。参考になるかはわかりませんが、聞くところによればニイロ殿は魔法関係に興味がおありとか。魔法といえば、西のバネストリア帝国には魔道士も多く、古い時代の魔道具なども残されているそうですよ」


 フェルノアンは悪戯っぽく笑みを浮かべながらニイロに教えるが、それにスコバヤが口を出す。


「帝国は現在内乱状態にあって治安も怪しいと聞きます。みすみす危険な場所へ行くこともないでしょう」


「ああ、そのことですか。でも、ニイロ殿の力があれば、少々の治安の不安など問題にもならないのでは?」


 そう言われるとスコバヤも反論のしようがない。

 5000の軍を相手にして退けたニイロに、治安がどうのと言っても説得力が無かった。


「ご存知かわかりませんが、ニイロ殿の為に説明すると、()の帝国では5年前に先帝が崩御した後、嫡子だった皇太子が継いだのです。

 ところが、この新皇帝がとんでもない人物でして、先帝の存命中は目立たない、大人しい人物との評判だったのですが、いざ即位すると同時に正体を現したと言いましょうか・・・・・・。

 口に出すのも(はばか)るような行為に(ふけ)る有様だったそうです。

 それで反皇帝派が反乱を起こして、あっという間に新皇帝は暗殺されて、今度は誰が皇帝の座につくかでモメまして、庶子だった長男を担ぐ派、皇帝の次の弟である三男を担ぐ派、それに先帝の弟である皇弟を担ぐ派で分裂して、ここ数年、中立派も含めて4つの派閥が内乱状態にあったわけです。

 しかし、それも最近になって三男派が皇弟派に下ったという噂で、それが本当なら皇弟派が一歩抜け出した感じでして、こうなると、後は中立派の動向次第ではありますが、仮に中立派が長男派についても皇弟派が若干有利なものですから、決着も早いような気がしますよ」


「ほう、それは初めて聞きましたが、その噂はどこから?」


 スコバヤがその話に食いついた。

 帝国と王国は特に争ってはいないと言うことだったが、それでも隣接する国の話ともなれば、代官としても放置は出来ないのだろう。


「スコバヤ殿はご存知でしょうが、私の家は貿易を営んでおりますので、出入りする商人から伺いました。地元の商人ですので身許(みもと)も確かです。

 ビンガインからですと、エズレン回廊を通って帝国に抜けられますからね。

 まあ、ニイロ殿が帝国に興味がおありになればの話ですが、この王国から帝国に行こうとすれば、真っ直ぐ西に向かうと満足に道も無いヨーネス大森林を抜けなければなりません。

 多少遠回りにはなりますが、一度南に下って我がビンガインを経由するのであれば、商人達が使うエズレン峡谷を縫って帝国までの回廊がありますから、ヨーネス大森林を抜けるよりは安全確実に帝国にたどり着けるでしょう。少なくともヨーネス大森林を抜けるよりは結果的に早い。

 もし、ご希望ならば私個人としても帝国に友人がおりますので、色々と便宜も図れると思いますよ」


 要するに、その代わり自分にも便宜を図って欲しいという申し出だ。

 確かに帝国で得られるかも知れない情報には興味があるが、すぐに飛びつくような真似はしない。

 王国の人間が言う、東方の蛮族が割拠するという土地にも興味はあるし、ビンガインにもドマイセンにもニイロ個人はまだ行ったことが無いわけで、四カ国連合の残り2つ、ソータルとカーレムという国にも興味がある。

 現時点で選択肢を狭める必要など無かった。


「まあ、その時になればお願いすることもあるかも知れませんが、全てはまだ白紙・・・・・・」


 ニイロがそう言いかけた時、突然左腕の腕時計からアラームが鳴った。

 通信機能付きのゴーグルなどをつけられない環境にある場合に備えて身につけているものだ。

 いわゆる林檎時計(・・・・)的なものと思ってもらえば遠くない。


「あ、ちょっと失礼」


 ニイロはそう言って席を外すと、そそくさと会食の行われている食堂から外に出て、常に身につけている異次元ポーチから通信機能付きの多機能ゴーグルを取り出す。

 アラームはサクラコからの通信のコール音だったが、定時の連絡にしては時間帯が半端だ。

 少し不思議に思いながらも、慣れた手つきでゴーグルを装着して呼びかけた。


「サクラコ? 何かあった?」


『ニーロ! 申し訳ありません! サリアが! サリアが何者かに拉致されたようなのです!』


 いつになく慌てて取り乱した様子のサクラコの声が、ニイロの耳に飛び込んでくる。

 全く予想していなかった知らせに、ニイロは思わず間の抜けた声で聞き返した。


「は? なんでサリア?」

これにて第二章の終了です。

次回更新は体調の不安とか書き溜めも少し稼ぎたいなとか、色々あるので少しだけ時間を頂きまして、第三章の開始は1月17日を予定しています。


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