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第18話 決断と潜入

「状況はわかりました。でも、それで私達にどうしろと仰るのでしょうか」


 現在の状況の説明が終わっても、厳しい表情で黙考したまま口を開こうとしないニイロに代わって、サクラコが尋ねる。

 緊急の召還を受けてルードサレンの城館に赴いたニイロとサクラコは、ダスターレ伯爵の執務室で伯爵と高官達に囲まれて相対していた。


 現在判明しているのは、リュドーの街から南に下がった場所に位置する、四カ国連合の一角をなすビンガインと接したリンデン砦が、これまた四カ国連合の一つであるドマイセンの兵500以上に襲われて半落状態と言っていい状況にあると言うことだ。

 しかも、この剣と魔法の世界であるガンマ・アースに於いて、ドマイセンは何らかの火器と(おぼ)しき兵器を投入しているらしいとあって、同じく火器類をメインウエポンとするニイロにも、ドマイセンとの関係が疑われている状況にある。


「本来であれば・・・・・・」


 執務机の向こうで椅子に腰掛け、腕を組んだダスターレ伯爵が重い口を開く。


「本来であるならば、我々は貴殿を拘束して取り調べる必要がある・・・・・・」


 伯爵はそこで言葉を止め、迷いを断ち切るように再び言葉を続けた。


「しかし、だ。我々の持つ力では、貴殿らを拘束するのは不可能。いや、これまでの貴殿らの立ち居振る舞いを見るに、証拠もなく『疑わしい』というだけで貴殿らとの関係を断ち切るのは、我が王国にとって恐ろしいまでの損失に繋がると儂個人は考えている」


(どうやら、ここでの荒事は回避できそうかな)


 ニイロは考える。

 だとしたら、サクラコに勧められて模擬戦までやった甲斐があったというものだ。

 いざとなれば、多少力ずくでも拘束を逃れて他国へと避難するつもりだったが、そういった事態は避けられそうだ。

 ニイロとしては、今後の調査のこともあり、王国との友好的な関係は出来る限り保っておきたい思惑もある。


「故に、だ。ここは一つ、貴殿の潔白を晴らす為にも、リンデン砦の回復に手を貸してもらいたいのだ。

 国同士の諍いから距離を置きたい貴殿の立場もわかるが、事は貴殿自身の立場にも係わる。今後の国内での活動にも支障が出よう。

 必要な物資や人員は可能な限り手配するし、もちろん報酬も出そう。どうだな?」


 要するに誤解を解きたくば協力しろということだが、ダスターレ伯爵が最大限の譲歩をしていることも理解できる。

 むしろ、状況証拠からすれば黒に近いグレーと言っていいニイロの立場を考えれば、強硬手段に出ない伯爵の理性的な対応を褒め称えたいほどだ。


 ニイロとしては、今後の調査活動を円滑に進める為にも、出来ることならドマイセンという国とも友好的に接触したいという欲がある。

 しかし、断ればスパイ疑惑は晴れることなく、伯爵の言う通り、せっかく順調な王国内での調査活動に支障を来たすことは間違いない。


(八方美人は、結局全員に嫌われるもんだしな・・・・・・)


「降りかかった火の粉。自ら振り払うべきなのでしょうね」


 やっと口を開いたニイロが答えると、ダスターレ領の高官達の間に、明らかにほっとした空気が流れた。


「そうか! 感謝する。敵は500以上という話だが、現地の駐屯兵50にリュドーから150、ここからも兵200を既に向かわせてある。

 さらに追加で300を手配中だが、ニイロ殿には、この300と一緒に現地に向かって頂こうと考えている。ニイロ殿さえ良ければ明日には出発できるだろう。

 既に王都から陛下直属の兵が1000、砦に向かって()ったという連絡もあった。全て合わせれば1700。これにニイロ殿の力が加われば砦の奪還は間違いなかろう」


(いや、伯爵様、最後のそれフラグだから・・・・・・)


 ダスターレ伯爵は、肩の荷が下りたとでも言うように、安堵の表情で皮算用をしているが、ニイロからすれば初めての『戦争』だ。不安材料はいくらでもある。


「さらに、だ。砦の奪還が順調に進めば、今回はさらに追加の兵を送って四カ国連合への逆侵攻を行うことになる。こちらとしては、これまで戦争の回避に気を使ってきたにも係わらずの、今回の件は膺懲(ようちょう)の軍を(もよお)すに足る暴挙であるとの陛下のご判断だ」


 そう力強く宣言する伯爵に、ニイロは慌てて口を挟む。


「ちょっと待って下さい。私達が手を貸すのは砦の奪還までです。相手の火器とやらも調べましょう。しかし、その後は国同士の問題ですから、それに巻き込まれるのは御免です」


 その言葉に、それまで意気軒昂として語っていた伯爵は一旦言葉を途切るが、慌てて続けた。


「あ、ああ、勿論だとも! そこから先は儂等の領分。ニイロ殿には砦の奪還を支援してもらえれば十分だ」


 幾分、微妙な空気が流れたが、それからいくつかの打ち合わせをした後、ニイロも準備をするということで一旦宿に引き上げることにした。

 城館を辞し、送るという馬車を断って、徒歩で宿へと戻る間、ニイロは考え込んだまま何も語らず、サクラコも黙って付き従った。

 やがて、城下の宿の部屋に着くと、疲れた表情でベッドに腰掛けたニイロはサクラコに問いかける。


「戦争かあ・・・・・・なあ、サクラコ、これで良かったのかな」


「はい。今後の任務の遂行を考えると、ニーロの判断は間違ってないと思います。

 この世界に於いて、私達の持つ武力は一国を凌駕しているようですし、一連のやり取りを『外交』と捉えるならば、王国と四カ国連合という2つの勢力に対して、『ニーロ国』はどちらに組するかを迫られたということではないでしょうか。

 どちらに対しても中立という選択肢もありますが、ここでの中立は、『味方ではない』という面がクローズアップされる可能性があります。

 そうなると、将来、王国も含めた()カ国連合が私達の障害にならないとは言えないのですから、その火種を出来る限り小さくする為にも、ここで片方を選択するのは仕方がありません」


 滔々(とうとう)とサクラコは語る。

 そうやって論理立って語ることで、ニイロの不安を少しでも和らげるように。


 ただ、ニイロの不安の根本は、『戦争』という得体の知れない化け物に対する曖昧模糊(あいまいもこ)としたものだ。

 戦争の無い時代に生まれた日本人として、TVの向こうの出来事だった戦争に自分が参加するという現実が、まだ具体的なものとして受け入れられない自分がいるのだ。

 そういった理屈によるものではない気持ちに答えなど無いのだが、それでもサクラコが一生懸命にニイロの気持ちを軽くしようと語ってくれているのはわかる。


「それに、ニーロは、いえ、私達(・・)はもう、ガンマ・アースの住人です。ニーロの思うまま生きればいいのです。王国に肩入れする必要はありませんが、もっと積極的に係わっていくことも考えていいのではないでしょうか」


 今のところ、ニイロがベータ・アースに戻る手段は無い。将来はわからないが、何の確証も無いことをアテにはできない。

 それならば、この世界に根を下ろす覚悟は必要だ。

 黙ってサクラコの話を聞き終えたニイロは、ぽつりと言った。


「ありがとな、サクラコ」


「私はいつだってニーロと一緒ですから」


 はにかんだ表情でサクラコは笑った。

 その表情を見て、ニイロの心に変化が生まれる。


「そうだな・・・・・・腹ぁ、(くく)るか」






 ◇ ◇ ◇


 新兵器を使用しての襲撃によりドマイセン軍の手に落ちたリンデン砦には、今、高々とドマイセンの紋章を記した旗幟(きし)が立ち並んでいた。

 ビンガイン方面の門は破壊されたが、砦の占拠から5日が経った今日、その門も既に修復されていた。

 それ以外の損傷は皆無に等しく、砦内は後詰の兵によって占拠されている。


「どうですかな、将軍。王国兵の様子は」


 砦攻撃の総指揮を執ったドマイセン軍の将軍、オルフ・ヤノスが尋ねた。

 ヤノスは42歳。グレーの髪を短く刈り込み、代わりに顎髭(あごひげ)を長く伸ばしている。

 大柄な体躯は鍛え抜かれており、ドマイセン軍の中では『髭の将軍』として有名だった。


「どうもこうもありません。落とされた橋の再架橋だけは絶対に阻止するつもりでしょう。兵が姿を見せただけで雨のように矢が降ってくる。

 後方の兵にも手筈(てはず)通り仮設の橋を造らせていますが、こちらもなかなか・・・・・・それに、向こうに伏せさせていた斥候からの連絡が途絶えているのも気になります」


 オルフ・ヤノスに『将軍』と呼びかけられ、辟易した様子で答えたのはトール・ハルマイン。ビンガイン軍の指揮官である。

 金髪の貴公子然とした風貌の青年で、周囲の評価は若いながら将来を嘱望されてはいるが、実のところ他国からの評価は『優柔不断』『指揮官としては優しすぎる』『臆病者』と、決して(かんば)しくない。

 ビンガインでは名門の、ハルマイン家の出であることからの乖離(かいり)であった。

 実は、リンデン砦攻略軍600の内、攻撃に参加したのはドマイセン軍の300であったが、後方にあった残りの300はビンガイン軍の兵士である。

 ハルマインは、その300の兵の指揮官だ。


 現在、主力であったドマイセン軍は砦に入らず、ビンガイン方面の橋の手前に陣を張って滞在しており、ビンガイン軍は250をドマイセン軍の陣地と並んで滞陣させ、残り50は砦内に詰めている。

 今、2人がいるのは、砦内の兵舎の一画だ。

 テーブルの上には周辺地域の地図が描かれた羊皮紙が広げられ、周りには2人の他にもそれぞれの副官2人づつの姿がある。

 愚痴とも取れるハルマインの言葉に、ヤノスの副官が噛み付いた。


「何を弱気なことを! 我々(ドマイセン)は予定通り事を進めたのだ。少しは働いてもらわねば、同盟の意味がなかろう!」


 いきり立つ副官を手で制して、ヤノスもハルマインを()き立てた。


「取りあえず、ここまでは事前の作戦通りでもある。ビンガイン軍にも予定通り働いてもらわねば、そちらのメンツにも係わろう」


「ええ、わかってはいるのです・・・・・・いるのですが、どうも兵達からすれば士気が上がらないのも事実です。わかってはいるのですが・・・・・・」


 苦渋の表情でハルマインが訴える。


「何を寝ぼけたことを! この勝ち戦で士気が上がらないなどと、ビンガイン兵の弱卒ぶりには呆れ果てたものですな」


 ヤノスの副官が非難する。

 建前の立場から言えば同盟軍の指揮官に対する言葉として非常に礼を欠く行為なのだが、ハルマインには返す言葉が無い。

 ハルマインの副官2人も、口惜しそうではあるが反論する材料が無かった。


 問題は砦に(ひるがえ)旗幟(きし)だ。

 ドマイセンの物だけで、ビンガインの物は1本も無い。

 これが、連合軍であるにも係わらず、完全に裏方に回されているビンガイン軍の兵士達の士気を(いちじる)しく()いでいた。

 しかし、だからと言って殆ど何もしていないビンガイン軍が、『自分達の旗幟も掲げさせてくれ』とは言い(にく)い。


 ドマイセン側からすれば、秘密兵器である鉄火砲(・・・)を用いて砦を落としたのは自分たちだという自負がある。

 実際に3門の鉄火砲を300のドマイセン兵で運用し、ドマイセン兵のみで砦を落としたのだから、砦に自分達の旗幟(きし)を掲げるのは当たり前だ、という訳だ。


 ハルマインもそれを理解している。それに、この作戦の肝は今ここにドマイセン軍がいると王国にアピールすることだ。

 その意味で砦にドマイセンの旗幟を派手に掲げることは目的にも適っている。

 ビンガイン軍は単なる数合わせであり、囮であり、雑用係でしかないし、それ以上の事を成す力も無い。


「ヤノス殿、無理を承知でお願いしますが、あの鉄火砲をお借りすることは出来まいか。あれを浴びせれば、間違いなく敵は怯むでしょう。さすれば、その隙に造らせている仮設橋を一気に掛けることも・・・・・・」


 駄目元で申し出たハルマインの言葉を、ヤノスは皆まで聞くことなく押し止めた。


「それはお断りする。あれは我が軍の至宝とも言うべきもの。同盟とはいえ、他国に軽々と渡せるものではない。それに、ここで貴殿の兵に貸し与えたところで、あれの運用は専門の訓練を受けた我が軍の兵でなければ扱えぬだろう」


「では部隊ごと・・・・・・」「それで良いのか?」


 貸してくれと言うハルマインの言葉に被せるように、ヤノスが念を押した。

 ヤノスの言葉に、ハルマインは顔を赤くして伏せる。

 武器を貸してくれ、兵も貸してくれでは、何の為にビンガイン兵がいるのかわからなくなる。

 もちろん、秘密兵器である鉄火砲の運用を、ビンガインに(ゆだ)ねるなど論外なことは、ハルマインも理解している。

 思わず苦し紛れに言い出したに過ぎないことだったが、意外にもヤノスの口からは別の申し出が飛び出した。


「しかし、だ。同盟の軍が困っているのに手を差し出さないのも何だ。

 鉄火砲は無理だが、代わりに大盾を貸し出そうではないか。あれも今回の作戦に合わせて特別に作らせたものだが、あれを押し立てて敵に矢合戦を挑まれるといい。

 大きい上に重すぎて野戦にはとても使えんが、この場合は問題なかろう。あれを抜ける弓矢など、この世に存在しないからな。数は50もあれば宜しいか?」


 大盾とは、畳一畳(たたみいちじょう)ほどもある分厚い板に薄い鉄板を貼り付けた、鉄火砲の周囲を囲んでいた盾のことだ。

 その申し出にハルマインは思わず顔を上げてヤノスを見るが、その表情から真意は読み取れない。


「よ、宜しいのですか?」


「なあに、それで貴殿の軍にも存分に戦ってもらえれば良い」


 ヤノスはそう言って、盾の貸し出しの用意の為に副官を1人残し、兵舎を後にした。




「全く、ビンガインの弱兵は聞いておりましたが、これほどまで酷いとは思っておりませんでした。よくもまあ、あれで国が守れるものと、逆に感心しますな」


 残らなかった方の副官が、ドマイセン兵の野営する陣に戻るヤノスに付き従いながら愚痴を零している。


「なに、あんな貧乏国(ビンガイン)など、取っても重荷になるだけで価値も無いから放置されておるだけのこと。所詮、数合わせに過ぎん。元々戦力としての計算には入っておらんよ。

 ここを落とした時点で我々の作戦は()ったも同然。後は時間を稼ぐだけなのだし、彼等が架橋に成功するも失敗するも大勢に影響はなかろう。まあ、これだけお膳立てしてやったのだ、喜んで我等の矢除けくらいにはなってくれるのではないか?」


 ドマイセンの野営陣地の中で、一際大きな幕舎に向かって歩きながら、ヤノスの方も、気心の知れた副官相手に表情を緩ませてホンネを漏らす。


「せっかく怪我人が出た程度で死者もなく(ここ)を落とせたことです。これで将軍の名声は一段と輝くでしょうし、後の被害は彼等(ビンガイン軍)の担当という訳ですか」


 みえみえの追従を、ヤノスは苦笑して否定した。


「おいおい、それでは俺が彼等(ビンガイン軍)をハメたようではないか。俺は本国の指示通りに動いているだけだぞ? 見せ場の無い彼等(ビンガイン軍)に舞台を整えてやっただけだ。

 後はせいぜい派手に撃ち合ってもらえばいい。恐らく数日中にでも到着するだろう王国の援軍が多ければ多いほど、ジーマール(あちら)の方は手薄になるだろうからな」


「後はジーマール将軍のお手並み拝見ということですな」


 2人は話しながら幕舎に到着すると、入り口の両脇に立つ歩哨の敬礼に身振りで返しながら中へと入った。

 幕舎の中には四輪の荷車を改造した台車に載せられた鉄火砲が3台、舳先を揃えて置かれており、脇には大きな木箱が多数積まれている。


「これがあれば王国など恐るるに足りん」


 そう言うヤノスの視線の先は、既に初陣を飾った鉄火砲ではなく、脇に置かれた木箱だ。

 木箱の中には同盟国(ビンガイン)にも知らせていない、さらなる秘密兵器が収められていた。


「これを使う日が待ち遠しいですなあ」


 ニヤニヤと笑いながら副官も追従する。


「どうかな? 作戦が上手くいけば、これを使う前に王国軍(やつら)は撤退するかも知れんぞ?」


 揶揄(からか)うような口調でヤノスが副官に言った、ちょうどその時、幕舎の外か騒がしくなると、「失礼します!」という大声と共に、2人の立つ背後にある入り口から一人の兵士が飛び込んできた。

 慌てた様子の兵士は、一瞬、何もない場所で何かにぶつかったかのように体勢を崩すが、すぐに立て直し、直立不動で用件を伝える。


「ヤノス将軍! ビンガインのハルマイン将軍から緊急の伝令です。対岸に王国兵多数。敵の援軍が到着したものと思われるとのことです」


「ようやく来たか。予定通りだが、こうまで思惑通りに事が運ぶと逆に恐ろしくなるな」


 伝言を受けたヤノスは、余裕の表情で副官と伝令の兵士を伴って幕舎を後にした。




 人が去り、誰もいないはずの幕舎の中で、小さく「パチッ」と静電気のような音が響くと、(うずたか)く積まれた木箱の脇に、全身を灰色一色の、ポンチョのような衣装に足元まで身を包んだ人物が姿を現した。

 その人物は、ほとんど聞き取れないような小声で一言二言、独り言(・・・)を発した後、顔を覆っていたヴェール付きのフードを外す。

 そこに現れたのは、ピンク色の髪の少女、サクラコだった。


 サクラコは、ゆっくりと鉄火砲の周囲を一周しながら、時折小声でここにいない人物、ニイロと言葉を交わす。


「はい、仰俯角(ぎょうふかく)も人力のようです・・・・・・はい、前装式ですね。博物館モノです・・・・・・発射は・・・・・・ああ、そうかも知れません。確かにその点はこの世界ならではかも・・・・・・」


 呟くように通信しながら、積み上げてある木箱の元に戻る。


「予想だと、アレだと思うのですが、さてさて、何が出てくるのでしょうか」


 そう呟いて木箱の一つに手を掛け、蓋を開けて中身を確認する。


「ああ、やっぱり・・・・・・予想が当ったのはいいですけど、意外性という点からはガッカリです」


 サクラコが木箱から取り出したそれは、1mほどの木製の棒の先に、口径1.5cm、長さ1.5mほどの鉄の筒が付いた物で、ベータ・アースでは『マドファ』と言われた物に近い。

 いわゆる火槍、要するに銃のご先祖様だ。

 ドマイセン軍は、鉄火砲と共にこの火槍を開発し、鉄火棒と名付けて配備していた。


「見たところ50本くらいありますね。お土産に何本か頂いて行きたいところですけど、隠せないですし、こういう時、ニーロのポシェットが羨ましいです。今度、シンシアさんにお願いしてみようかしら・・・・・・」


 呟きながら木箱を元通りにする。


「さて、後は脱出ですが・・・・・・まだ時間もあるし気長に待ちましょう。待つのは苦になりませんし」


 再びフードを被り、ステルス機能をonにして姿を消した。

次回更新は11月23日の予定です。

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