第14話 ルードサレン城の会談 前編
25日の更新を予告していましたが、前倒しに成功。
ますます予告の意味が・・・・・・。
ルードサレンの城下町を囲う城壁に幾つかある城門。
その内、ルードサレン城を正面に見る位置にある、最も大きな正門の前には、両側に儀仗兵が立ち並び、城主の孫娘一行が乗る馬車を迎える準備が整っていた。
この時期は、臨時の職にありつこうとする傭兵達や、それらを狙った行商人などで混雑する城下町だが、領軍総出で人波は整理され、主役の到着を今か今かと待っている。
「いったい何が始まるんです?」
正門から伸びる通り沿いに立ち並んだ商店の一軒で、偶々遠出に必要な消耗品の買出しに来ていた、まだ少年と言ってもいい若い傭兵の男が、店先に出した椅子に座って店番をしていた年配の女店員に尋ねた。
「さー? アタシもよく知らないよ。兵隊の話じゃ、どっかに出掛けてた伯爵様のとこのお嬢様が、半月振りに戻るとか何とか言ってたねえ」
「たった半月? 半年とかじゃなくて?」
「あら、あんた知らないかね。伯爵様のお孫さんなんだけどね、そりゃもう目の中に入れても痛くないってほど可愛がっておられてねえ。伯爵様の親馬鹿、じゃなくて孫馬鹿は、ルードサレンじゃ有名な話さ。お出掛けになったのは覚えてるから、それが確か半月くらい前だったよ」
そんな店先での会話を耳にした別の傭兵の男が横から話に加わった。
「なんだ、知らないのか? ほら、半月くらい前にギガントライの噂があったろ。あれを討伐したって連中が来るらしいぜ」
「えーっ? あれってデマじゃなかったんですか? ギガントライ10頭以上相手にするとか、絶対人間じゃ無理でしょう」
「俺もそう思ってたんだけどなあ、ただ、ほら、リュドーのダグ、って名前くらい聞いたことあんだろ?」
「ああ、ここらじゃ珍しいハイ・オークの傭兵ですね。会ったことは無いですけど、魔道士のニーアーレイと、石壁のコズノーの3人組は知らないとモグリだって仲間が言ってましたよ」
「それそれ、そいつらが噛んでるらしくて、単なるデマとも思えなくてなあ」
「ホントですか・・・・・・でも、それにしたってギガントライは荷が重すぎるし、いったいどんな化け物が・・・・・・」
「さあなあ、稀代の英雄か、はたまた大ペテン師か、ま、どっちにしても俺達庶民にゃ、あんまり関係無いかな?」
「それはそうですね」
傭兵達は、そう言って笑い合いながら、それぞれ用事を済ませようと商品の品定めに戻った、丁度その時、騒がしかった往来の様子が一変した。
野次馬と通行人の醸し出す不協和音が止んだと同時に、かっぽかっぽガタゴトと、耳慣れた馬車の通る音と共に、何やら聞きなれないメロディーが流れてくる。
その様子に買い物の手を止め、店先から顔を出して表を見た若い傭兵の目に、今まで見たことも無い異形のシルエットが飛び込んできた。
「何だあれ・・・・・・」
正門を潜って入城してきた一行は、先導する4頭の騎馬に率いられ、中央の3台の馬車の前後を護衛する11騎と30名の歩兵からなる護衛団。
しかし、見守る群衆の目を奪ったのは、その護衛団の規模ではなく、先頭2台の馬車の左右を進む異形の物体だった。
それは、4機のファージ達。
識別用に、それぞれ赤、青、黄、緑で塗装されたサッカーボール大の丸い頭をユーモラスに揺らしながら、ビープ音で器用に某怪獣映画の自衛隊出動マーチを奏でていた。
沿道の住民達に向かってマニピュレーターを左右に振っているのは挨拶のつもりだろうか。
(お前ら、浮かれすぎ・・・・・・しかもどんな選曲だよ・・・・・・いや、好きだけどさあ・・・・・・)
そんな様子を馬車の窓から眺めながら、ニイロはガックリと肩を落とすが、サクラコの方は御機嫌なようだ。
「汎用歩兵のビープ音では、これが限界でしょうか。あ、そうだ、スピーカーから行進曲を中継させて流す手もありましたね! 上にいるクラブ達にも連携させて、次はワンダバマ・・・・・・」
などと呟いているので慌てて止めさせた。
ステルスモードで上空警戒させているのに、何もいない上空からワンダバと声が降り注いだ日には領都の住民がパニックになりかねない。
そんなニイロ達を乗せた馬車は正門から続く目抜き通りを過ぎると、右に折れ左に折れ、やがて二重になった城壁の内側、ルードサレン城の中心部へと向かった。
内堀に掛けられた跳ね橋を渡ると、護衛団の大部分と侍女達を乗せた馬車は別行動となり、4騎の騎士とニイロ達を乗せた馬車だけが、左右に2塔の尖塔を持つ、特徴的な造りの城館へと乗りつけることとなった。
一行が城館の玄関前で馬車を降りると、そこで待っていたらしい長身で白髪の年配男性が進み出て、優雅な一礼をすると口上を述べる。
「皆様、ようこそお越しくださいました。私、当家にて家令を申し付かっております、テルナンと申します。長旅でお疲れでしょう。皆様にはお部屋をご用意しておりますので、まずはそちらでお寛ぎ下さい。後程、準備が出来ましたら、主が御挨拶したいと申しておりますのでお迎えに上がりたいと存じます・・・・・・が・・・・・・」
そこまで言って、最後に戸惑った様子でニイロの後ろに整列した4機のファージ達をチラチラと伺う。
初めて見るファージにどう対応していいか、流石の老練な家令も判断に困ったようだった。
「あ、彼等は気にしないで下さい」
ニイロはそう言うと、腰の亜空間ポーチから大型荷物用の展開式亜空間パネル(仮称)を取り出して展開し、ファージ達を順に収納する。
テルナンは、その様子に文字通り目を丸くしていたが、すぐに気を取り直すとニイロ達を屋敷の中へと誘っていった。
◇ ◇ ◇
一言で言えば、アデッティ・スコバヤは現状に戸惑っていた。
思えば約半月前、カジユ村での衝撃の体験の後、一旦はリュドーの街に戻ったものの、即、鳩便の知らせでルードサレンへと呼び出された。
取るものも取りあえずルードサレンへと馬を走らせ、ダスターツ伯爵への直接報告と、今後の対応に関する協議を行ったが、導き出された結論は、伯爵自身が件の人物の人となりを、直に会って見極めた上で対処すると言うことだった。
この方針に沿って、伯爵にとって掌中の珠である孫娘を使者に抜擢した判断には驚かされたが、兎に角穏便にという判断からは悪く無い手だとアデッティも思う。
それだけ伯爵が、件の人物を重要視している証明であったし、アデッティの報告の内容が、あれだけ荒唐無稽なものであったにも関わらず、信用してもらえた証拠でもあるのだから。
結局、リュドーの街の方はハズンとゾイーネの部下2人に任せたまま、アデッティ自身は伯爵のアドバイザーとしてルードサレンに留められ、予想外の長期滞在となっていた。
そして今、アデッティは伯爵の城館の一室で、城内の主だったメンバーと共に、件の人物が現れるのを待っていた。
室内には長テーブルが設えられており、上座の中央に当主のダスターツ伯が座り、その筆頭秘書のカウネル・ラッチが背後に控えている。
伯爵の左には領軍筆頭のギータン・ポアルソンと、副長で今回、出迎えの護衛団長を務めたガラクト・スローンが座り、右には筆頭行政官のラズム・トットレルが座る。アデッティはその隣だ。
アドバイザーとは言っても、ニイロ本人とは結局会うことはできなかったし、むしろ護衛団長として10日近くを一緒に過ごしたスローンがいれば、自分はいらないのでは? とも思うのだが、同席するよう命じられたからには仕方が無いことだ。
対面の為に用意された部屋は、普段使う応接室では迎え入れる人数から手狭ということで、臨時に用意された会議室を急遽それらしく整えたものだった。
他の大貴族であれば、いくらでも華美な部屋を用意できるのだろうが、そういったものを好まない伯爵の趣味が、今回は裏目に出たかも知れない、などとアデッティは思う。
誰も何も喋らない部屋で、そんな益体も無いことを考えていると、ドアをノックする音が室内に響いた。
すかさず室内にいた残る一人、ドアの傍にいた侍女長のエルンが小さくドアを開けて廊下を伺う。
2~3言、外と言葉を交わすと、振り向いてダスターツ伯に来訪者の名前を告げた。
「ニイロ様、ダグ様、サクラコ様、コズノー様、ニーアーレイ様、いらっしゃいました」
「うむ、入ってもらえ」
エルンの言葉にダスターツ伯が答える。
その言葉にエルンは「はい」と答えて一礼してから、再びドアに向き直ると、扉を開けて来訪者を招きいれた。
ニイロを先頭にして入室した一行は、伯爵領の面々に対して中央にニイロ、その右にサクラコとニーアーレイの女性陣、左にダグとコズノーの男性陣という形で相対する。
ちなみに、ニイロは黒のスーツに白地に薄いグレーのストライプの入ったネクタイを締め、いつものゴーグルもメガネタイプに変えている。
サクラコも、いつもの大正ナース服モドキから、薄いブルーのフォーマルなワンピースにベージュのジャケットを羽織りっていた。
胸元に光るブローチは、シルバーの枝に(たぶん)ジルコニアで葉を表現し、ピンクの真珠と珊瑚で花びらを表現した、桜の花を象った物だ。
そんなブローチも持ってたんだ、とニイロが聞くと、「こういった機会もあるだろうとシンシアさんが持たせてくれました」と言っていた。
武装は要人との会談ということで、ボディーチェックもあることを踏まえて何も持っていないが、いつものウエストバッグ風亜空間ポーチのベルトを外し、普通のポーチ風にしてサクラコに持たせている。
ダグ達も、それぞれ一張羅らしき服に着替えていた。
「初めまして。カオル・ニイロと言います。カオルが名前でニイロが姓ですが、私の国では全員が姓持ちですので貴族ではありません。普通の平民です。この度は、お招き頂き有難う御座います」
そう言って頭を下げるニイロの言葉に、アデッティは衝撃を受けた。
今、この場に居るダスターツ伯側の面々で、実際に戦闘のあった現場を目にしたのはアデッティだけであるが、貴族ではない者、単なる平民が個人で、あれほどの武力を持つということになる。
そんなアデッティの内心をよそに、サクラコやダグ達も銘々自己紹介を済ませ、ダスターツ伯は笑顔でニイロ達に席を勧めた。
「そうか。ニイロ殿は平民にしては教養がおありのようだ。しかし、我が領民の難儀を救って頂いた英雄に身分など小さいこと。まあ、座ってくれ。すぐに茶を用意させよう」
流石のダスターツ伯も、ニイロが平民という言葉には内心動揺があるようで、言葉遣いにブレが見られる。
着席を促され、ニイロとサクラコは極自然に、ダグは微妙な表情で、自分達は何もしていないという自覚のあるコズノーとニーアーレイは躊躇いがちに、それぞれ席についた。
全員が席に着いた所で、ダスターツ伯がニイロ達の背後、ドアの横にいたエルンに無言で頷くと、すかさずエルンが扉を開けて飲み物を菓子類を載せたワゴンを押した4人の侍女達を招き入れた。
「失礼いたします」
4人の侍女達は、室内の全員に完璧な所作で卒無くお茶とお菓子を配膳し、一礼すると部屋から退出する。
しかし、退出するドアの横にいたエルンが、4人の一番後ろにいた侍女に声を掛けた。
「貴女はこちらに」
そう言って自分の横にいるように指示する。
声を掛けられた侍女――サリア―― は、戸惑いながらも「はい」と返事をすると、エルンの横に並んで立った。
そして、ダスターツ伯が、全員に飲み物が行き渡るのを見届けた上で、ニイロ達に向かって言った。
「まずは紹介をしておこう。こちらにいるのが我が領軍を任せておるギータン・ポアルソン、それからガラクト・スローンは知っているな? そしてこっちが筆頭行政官のラズム・トットレルと、リュドーの街を任せているアデッティ・スコバヤだ。
まずは此度のギガントライ出現の件、こちらにいるスコバヤより報告を受けた。しかも、ギガントライ出現の直前には村を襲うコボルドの群れも対処してくれたと聞いた。もしも、ニイロ殿らがいなければ、その被害は甚大なものになっていただろう。救われた領民に代わり、このログソン・ロウ・ダスターツ、心から感謝の弁を述べたい」
そう言ってダスターツ伯は頭を下げた。
それを見て、ニイロとサクラコ以外の室内にいた全員が息を呑む。
貴族が平民に頭を下げるなど、絶対に有り得ないことだった。
「は、伯爵様・・・・・・」
思わず筆頭行政官のラズム・トットレルが何か言いかけるが、ダスターツ伯はそれを遮った。
「よいのだ。さっきも言ったが、本心からの感謝の意を表すのに身分など小さい」
そんな主従の様子を見ていたニイロが、ふと思いついたようにダスターツ伯に問いかけた。
「伯爵様の軍は、きっと強いのでしょうね」
「うん? 強いかと言われれば、王国一を自負してはいるが・・・・・・」
「私の国の、シンゲン・タケダという有名な昔の武将の言葉に、『人は城、人は城壁、情けは味方、仇は敵なり』という言葉があるのです。部下や領民を大事にして、その軍はすこぶる強かったと言われていますし、亡くなって400年以上が経つ今でも、非常に人気のある武将です」
その言葉に、ダスターツ伯は我が意を得たりと破顔した。
実際は『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』が正解だが、ニイロもそこまで正確に覚えてなかったし、石垣の所は城壁と、勝手にアレンジさせてもらった。
「ほうほう! そのような! まさしくそれは儂の目指す所だ! 他には無いのか?」
単に思いつきの言葉だったが、ダスターツ伯の琴線に触れたのか、食いつきの良さに多少気圧されつつ、他に何か適当な名言が無いか考える。
しかし、生憎と咄嗟には思いつかないので正直に答えた。
「今の言葉は伯爵様の言葉でふと思い出したもので、すぐに他のものは思いつかないですね。サクラコ、何かある?」
「はい、私のデータベースにも特筆するような名言格言は無いようです。次のコンタクトの際にシンシアさんに頼めばダウンロード出来ると思いますが・・・・・・」
申し訳無さそうにサクラコが言った。
「そうか。じゃあ、頼んでおいてもらっていい? ・・・・・・伯爵様、お望みでしたら、多少の時間は頂きますけど私の国の名言集みたいなものならお渡しできると思いますよ」
ニイロがそう言うと、ダスターツ伯も喜んだ様子で言った。
「それは楽しみなことだ。ちゃんと後で礼はしよう。どれくらいかかる?」
聞かれたニイロは頭の中で計算する。
次のコンタクトが約10日後の予定で、その後に当然、翻訳する時間が必要になる。
「そうですね、まだはっきりとした時間はわかりませんが、半月から一ヶ月くらいではないでしょうか」
「そうか、それは楽しみに待つことにしよう」
そう笑顔で話すダスターツ伯の後ろから、秘書官のゴホンという咳払いの音が聞こえる。
その音に気づいたダスターツ伯が、多少気まずそうな様子で話を続けた。
「ふむ・・・・・・では、話を戻すが・・・・・・宮廷におる輩とは違って、儂は面倒な駆け引きは好かんので率直に言おう。メリーチェに聞いた貴殿の人柄や、今、ここで話した様子から、どうやら貴殿は信頼できる人柄のように思える。が、問題は貴殿の武力と目的だ。
ギガントライが十数頭、実際に討伐されたことは、そちらのスコバヤから報告を受けておる。しかし、本来であればその討伐には1頭であっても百人単位の人員を必要とするのが普通なのだ。これは明らかに異常だ。故に、貴殿の持つ武力を実際にこの目で確かめたいと思いご足労願った。
さらに、その武力が本物であるのなら、貴殿はこの地に来て、その武力で何をしようと言うのか、その目的が知りたい。そしてもし、その目的が我が王国に害をなすものであるならば、例えその武力が本物であっても、儂は覚悟を決めねばならん」
鬼気迫る表情で捲くし立てたダスターツ伯は、そこでやや冷めかけた茶の入ったカップを手に取ると、一気に呷った。
ふう、と一息つきながら、空になったカップを戻し、真剣な表情でニイロを見つめ、平然としているサクラコを除いた室内の全員が、伯爵の気迫に圧されたように、やや青褪めた表情でニイロの様子を伺っている。
ニイロ自身からすれば、あのセントロサウルス類と思われる角竜を討伐したのは事実だし、この地に来た目的も調査であって疚しいところは何一つ無い。
(そういや、就職試験の時の圧迫面接も、こんな雰囲気だったっけ)
なので、相手が説明を求めるならば、落ち着いて説明するだけだ。
「まず、武力の証明と言っても、あの角竜・・・・・・ギガントライでしたっけ、ギガントライを倒した武力を見せろと言われても、人間相手にあんな武器を使うわけにはいきませんし、コボルド相手に使った武器も、手加減のできるようなものじゃありませんので、普通に相手を殺すか、良くて大怪我では模擬戦にもならないでしょう。実戦以外に証明する方法がありませんよ」
ニイロのその言葉に、ただ一人現場に立ち会ったダグが、うんうんと首を縦に振っている。
「しかし、ティンクレルで破落戸を無傷で捕らえたと聞いたが?」
それまで黙っていたスローンが口を挟んだ。彼は護衛団長としてティンクレルで直接現場に駆けつけた騎士から報告を受けている。
「ああ、あれは相手が破落戸だったからですよ。相手が強ければ強いほど、手加減は難しくなるものでしょう?」
「ふむ」
その答えに納得したのか、スローンは押し黙る。
すると、今度はサクラコが横から発言した。
「ニーロ、提案があるのですが、全て断ってもあちらは納得されないでしょうし、模擬戦という形で私がお相手して差し上げてはどうでしょう?」
「え? しかし、相手に怪我させるのはマズイよ。手足を狙ったって大怪我に違いないんだし」
相手が大怪我することを前提で交わされる会話に、大怪我させられる陣営の武官2人は苦笑いしているが、それを気にすることもなく、サクラコは言った。
「そこは考えがありますから大丈夫でけど、代わりに装備を幾つか使わせて下さい」
幾つかの装備名を挙げてニイロに依頼する。
相手方からすれば初めて聞く単語ばかりで見当もつかないが、ニイロからすればサクラコがどうするつもりかすぐに見当がついた。
ニイロは少しだけ逡巡したが、すぐに決断してダスターツ伯に提案する。
「サクラコがこのように言ってますので、1対1の模擬戦でどうでしょうか。それと、もう一つ、人間を模した中身に壊してもいい鎧を着せたものを2~3体、同じく壊れてもいい盾と一緒に用意して下さい。そちらの方は模擬戦の後で使います。あと、場所はなるべく広い場所を。他に被害が出るといけませんから」
「よかろう。見せてもらえるなら、こちらに否は無い、が、そちらのお嬢さんで大丈夫なのか?」
その提案に、ダスターツ伯も即座に答えるが、相手が華奢な娘にしか見えないサクラコと言うことで多少心配そうな表情を見せた。
「ええ、私は彼女を信頼してますし、実際、彼女は私の護衛でもありますから、私より強いですよ」
心配顔の伯爵だったが、笑って太鼓判を押すニイロの言葉に、ダスターツ伯も渋々ながら納得した様子で背後に控える秘書官に指示を出す。
「あいわかった。カウネル、聞いていたな? 場所と道具の準備をさせてくれ」
指示された秘書官は、「承知致しました」と答えると、準備をすべく、すぐに部屋を後にした。
次回更新予定は10月17日、要は明日の予定です。
次回分はほぼ99%仕上がってるので、まあ、なんとかなるだろうと、甘目の見積もりですが。
今のところ物事が上手く回って前倒しに成功し続けてますけど、いつものように余裕を持ってマージンを取らずに、こんな風にタイトな日程で予告したらどうなるかなー?という実験込み。
色々と試行錯誤は大切ですよね。
失敗する可能性のあるものは、いずれ失敗する。
マーフィーの法則でしたっけ・・・・・・。