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毎日が楽しくなっていた。

シュガーの顔を見る為、シュガーと話しをする為に学校に通っているといっても過言ではない。


顔を見だけで、ついつい笑顔になってしまう。



「夏実なんか最近、よくニヤニヤしてない?」



話しかけてきたのは、友達の彩乃だ。

ゆるふわな感じが大好きな私とは少し違う。

きつめな見た目で派手好き。

彼氏も男っぽい奴で、強引なタイプ。


私とは正反対なはずなんだけど、何故か気が合う。



『これが恋ですかねぇ…』


「なになに?夏実、ついに好きな人できたの?」


『好き…なのかな?可愛いと思う』



視線の先には、他の男子と話すシュガーがいた。



『他の男子と見比べても、鈴木くんだけ可愛く見えるんだよねぇ。』


「鈴木って、転校生の?パッとしないじゃん。なんか、華がないっていうか」


『華があるとかないとかじゃなくて、甘い感じがする。匂いも何となく甘いし』


「なにそれ、よくわかんない。よくわかんないけど、私の好みではないなー」


『だろうね』



他の人には、できるだけわからなくていい。

むしろ、わたしにだけわかってる方が平和的で良いとさえ思う。



『ちょっと私、トイレ行ってくるね』


「いってらっしゃーい」



教室を出るときに、教室の入り口の手前で話しているシュガーと一瞬目が合って、少し微笑んで教室をでる。

私が微笑むと、微笑み返してくれる。

そういうところまで、抜け目がないな、と思う。



「三園さん!」



教室から数歩、歩いた所で、腕を捕まれて、後ろにグイッと引っ張られた。


その声は聞き間違えるはずもない、シュガーのもの。

初めて触れられたかもしれない。

恥ずかしくて、振り向くのを躊躇う。


だけど、腕を引っ張られているのに、振り向かないのもおかしいので、振り向くのを躊躇したことがわからないくらいで振り向いた。



「こないだ、三園さんからチョコもらったお返し」



そういって両手で包み込むように手渡されたのは、レアチーズケーキ味の飴だった。



『ありがとう。じゃあね!』


「うん。」



恥ずかしさのあまり、何も反応できずに、その場を後にして、トイレに向かってしまった。


お礼を言って、立ち去る。

それがその時の私には限界だったのだ。

他の男子に同じ事をされたら…もっと話せるのに。


というか、あんな両手で包み込むように飴渡してくる男子なんて他にいないし。


身長低くても、顔が可愛い系でも、鈴木くんほど可愛い男子なんて他にいない。



『飴…』



食べるべき?

食べたくないけど、食べないと感想言えないし、鈴木くんは私のあげたチョコをすぐに食べてくれたし。

そうすると、やっぱり人から貰ったお菓子はすぐに食べて相手に感想いうのが正解?


と、悶々と考えているのも馬鹿らしくなったので、口に飴を放り込んだ。



『甘い…けど、少し酸っぱい』



レアチーズケーキって、恋愛に少し似てるかもしれない。

って、乙女かよ!


心の中で思いっきりツッコミを入れたあと、大人しく教室に帰った。


教室に帰ると、鈴木くんは自分の席に座っていたので、自分の席に戻るついでに話しかける。



『鈴木くん、さっきはありがと。飴、美味しいね!』


「でしょ!三園さんも絶対好きだろうなーと思って」



どうやったら、そんな綺麗な顔で笑えるんだろう。

目が離せなくなる。


いつもは身長差があって、絶対に届かないだろうと思う鈴木くんのサラサラな髪の毛が目について、無意識に手を伸ばしていた。


鈴木くんは、突然頭を撫でられて、固まっている。



『鈴木くんの髪の毛って、サラサラだね』


「結構そう言われるね」



不自然ではないタイミングで、手を離すと、鈴木くんは何とも言えない表情で、私を見つめていた。



『あ、ごめん。急に髪さわられて嫌だったかな?』


「嫌っていうか、女の子に、そんなふうに頭撫でられた事ないからさ。ちょっとビックリして。」


『ごめん』


「嫌だったわけじゃないよ。むしろ、なんか心地よかった?かも。で、でもどうしていいかわかんない。」



鈴木くんは、少し恥ずかしそうに笑う。


私の脳内は、というと、

可愛すぎるだろ。

反則。

心地いいだと!?

抱き締めたい。

潰れるくらい抱き締めたい。

身長とか体格的に潰れるくらい抱き締めるとか、どう考えても無理だけど、表現的には合ってる!


とか、考えてはいるけど、

表情には出さない。

出さないように、努力はしてる。



『嫌じゃないなら、良かった。』



言葉にするのは、これが精一杯だった。


嫌じゃないなら、一日中撫で回していたい。

飽きるまで可愛がり続けたい。

むしろ、飽きる日がくるとは思えないけど。



「三園さんだって、髪の毛サラサラじゃん」



鈴木くんは、私の頭を撫でるのではなく、髪の毛を少し手にとって、指ですいた。


普通の男子なら、この機会に頭を撫で返してくるであろうタイミング。


そういう事をしてこない所も、鈴木くんの魅力だと思う。



『鈴木くんって、可愛いよね』


「えっ?」


『あ、男子は可愛いとか言われても嬉しくないよね』


「俺、可愛いキャラじゃないじゃん」



自覚なし…!!


確かに、天然じゃないとできない事ばかりだと思うけど。


思うけど!!


もはや、天然で可愛いキャラすぎて、実は計算でやってる腹黒系なんじゃないかと疑えてくるレベルなのに。



「それに、可愛いっていうのは、一般的に三園さんみたいな感じの女の子の事をいうんだよ。」




これは、ちょっとわざとらしい。

わざとらしいけど、これも天然なのか?


天然だと思わせといての、ここでの計算?



『お世辞いったって、お菓子しか出てこないんだからねー?』


「また美味しいお菓子とかあったら、教えてよ」


『いいよ。鈴木くんも教えてね』



うまい具合に、話しを切り上げてくる。

この絶妙なタイミング感。

相変わらず抜け目がない。


わざと抜け目作ってるっていうのもあるんだけど。

こういう、話題変えれるチャンス逃して、ずっと話しが変えられない男子は沢山いる。


鈴木くんは、あざとい。


ゆるふわ系女子の典型をマスターしている。


どう育ったら、こんな可愛い男子になるんだろう。

いい意味で、親の顔が見てみたい。


両親に紹介…ってのは、早すぎるけど、見てみたい。



『鈴木くんの、お父さんとお母さんってどんな人?』



あ、妄想から少し現実に言葉にしてしまった。




「んー、お母さんは凄い人かな。なんでもできる人。なんで、お父さん選んだろうって思うくらいかなー。」


『お父さんは?』


「結構、厳しいかな?」


『じゃあ、鈴木くんはママっ子だったんだね』


「そうかもしれない!」



もういっそ、マザコンとかって言われても、引かない気がする。


むしろ、子供に鈴木くんみたいな子供がほしい。


鈴木くんが子供になるのは無理だけど、鈴木の子供なら…って本当に気が早すぎる。

鈴木くんに脳内が見えなくて良かった。


こんな事考えてるってわかったら、引かれる。

というか、距離おかれる。

今の生活から鈴木くんの笑顔が消えるなんて、考えられない。



『鈴木くんって、彼女いた?』


「中学の時にいたよ。」


『高校生になってからは?』


「中学の時に付き合った子も、ちゃんと好きになって付き合ったわけじゃなくてさ、あんまり好きになるってわからないかも」


『私もだよー。』



鈴木くんに会うまでは、

恋したことなんてなかった。

初めて人を好きになったんだと思う。



「三園さん、モテそうなのに、彼氏いたことないの?」


『いたことはあるけど、すぐ終わっちゃった』


「なんか似てるね、俺達。」


『私もそう思う!』



周りがカップルだらけで、少し気持ちが焦って、好きだっていってくれる人がいて。

なんとなく嫌いじゃないし、付き合っても良いかなって思って。


みんなそのくらいの気持ちで付き合うものだと思ってた。


でも、手を繋いだり、キスをしたり。

そういうのは何か違うなって思って。


片方がそうしたくて、片方はそうしたくなくて。


それじゃ、恋愛してるんじゃなくて、

一方通行だもんね。



『いつか、好きになれる人、できるといいね』


「三園さんも。」



好きな人はいるよ。

目の前に。


そして、その目の前の人にも私を好きになってほしい。


どうしたら、鈴木くんは好きになってくれるかな?

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