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魔王達の非日常外伝 『NEGA』  作者: 真っ黒チェイサー
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ティル編その2「傷だらけの一日」

地面が大きく揺れた勢いで私は目を覚ました。顔を上げると日は高く昇っており、既に昼近くである事が分かった。しばらく呆けてからゆっくりと体を起こし、大きく伸びをする。一晩中火は焚かれていたのか、目の前の焚き火は既に小さな火になって燻っていた。

「んんー・・・・・・、ちょっとはエネルギー補給出来ましたかね・・・」

焚き火の光と熱をエネルギーに変えたおかげでいくらかエネルギーが回復していた。さらに太陽光もエネルギーに変換していたようで、昨日に比べてかなり体が軽い。

「これなら、日が沈むまではなんとか何も食べずにいけそうですね。」

そう呟き、盾を手に取って当て所なく歩き出した。

怪物の襲撃は昼夜問わず行われていたようで、あちこちに無惨な死体が転がっている。守れなかったことを少々心苦しく思いつつ、せめて手だけでも合わせようと私は足を止めた。・・・それがいけなかった。

死体に手を合わせようとしゃがみ込んだ私を狙い、「何か」が迫ってきていた。そんな事はつゆ知らず、私は10秒ほど死体に手を合わせていた。

「・・・・・・・・・・・・さて、と・・・?」

立ち上がろうとした時、辺りから何かが這い回るような音が耳に飛び込んできた。不思議に思って周りを見回すも、それらしき影は見えない。

「・・・一体、何・・・」

ぼやく声は途中で途切れた、関節をありえない方向に曲げて物陰を這い回る死体の群れを視界に捉えた事によって。

それは戦場にある程度慣れている私でも目を逸らしたくなる光景だった。蠢く屍の中には見知った顔もあり、思わず吐きそうになる。

「・・・う・・・っ」

吐き気を何とか堪え、彼らに襲われぬように足音を忍ばせてゆっくり後ずさる。しかし現実はとことんまで無慈悲だった。私の足元にあった死体、先程手を合わせた死体が私の足首を掴んだのだ。

「・・・ぁ、やば・・・」

思わず声を上げてしまい、はっと気付いたがもう遅かった。死体の群れが一斉にこちらを向く。

「・・・ああもう、やっぱりそうなりますよね・・・!」

足を掴む腕を思い切り踏み潰して脱し、私は盾から分離させた刀を構えて死体の群れに突撃した。

主様がわざわざ出張って彼らを汚染したのかは分からないが、耐久力はそこまで無いようで今までの怪物よりもすんなり斬る事が出来た。しかし数が多く、倒しても倒しても襲いかかってくる死体に次第に体力は削られていった。

「・・・はぁ、はぁ・・・っ・・・幾ら何でも、多過ぎますって・・・」

隙を見せると掴み掛かられ、そこから一気に攻撃を食らってしまう。戦闘を始めてから敵の数は減るどころか増える一方で、まともにやり合っていてはいずれこちらが死ぬ。

「・・・大技、使わないと駄目みたいですね・・・!」

刀身をするすると縮めてコンパクトにし、そのまま盾に収納する。盾も投げ捨て、敵を限界まで引きつけてから私は全身から思い切り放電した。

「うっ、らぁぁぁああぁああああああああ!!!!!」

溜めていたエネルギーを使い切る勢いで辺りを焼き払っていく。放電を終わらせると、辺りの死体の群れは影も形も無くなっていた。

「・・・は、ぁ・・・・・・っ」

未だパチパチとスパークする髪をかきあげ、私は荒い息を吐いた。今ので溜めたエネルギーをかなり消費してしまったし、日もそろそろ沈むから太陽光からエネルギー補給をする事も出来なくなる。

「・・・仕方なし、ですね・・・」

最後の一枚のチョコレートを取り出し、半分に割ってから口に押し込んだ、そのまま一息に噛み砕き、ばりぼりと咀嚼する。

チョコレートを飲み込み、いくらかエネルギーが回復したのを確認してから私はその場に座り込んだ。流石に戦いっぱなしは疲れたので、少しだけでも休息を取りたかった。

「・・・あとどれくらい、こんなのが続くんですかね・・・」

呟くも、返事をする者は誰もいない。

十分ほど休息を取ってから私は再び立ち上がった。どこか安全な所でもないかとふと思い、折角だから探してみようと考えたのだ。

微かに明るい西の空を眺めながら歩いていると、何かがずるずると引きずられるような音がした。まるで巨大な何かが這いずっているような、そんな音。

「この音・・・かなり、でかいですね・・・」

その予想に間違いは無かった。私の視界に飛び込んできたのは複数の民家が連なって形成された蛇のような怪物だった。

「・・・うわ、どうしましょ・・・」

間をおかずに飛びかかってくる怪物、その攻撃を盾で逸らしてから爆発の応用で距離を取る。

ビームを放って一気に消し飛ばしてもいいのだが、果たしてビーム程度で消し飛ばせるのか。高出力ならそれも可能かもしれないが、そんな事をした日には空腹と体力切れで倒れこむのが目に見えている。

「・・・・・・ああもう、まどろっこしい!」

数秒間の思考の後、細かい事は無しにして思い切りビームを放とうと腕を突き出した。わざわざ出し惜しみしているような余裕はない。

そう思ったのもつかの間、視界いっぱいに何かが現れると同時に突き出した右腕の肘辺りに激痛が走った。ーーーーー怪物が、私の腕に食らいついていた。

「・・・い"、あ"・・・っ!?」

反対の手に握った盾を剣に変えて斬り付けるも、怪物はビクともしなかった。それどころかますます噛む力を強め、私の腕を食い千切らんとする。

「ぎぁ、あが・・・っ!!」

私は痛みに耐えかね、噛み付かれている腕から思い切りビームを放った。流石に体内は表面ほど硬くなかったのか、怪物の体が内部から崩壊していくのが分かる。

「・・・これ、で・・・っ!?」

力任せに腕を引き抜こうとするが、それを叶わなかった。最期の抵抗とばかりに、怪物が私の腕を思い切り咬みちぎったからだ。

「・・・い、あ"ぁぁああぁあぁぁっ!!!?」

あまりの痛みに視界が真っ白になる。傷口からは夥しい量の血が溢れ、辺りをびちゃびちゃと紅く染め上げていく。

「ぁ"、うで、が・・・っ・・・」

肘から先が無くなった腕は、私に最悪の過去を思い起こさせた。痛みとトラウマによる恐怖で、しばらく私は何もする事が出来なかった。

「・・・ーーーっ、ふ、ぅ・・・」

長い間の後、私は残った手で何とか止血してからその場に倒れこんだ。辺りは自分の血で酷い有様になっていたが、その場から動く気力は残されていなかった。ただ、今は泥のように眠りたかった。

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