班員決め
丁度20話目にしてやっと一段落目を下げる方法がわかりました!今まで何やってたんだ私
暗い、暗い世界を旅しているようだ。
上も下も、右も左も、前も後ろも、未来も過去も、来世も前世も現世も分からない。
いや、現世はわかっている。
問題はそこではない。
とりあえずよくわからない。
先程まで綺麗な人が目の前にいたような……。でもよくよく考えると声だけだったような。
夢―――夢だったのか。
ああ、わからない。
「―――――」
何か聞こえる。
「―――さん」
「――いばらさん!」
茨さん?誰だそれは。私は。
「細原さん!起きて!」
意識がはっきりするとはこういうことなのだろう。今ならすべてわかる。私は寝ていたのだと。
ところで今は一体何の時間なんだろう。
目の前にいる男子、この前私を質問攻めにした人に聞いてみよう。
「質問攻めにしたのは僕じゃなくてクラスのみんなだけどね」
そうだった、そうだった。
彼は質問をまとめて簡単にしてくれた心優しい人だった。
「今は一時間目だよ。今週末のオリエンテーションの班を決めるみたいだよ」
オリエンテーション?なんだ?
「土曜日曜月曜、二泊三日を裏山で過ごすものだよ」
「ふーん」
めんどくさいな、と声には出さないでおいた。
班か。契たちと組めばいいか。
そう思っていると。
「さっさーん、包月起きた?」
「うん。丁度オリエンテーションについて説明してたとこ。それともしかしてさっさんって僕のこと?」
「おはよう包月。ということで班はあたしと春人と縁そんでもって包月何だけと……あと一人どうしようかなーてとこ」
「なるほど」
「あれ?仙道さん僕のこと無視してない?」
「誰かいない、包月」
「……じゃあ、さっさんでいいんじゃない?」
「さっさん大丈夫?」
「大丈夫だけど……。さっさんて僕のこと?」
「じゃあ春人と縁も呼んで先生に提出しよっか」
「先生は?」
「教卓んとこで寝てる」
嘘だろと思いながら教卓を見ると担任が寝ていた。
パイプ椅子にもたれてぐっすりと。
どうしよう私まで眠くなってきた。
寝たらまた綺麗な人と会えるかな。
などと考えていると。
「おはようございます。包月ちゃん
「おはよう縁。そしておやすみ」
「寝ちゃ駄目です!」
そうか。なら起きてないと。
よく見ると、いやよく見なくとも春人もいた。
これでオリエンテーションの班員が揃った。
「よーし。全員揃ったことだし一応自己紹介しとこう!まずはあたしから。仙道契!何か切りたい物があったらあたしに言ってね!じゃ次春人」
「金剛春人」
「……」
「……」
「……」
「……」
他には何もないみたいだ。
「じゃ、じゃあ私がいきますね。紫木縁です。えーっと植物のことだったら何でも聞いてください。よ、よろしくお願いします!次は包月ちゃんお願い!」
「細原包月です。毛がしたら言って治すから」
「じゃあ細原さんはやっぱり……」
さっさんは物わかりがいいのか続きは言わないでくれた。
「最後は僕だね。左々《ささ》箏介と言います。呼び名は自由でいいよ。もう好き勝手に呼ばれているからね」
起きたばかりだから頭があまりめぐってなかったみたいだ。
今の自己紹介でようやくさっさんをしっかり人式できるようになった。
髪は紫色で長さは普通。
なんといえばいいのだろうか、このさっさんの雰囲気は。適する言葉が見つからないでいると縁が。
「さっさんさんて委員長、という雰囲気がしますね」
それだ!と思った。
それとも紫さっさんさんはやめてあげよう。さっさんちょっと困っているよ。
「委員長ぽいかな?確かに中学の時は三年間学級委員長やってたけど」
じゃあもうあだ名も委員長でいいんじゃないのか。
「とりあえずこの話は置いといて。オリエンテーションの日帝とか確認したしておこうか。はい、要項が書いてある紙だよ、細原さん」
東京魔法高等学校オリエンテーション 2500年度
日程 4月29日(土)~5月1日(月)
目的 友誼を深める。野営に慣れる。魔物に慣れ
る。
持ち物 携帯食料が三日分学校から配布される。そ
の他は現地調達。
その他何が必要かは各々で考え調べ持
注意 班活動であることを忘れない。魔物が弱い
とはいえ警戒を怠らず。
最後に。過去このオリエンテーションで怪我人が出
ています。危うく死人が出ることがありました。
何かあったらすぐ教師もしくは生徒会に連絡。
これは魔物との戦いにおける最初のステップだ。
このオリエンテーションで現実と向き合え。
と紙には書かれていた。
私は寝ていたのでさっさんがちゃんととっといてくれた。
みんなが言うことには困惑した生徒が多数いたようだ。縁もその内の一人だそうだ。
契もそうなのかと聞くと。
「死人がでないんだったら、重畳じゃない」
確にと頷きそうになってしまった。
それと重畳なんてよく知ってるねと訊ねると。
「なんか格好いいから」
至って単純な理由だった。
春人にも同じ様に訊ねる。
「ん、俺は兄貴から聞かされていたからな。別段驚かなかった」
そうだったんだ。それとお兄さんいたんだね。
「ああ、今三年だ」
今度紹介でもしてもらおうかな。
最後にさっさんにも訊ねる。
「さっさんはもう固定なんだね。そうだね僕は……事前に知ってから」
「どうやって?」
「企業秘密」
これ以上聞けないみたいだ。
「そういう包月ちゃんはどう思ってるんですか。このオリエンテーションについて」
少しだけ間を置いて。
「楽しみ」
といつも通りの表情で嘘をついた。
楽しみなわけがない。めんどくさいだけだ。
でもなんとなく嘘をついた。だが嘘をついたことで収穫?があった。
契とさっさんが反応した。
契は嘘をついたら何となくわかると言っていたので当然だがさっさんはなんだろう。
契と同じようなのかもしれないと結論づけた。
でもどうしてわかったのかが謎になってくるな。
少しだけこのメンバーでのオリエンテーションが楽しみになってきた。