告白
登場人物出しすぎないようにしないように気をつけてますが、地味に増えていきますね。
追記:後半が気に入らなさ過ぎて変更しています。この小説にシリアスはそんなにいらないはずなんです。
時は経ち、デイルの季節となった。
木枯らしが吹く。木が寂しく、地面が紅と黄の絨毯を敷かれる時期。農作物が良く取れて、身分関係なく民衆も歓喜に沸く時期である。
マリーはリビングで食事をしていた。テーブルには色鮮やかな野菜を使ったサラダに程よく焼けて肉汁を湛えた小さめのステーキ、ミルクを使ったなめらかなスープ、そしてゼリー状の透明な液体の中には何種類もの果物が入っており、宝石箱のようだ。
健康にも見た目にも味にも気を配った素晴らしい料理である。しかし、少し前のアルのことで悩んでいたマリーでは、せっかくの料理のおいしさも堪能できなかっただろう。
マリーはアルの気持ちをとりあえずは深く考えないことにした。よくよく考えたら、まだ4歳である。いくらアルがしっかりしていると言っても、4歳のころに好きになった人を何十年も好きでいることなど滅多にないだろう。
自分と同じ年の(一応)異性ということに引っ張られ過ぎたのだろう。
食事をぺろりをお腹に収め、満足したマリーは女神ネイリアルへの祈りをささげてからリビングを後にした。
マリーがその小さな足で向かうのは自室である。今日は新しい習いごとが始まるのだ。マリーの付き人をやっているメイド、ナナルがマリーの足取りを一切邪魔することなく自然に扉を開けた。自室に戻ると、時計を見る。時計は13周と5刻みを指していた。
「うん。あと25刻みくらいで先生が来るね。それまで本読んでるわ。」
ナナルに予定を告げると机の上に置いてあった本を取り出して読み始める。
(それにしても、いまだに時計の表記には慣れないなぁ)
こっそり苦笑しながらマリーは日本のことを思い出した。
前世では1日24時間、1時間は60分で1分は60秒であった。しかし、この世界において時間表記は周と刻みだ。1時間は1周、1分は1刻み、1秒は1進。幸いなのは1日が24周で1周が60刻み、と単位が変わっただけだ。これが違かったら今でも時間を勘違いしていただろう。
のんびり本を読んでいると、静かな部屋にノックの音が響いた。先生が来たのかと、持っていた本を閉じてナナルへ扉を開けるように指示を出す。
「失礼致します。」
「あ……れ……?」
凛とした声を出しながら入室してきたのは、濃い青紫色髪を団子にしてまとめたきっちりしてクールな印象の30代前半くらいの女性だった。笑みを浮かべることをせず、無表情な顔でマリーをじっと見つめる。どこかで見たような気がした。
「マリアンヌお嬢様、私が本日から手芸の指導をさせていただきます。サラ・ジョイスと申します。普段は主に身に付けるものの管理をさせていただいております。」
それを聞いて、衣装を選ぶときや洗濯場で見かけたことがあったことを思い出した。マリーのハッとした表情を見て、微かに笑みを浮かべた。
「基本的に家事はそれぞれの職人達がやりますが、一部は女性らしさの象徴として習うことになっています。12歳になると、貴族の女性たちを募って大会も開かれるのです。そこでの結果は将来的に結婚や家の格などにも影響を及ぼします。ですので、それぞれの家ごとで色々とその道を極めた者や長年勤めて家独自の技を持った者を採用して出来うる限り鍛え下げるのです。そして私は代々ユークラテス家に勤めている家系で、ユークラテス家に伝わる技や模様を教えるためだけに受け継ぎ、技術も幼き頃より極めてまいりました。少しでも、その鍛えた腕をお役立て出来たら恭悦至極にございます!」
「……。」
「サラさん!一気にしゃべりすぎですよ!お嬢様がポカーンってしてますよ!ポカーンって!」
どんどん白熱していったサラの言葉の勢いに押されたマリーはただでさえ大きい目をさらに大きくしていた。その様子を見たナナルはサラの悪い癖が出たぞ、と止めに入った。
ナナルのその言葉にはたと我に返り、サラは勢いよく頭を下げた。
「も、申し訳ございません。ユークラテス家への想いが高ぶってしまい、つい……。」
あまりに勢いのある謝罪にマリーは呆然としたままだ。最初の無表情でクールな印象など、どこかへ行ってしまった。その状況を見かねたナナルが割って入る。
「さ、さぁ!さっそく始めましょう!時間は有限ですよ!!」
その言葉に、マリーとサラはやっと元に戻った。
「そうですね。さっそく始めましょう。お嬢様はまだ幼いですので、針や挟みは使いません。最初は編み物から始めます。」
そういうと持っていたカバンを机の上へと置いて道具を取り出す。といっても、取り出したのは少し太めで淡い桃色の糸玉と銀色に輝くかぎ針だけである。
「こちらの道具なら怪我することも無いですし、一番簡単なものならすぐに完成しますよ。」
マリーは受け取った道具を眺めた。実に懐かしいものだった。まさか異世界に転生して前世と同じものを見ることになるとは思わなかった。かぎ針や糸玉というのは合理的に出来ているのか、こちらでも全く同じ形だった。
前世では家事全般万能だった身としては、ただただ懐かしいと思うだけだった。無意識に口の両端が持ち上がる。その顔を見て、サラはマリーが興味を持ってくれたと安心していた。
先ほどは勢いですべて説明したため伝わりきらなかったが、この世界この時代において女性はやるやらないは別として家事は出来なければいけないものなのだ。
特に大会という名目ではないが、12歳になると行う披露会では、成績で結婚相手が決まる、変わる可能性を秘めているのだ。そして、そこで優秀な成績を収めた者はその年のネイリアルレディとして崇められるのだ。
その影響力は馬鹿にしてはいけないレベルである。ネイリアルレディの発言1つで時の人が変わることもあるのだ。
「ではお嬢様、こちらの棒がかぎ棒、こちらが糸玉です。この玉から糸を少しずつ出して、かぎ棒を使って編み上げていきます。まずお手本としてこちらを……」
編み始めたサラの説明を聞きながら編み方を見つめる。編み方も基本は前世と同じだった。その手を見ていると前世を思い出して、思わず手が動いて編み始めてしまう。
「お、お嬢様……この説明でそんなに編めてしまったのですか!?」
驚きに染まったその声を聞いて、マリーはやってしまったと焦った。4歳の子供が初見の、それも最後まで説明し終えていないことを完璧にこなしているのだ。どう考えてもおかしい。顔を青くして服の下で嫌な汗をかく。
しかし、その焦りは無駄なものだった。
「流石お嬢様です!リディア様の血を継いでいるからでしょうか?初めてそんな手さばきとは……。私、感動しております!教師冥利に尽きます!」
サラの声は歓喜に震えていた。頬は興奮から赤くなり、目は光り輝いている。全く怪しんでいなかった。普通に生きていて、転生など考える方がおかしい。サラは血筋と才能だと思ったようだった。
そのことに安堵したマリーは『お母様は得意なのですか?』などと自分のことから話しを逸らしながら、その日は無事に終えたのだった。
その日の夜。談話室でいつもの家族の団欒をしていた。
「マリー!聞いたわよぉ?初めてなのに、まるで最初から知っていたみたいに編み物が出来たそうね?すごい誇らしいわ。流石私の子ね。今までは男の子しかいなかったから誰も編み物やらなくて寂しかったのよぉ。今度一緒に編みましょうね?」
まるで10代の娘が妹言うように話しかけるリディアの顔は満面の笑みだ。その言葉を聞いた兄達が反応する。
「流石マリーだな。頭が賢いだけじゃなくて編み物もできるなんて、これはネイリアルレディになるな。」
「お母様も得意ですし、無意識にやり方を覚えていたのかな?」
「マリーは可愛いし、礼儀正しいし、賢いし、その上で家事も完璧なんて……変な虫が付かないように気をつけないとな。」
デレデレとマリーを褒めちぎる。その場にいるマリーを除く全員の顔が弛んでいた。
「そんなにうまいのかぁ。じゃあ僕、マリーの作った編み物欲しいな。」
ハルの一言に、その場に戦慄が走る。
「マリーの……手作り……。」
「マリーの……初めての贈り物……。」
「!?」
全員の目が一瞬、野生の獣のような鋭い目つきになった。本当に一瞬にだったため、マリーが認識する前に全員穏やかな目に戻った。
一瞬の目配せの後、真っ先に動いたのはリディアだった。
「マリー……お母様に初めて作ったものをくれたら、すごぉ~く嬉しいなあ?」
「くっ母様、流石に早い。マリー、ギル兄様にも何か作ってくれないか?」
「あ、ずるい!ハル兄様にも作って!」
「マリー。ダイ兄様にも何か……くれないか?」
「マリーの作ったものは美しいだろうなぁ。ナディ兄様も欲しいなあ。」
「ちょっと、みんな!……マリー、まさかシェリー兄様にだけ何もないってことはないよね?」
「お父様はもちろん貰えるよね?」
わらわらとマリーへと言い募る。その様子を見て、怪訝に思われることなくひたすらに好意を示してくれる家族へ愛おしさがさらに高まった。とりあえず、7人分ともなると寒い季節まで時間もない。とりあえず無難にマフラーでも作るか、しかし外に巻いていけるかわからない。それならコースターや膝掛けとかでも……などと考えていた。
そこまで考えたところで前世を思い出した。母や妹、友達にせがまれて色々なものを作った。時にはフリーマーケットのようなもので売り物にしたこともある。作った物はどれも好評だった。
(そういえばアルに何もお返ししてないし、ちょっと何か作ろうかな?)
「そういえば、マリーはまだアル君にお返しをしていないわよね。どうせだから何か作ってあげたら?きっと心を込めて作ったものなら何でも喜んでくれるわよ。」
偉大なる母の力なのか、ちょうどアルのことを考えている時に話題を振られて驚く。
「いや、でもマリーがアルに対して『大好きー!』って思ってないなら別に良いんだぞ?」
家族でもない男に妹のプレゼントが渡るのが嫌なのか、嫌みな感じで言葉を重ねてくるシェリー。
シェリーの発言を聞いて流石に大人げないと思ったのか、ルイとギルは目だけでシェリーをたしなめる。少しバツが悪そうに口をとがさせて、視線を左右に泳がせる姿は将来ポーカーフェイスが出来るか不安になるものだったが、これがこいつのいいところでもあるだろうと流す。
そんな男3人のやりとりなど気付かないマリーはシェリーの『大好きー!』発言に一瞬照れるものの、一旦心の整理をした事柄である。すぐに子供を見守る母のような、弟を見守る姉のような気持ちでお返しを贈ることを決めた。
「そうですね。やっぱり貰ったら、返さなきゃだめですよね。」
1人でうんうんと首を縦に振っているマリーの姿を見て、男性陣の目が一瞬犯罪者のようになるが、すぐにいつものマリーにデレデレの表情に戻した。そして何事も無かったかのように、頑張るんだよ、俺達にもくれると嬉しいなと白々しく言うのであった。
家族の団欒を終えて、最年少で4歳のマリーは1番最初にベッドへと潜り込んだ。ナナルは部屋まで付き添って、布団を掛けたところで部屋を退出し、すぐそばにあるメイド専用の部屋で待機している。
さぁ寝るかと目をつぶったマリーだが、そう言えば明日はアルとのお茶会の日であることを思い出した。どうせならその時にプレゼント出来たほうがいいと思い、布団から静かに出て、引き出しの中にしまっていた貰いたての編み物セットを取り出す。
そして糸とかぎ棒を絡めて編み始めた。前世でプロレベルの腕前を持っていたマリー。小さくなったことで感覚は狂っているし、素材も微妙に違うため、前ほどうまく作れないし時間も掛るが2周も経つと立派なコースターが仕上がっていた。
(うん。コースターなら明日のお茶会で使えるし、最悪の場合でうちの家専用で使っても良いし、僕にしてはいい考えかな?)
自分の作ったコースターを裏表をペラペラと見比べて、完成品の状態を入念にチェックする。そして10刻みほど眺めたところで満足したマリーはおとなしく夢の国へと飛び立ったのだった。そんな気合を入れて作った翌朝、マリーは熱を出して寝込んでいた。
細く、小さいマリーが震えながら顔を真っ赤にして苦しそうにしている様を見て、何も思わない人はいないだろう。そのマリーの姿を見たナナルはすぐにメイド長に報告を入れて、医者を手配した。
「先生……一体お嬢様はどうしたのでしょう?」
「そこまで高くはありませんが、熱があります。お話を聞いた限りだと、昨晩は寝るのが少々遅れたようです。昨日は少し冷えましたし、季節の変わり目ですから、そのせいでしょう。」
そう言いながら掛けていた眼鏡を外して、カルテを眺める。この世界には魔法はないが、神術と神力はある。そしてはそれは日本における電気の代わりを果たしている。
遥か昔には魔法……神術を使う人物もいたそうだが、神力を生成する器官が時間とともに退化して、使えなくなってしまったのだ。今では昔に神力を込めた道具や、化石、鉱石などを燃料として利用している。
先ほどマリーに医者が使った眼鏡も神道具であり、掛けた状態で発動すると、患者の容体が事細かく把握することができる優れものなのだ。
もちろんそれを見ても、解析、治療する能力は別物なため医者は必要だ。
「とりあえず解熱の薬草を出しておきますので、それを食事と一緒に与えてください。それで様子を見ましょう。」
医者の言葉に頷き、マリーのことを心配そうに見詰めるナナル。自分には医術的補助は出来ないことを悔しく思いつつ、他の身の回りの世話を頑張ろうと決意を改めた。
そんな中、時計が14周を指すころにアルがやってきた。
この世界は神道具のおかげで文明はかなり発達しているが、通信機器の類はあまり開発が著しくない。そのせいで今だに1番早い情報伝達機器でも半日はかかるのだ。かなり早い移動方法は開発されているものの、熱があることがわかったのが9周半ばのことである。流石にアルが家を出る時間には連絡が間に合わなかったのだ。そのため、マリーが寝込んだことを知らなかったアルはユークラテス家の門を潜ってしまったのだった。
警備の者からアルが来訪したことを聞いて、急いでナナルはアルの元へと駆け寄る。会う一瞬前に自分の服装を鏡で問題確認した。そして申し訳なさそうな表情を作りながら話しかける。
「申し訳ございません、アルゼウス様。本日、マリアンヌ様は体調を崩されまして茶会に参加することができません。連絡が間に合わず、ご足労をお掛けして大変申し訳ございません。」
相手が子供と言えど、自分より身分の高い貴族である。場と立場に合った対応をしないと、ユークラテス家が馬鹿にされてしまう。もちろんむやみやたらとメイドに当たるような家ではないことを知っているが、メイドとしての誇りや常識の問題である。
「え、マリーは大丈夫なの?」
突然の断りに怒ることなく、真っ先にマリーを心配するアルに好感度が上がっていくナナル。この調子なら変なことせずにおとなしく帰ってくれるだろう。しかし、流石に手ぶらはあり得ないので何か土産を用意しなくてはいけないと思考を巡らせたところでアルが声を掛けてくる。
「ねぇ、マリーのお見舞いって出来ないの?お見舞いの品は今日持ってきたケーキがあるので、それで……」
「えっ」
ナナルは悩む。いくら仲が良くて、思春期もまだで、ほとんど親公認で子供だとはいえ異性を寝間着姿で病床に伏しているお嬢様のところへ連れて行っていいのか。
その悩みを解消したのは颯爽とタイミングよく現れたリディアだった。
「アル、今日はごめんなさいね。マリーったら突然、熱が出ちゃって……。病気なんて全然したことないから私達もびっくりしちゃった。でも、もう薬草飲んで寝たらだいぶ楽になったみたい。マリーもアルに会いたいって言ってるから、是非お見舞いしてあげて。」
笑顔で告げるとリディアは次の仕事へと向かうため、従者を引き連れて去っていく。
突然のことに驚いたナナルだが、今現在の屋敷のトップが許可をだしたのだ。アルへと一声かけて、マリーの部屋へと移動した。ナナルがノックをして声を掛けると、中からマリーの入室を許可する声が聞こえた。
「入って。……あ、入るのはアルだけでお願いね?」
いつもより、少しばかり覇気の無い声だった。そのことに心を痛めつつも、自分だけが招かれたことに嬉しさと疑問が同時に沸いた。ナナルも少しは驚いたようだが、主人の言うことである。素直にアルだけを部屋へ通すと扉の前で待機していますと告げて扉を閉じた。
部屋の奥には、机や棚とは反対側に大きく全体的に白と桃色で構成された天蓋付きベッドがあった。
ベッドのそばへと寄るとなかの人影が動く気配がする。ごそごそと物音がしてからシャっとベッドを隠すように垂れていた布がどかされた。
中にはシンプルな白いネグリジェを来たマリーがいた。いつもと違い、髪は少し乱れており、午前中をほとんど寝て過ごしたせいか目もとろんとしている。熱のせいか、布団の温かさのせいか、ほんのり桃色に染まった頬が普段は大人っぽい(4歳児にとって)顔を歳相応のものにさせている。
「今日はごめんね。せっかく来てくれたのに、大したおもてなしが出来なくて……。」
そう言って目を伏せてしまうマリー。その様子を見てアルは焦ったように否定する。
「ううん。いいんだよ!朝病気になっちゃったなら仕方ないよ。それにマリーには会えたし、僕満足だよ!」
本当はいっぱいおしゃべりしたかったし、今日持ってきたお菓子も非常においしいと巷で話題のものだったから一緒に味わいたかった。しかし、好きな子に余裕のあるかっこいい男を演じてしまうのはしょうがないことである。精一杯、残念で悲しい気持ちを隠してなんてことないように伝える。
そんなアルを見て、申し訳なさそうに眉をハの字にして笑顔を浮かべるマリー。
「あのね、このタイミングで渡すか悩んだんだけどね。今日のお詫びも兼ねて……はい、これ受け取ってくれる?」
「え?」
少しもじもじしながら差し出したマリーの手には昨晩作った白と水色で構成されたコースターがあった。ほとんど条件反射でまるで授与式のようにそっと受け取るアル。
「包装とかした方がいいかなって思ったんだけど、私の手作りでそんなに仰々しいものでもないから逆に包んだらみっともないかなって思って。昨日作ったコースターなんだ。本当は前に貰ったアクセサリーのお返しのつもりだったんだけど、あまりに釣り合わないし、今回のお詫びってことで。」
アルは手に取ったコースターをじっと見つめる。編み物に詳しくはないが、非常によくできた綺麗なものであることは分かった。アルは一通りそれを眺めると可愛らしい笑顔を浮かべた。
「マリー、僕すっごい嬉しいよ!ありがとう!!」
とても喜んでくれたアルに、自分自身も嬉しくなるマリー。この感じならちゃんと使ってくれるだろう。マリーとアルは2人でにこにこと笑い合っていた。
2人の間を温かい空気が流れる。アルの胸にはきゅんと鼓動が高なる音が聞こえた。
ここでアルは兄達に教えてもらった、恋愛指南を思い出す。といってもまだまだ小さい弟である。もちろん性的な部分は詳しいことなど何一つ教えていないが、いくつかしっかり教えたものがある。それは……
「ねぇマリー。」
「うん?なぁに?」
「大好きだよ。僕と恋人になって結婚してください。」
それはマリーでもはっきり分かる告白の仕方だった。
早く10代編に入りたいです。社交界からがきっと本番。




