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僕は女に生れて正解ですね。  作者: どんとこい人生
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整理

話しが進まない。取捨選択が難しいですね。あっさり読めるようにしたいのになぁ。そして、すいませんガンガン改稿してます。何度読み直してもアップしてから修正入れちゃうんです\(^o^)/

 マリーはアルの気持ちを考えていた。


 今はダンスレッスンの休憩時間である。20畳ほどのダンスルーム、ツルツルとした床に四方にある大きな窓からの光が反射していて、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。頭にはアルから貰った飾りを着けている。つい3日前にプレゼントされたものだが、こんなにタイミングよく渡せるものだろうか。もしかしたら母親同士で色々合わせたのかもしれない。

 まだ軽い練習しかしないから問題ないが、もう少し本格的になったら飾りはつけない方が良いだろう。でなければ社交界デビュー時に使えないレベルに汚れてしまうかもしれない。

 初めて家族以外から貰ったプレゼントである。ちゃんとデビューで使うのが礼儀だと思うし、自分自身でも使いたいと思っている。

 マリーはそっと頭の飾りに手をやる。肌触りがよく、着けていても頭にストレスを与えない良いものだった。このプレゼントを触るたびに、あの日のことを思い出す。


 あの日、2人で踊った時間はとても幸せで楽しいものだった。マリーはプレゼントにしても友情の証、もしくは小さい子特有の独占欲の現れの一つだと思っていた。

 アルが帰った後に談話室へと行き、リディアへ今日あったことを話した。アルが自分にアクセサリーをプレゼントしてくれたこと、5歳になったら社交界デビューがあるのを聞いたこと、そしてアルと2人でダンスを踊ったこと。

 リディアはその話しを聞くと、まるで10代の乙女のように目をキラキラと輝かせて、マリーにあることを教えてくれた。


「マリー、貴族の間では贈りものは色々と大切な意味を持っているの。大抵は家紋をどこかに付けて贈ることで仲良くなるわ。でも紋をつけずに個人的な……そう、今回のマリーとアルみたいに贈りものをしたら、それは『私はあなたが好きです』って言っているようなものなのよ。」


 マリーは目を丸くし、口をポカンと開けてリディアを見つめた。


「ふふ。アルはマリーのことが大好きなのね。ファーストダンスも奪われちゃったしねぇ?これは社交界デビューもアルとセットになるかしらね?」


「ファ、ファーストダンスですか?」


「そうよぉ。ファーストダンスっていうのはね、初めてのダンスのことを指すのよ。そして、それは初めて家族と教師以外の男の人と手を取り合ったって意味も含んでるの。女の子には特に大切なものなのよ?」


 リディアから告げられる事実に混乱するマリー。


(え、つまりアルは4歳だけど4歳の私を好きってこと?え、え、初恋が4歳って早すぎない?ていうか、うん、僕男……あ、違う今は女の子だ。マリー……私はマリー。え、でもこれはもう告白されたってこと?子供とはいえ男に告白された?え、え、予想よりも早すぎるよ。10年20年経てば中身はおじさんの仲間入りするし、どうにかなると思ってたけど。アルってば行動力ありすぎだよ!ていうか告白ならお母さま私に言っちゃ駄目じゃない??あ、でもそもそも私がこのプレゼントの意味分かると思って私のかすら謎だよぉ)


「……えっと、つまりアルは私に告白をしたってことですか?」


 一縷の望みを掛けて、リディアへ確認をとる。


「そうなんじゃないかしらねぇ?アルくんは同性の、お兄様達がいるから色々知識あるのね。それで……」


 リディアはまだ何かを言っているようだが、マリーはそれどころではなかった。まだ女の子ではなく元男としての感覚であるマリーにとって、アルからの告白はそれだけ重大なことだったのだ。

 マリーはリディアの話しもそこそこに、ふらふらとした足取りで談話室から出る扉へと向かう。一言、今日は疲れたから部屋に戻る旨を伝えるとメイドが扉を開けて自室へと戻るマリーに付き添う。リディアは娘が初めての告白に戸惑っているのだろうと思い、そっと見送ることにした。


 そして、その日の晩の家族の交流をおろそかにしないための『家族夜会』は荒れに荒れた。


「やはり、アイツはだめだっ!!」


 眉間に深い谷を刻み、ぎらついた瞳で唸るように言うのはシェリー。普段は冷静沈着で兄弟の中でもブレーン的立場なのだが、マリーの事となると駄目になってしまう。末っ子で女の子だから多少は彼のことを多めに見てあげて欲しいところだ。


「4歳だぞ!?4歳!!4歳であんなしっかりしたアクセサリーをプレゼントするなんて、女たらしの才能があるはず!そんなヤツは将来マリーを絶対泣かせる!やはり、あいつを友達にしたのはッッて!?!」


 飛躍した発想を熱く語るシェリーの頭を勢いよくはたいたのはギルだった。自分をはたいた兄をギロリと恨めしそうに睨んだ。


「シェリー兄さんは、相変わらずマリーのことになると駄目だなー。っていうか、ギル兄さんはゼルエウスさんだっけ?あの人から聞いたから落ち着いてるだけでしょー?あはは」


 ケラケラと笑いながら言うのはナディ。長男なだけあってギルは人脈が広く、しっかりもしているが噂話やくだらない話においてはナディに一歩劣る。

 ナディは主に奥様方や女友達、女中たちとの交友が深く、噂話の周りの早さなら兄弟随一なのだ。だから、ギルが友人でアルの兄であるゼルエウスから話を聞いていたのを知っていたのだ。


「ふん。聞いただけではないぞ。実際に贈るものも、いくつか提案した。マリーに贈るものだからな。ソレンス家ともなれば下手なものを贈ることはないとは思っているが、やはり私の目でしっかり見なければな。」


 フフンと鼻を鳴らし、ふんぞり返る。その顔に浮かぶ表情は自信に充ち溢れた笑顔だ。その話を聞いてシェリーはギルへと噛みつく。ハルは純粋な瞳をダイに向ける。


「ねぇねぇ、ダイ兄さん!なんでみんなマリーがプレゼント貰ったからって騒いでるの?シェリー兄さんはなんで怒ってるの?プレゼントを貰ったら、ありがとうって言うんでしょ?」


「……ハル。プレゼントには良い物と悪い物があるんだ。……人を惑わすプレゼントは悪い物だ。つまりアルのプレゼントは悪いプレゼントだ……分かるな?」


「うん!わかんない!」


 プレゼントを貰ったらお礼を言うように躾けられているハルの質問に答えたダイだが、口があまりうまくなく、本当は悪いことなどしていないアルを悪く言うのは難しかった。弟に発言をばっさり切り捨てられて地味にショックを受けるが、それが顔にでることは無い。

 ハルとダイが話している間にも後ろでギルとシェリーとネディがやいやいと騒いでいる。どんどん場が混沌と化していく。


 しかし、鶴の一声ならぬ母の一声で場は収まった。


「情けない兄さん達ね?」


 その母の一声を聞いた瞬間に兄弟達はピタリと止まって母の方へと向く。


「いくら可愛い妹が心配だからって信頼できる家の、それも4歳の子供をあいつ呼ばわり。初めてのプレゼントの内容に口を出す、悪いプレゼント呼ばわり……あなた達、自分たちがどれだけ大人気なくて恥ずかしいことをしているか分かってる?」


 リディアは笑顔を浮かべているが、声には怒気が含まれている。場が凍り、誰一人動けない。夫が居ない間、1人で領内を仕切るリディアに10代の若造がかなうはずなどないのだ。

 そんな中でいち早く復活したのは、やはり長男であるギルだった。


「しかし、お母様。お母様も事前にダンスレッスンの開始日をソレンス家へと伝えてタイミングを合わせていたと聞いていますよ。同罪じゃないですか?」


「私は母親よ!女親が娘のために色々してあげるのは当然でしょ!!」


 筋が通っていると言いたげな顔だが、どう聞いても感情論でしかない発言だ。しかし、その言葉には謎の黙らせる力が宿っていた。

 かなり大きな声になっていたが、部屋に1人で打ちひしがれながらマナーの勉強をしていたマリーには何も聞こえていなかった。

 とりあえず、他のことで頭を埋めようとマリーは勉強に没頭していた。基本的に数学は楽勝で、他の科目も小さいうちからやる気を出していれば感覚は前世でのテストなので割と頭に入りやすい。ただ、テーブルマナーや淑女らしい振る舞いなどは前世でも知識はほとんど無いので少し苦労している。そもそも昔は男らしく見える作法を勉強していたくらいだ。ちなみに麺類を音を立てずに食べるのが苦手だ。

 ひたすら勉強していたマリーだが、4歳児の体ではたいして夜更かしが出来る訳もなく、しばらくすると眠りに落ちてふかふかの天蓋付きベッドへと運ばれた。

 そして次の日の朝、お付きのメイドから明後日からダンスレッスンが始まると聞かされ、またアルのことを思い出してしまい悶々とした日々を過ごしたのだった。


「はぁー」


「あら、マリー様。そんな大きな溜息をついて如何しましたか?悩みごとがあるなら、ご相談くださいな。わたくしジュリーン、不肖ながらマリー様よりも歳を重ねていますので、何か役立てるかもしれませんわ。」


「ジュリーン先生……」


 悩んでいるマリーに話掛けたのは、ダンスの教師として雇われた男性である。ダンスの教師として雇われるだけあって、しなやかな筋肉が全身に付いており、立ち居振る舞いにも品がある。黒い肌に銀色の髪が映え、白いシャツと真っ赤なパンツが眩しい。ただ、話し方から分かるように所謂オネェである。


 マリーは少し相談しても良いものかと悩んだが、前世で前線で活躍しているオネェといえば乙女心と男心がわかる世話焼きのイメージがあった。

 こちらでも同じとは限らないが、人見知りの激しいマリーと初対面ですぐに親しくなった手腕も加味して考えたらアリなのではないかと考える。


「あの……ジュリーン先生、の初恋っていつでしたか?」


「え?あら、あらあら?まさか恋の相談でしょうか?」


 マリーの質問を聞いたジュリーンは目を輝かせて頬を赤く染める。上げた声はテンションと一緒に1トーン上がっている。マリーの予想通り、乙女心をばっちりもっているようだ。


「そうですね、わたくしの初恋は9歳の時のダンスの教師でしたわ。長い金髪を靡かせて、いつも優しい頬笑みを浮かべているのが印象的な女性でした。」


 ジュリーンの表情は優しい。どこか遠くを眺めているような、そんな瞳だった。マリーはジュリーンの初恋が女性で意外だったが、今はそのことを聞くタイミングで無いと思い、話の続きを静かに待つ。


「4歳からずっと教えてくださった先生で、初恋を自覚したきっかけは先生の結婚でしたわ……。うふふ。初恋と失恋を同時に味わったのですよ?なかなか貴重な経験でしたわ。まぁそれ以降は男性にばかり恋していますがね。」


「え、えっと……。」


切ない話で、なんて言ったらいいのかと逡巡していたら最後に爆弾を落とされた。やはり男性も恋愛の対象なのかと驚いているマリー。その反応は予想していたのか、ジュリーンは男らしくも女性的な笑みを浮かべる。


「うふふ。同性に恋する人は初めて見ましたか?この国では意外といますがね。それで、なんで初恋について聞いたのですか?」


「それは……ですね。えっと、この国では基本的に男性が女性に贈りものをするのは好意を抱いているときだけだと聞きました。そして、えっと、特に家を通さずに個人的に贈る場合は……れ、恋愛感情を抱いていると……。」


 そこで言い淀むマリー。その反応を見てジュリーンは、なんとなく察する。


「マリー様はどなたか殿方に個人的に贈りものをされたのですね?」


 聖母のような優しい声で聞かれて、声を出すことなくコクリと頷く。


「私はまだ4歳です。男の子に恋などしたことはないです。……その、どう対応すればいいのかなというのと、えっと、ア……その男の子は本当にそういう意味で贈りものをしたのかなって。もしかしたらまだ4歳ですし、私の思い違いかもしれないと。」


 マリーとしては男に告白されたという事実も重かったが、それ以上にこの世界において初めての友達の初恋がこんな男女でいいのだろうか、という思いもある。アルに申し訳なさも感じてしまい、時間が経てば経つほど心が重くなってきたのだ。

 マリーの表情から、思った以上に重く考え込んでいると悟ったジュリーンは出来るだけ優しい声で女神のような気持ちで話し始める。


「マリー様。人の想いとは他人にどうにか出来るものでもないのです。相手の方がマリー様を思う気持ちは自由ですし、それに対しマリー様がどう対応をしようと自由なのです。流石に、相手の方が王族ですと対応によっては問題があるかもしれませんがね。」


 茶化すように最後にウインクを付けてはいるが、言っている内容は真面目だ。マリーは知らないがユークラテス家はかなり高位の貴族なので、本当に王族以外にはよほど常識外れで恥知らずな行動をしない限り、たいして問題にならない。さらに言えば、まだ4歳の子供同士のやりとりで駄目になるほど使えない貴族はほとんどいない。


「えっと、つまりどういうことでしょうか?」


 なんとなく自由にして良いということは分かったが、マリーとしてはもっと具体案が欲しいところである。なんせ両想いになったことも、告白されたこともない恋愛初心者なのだ。


「つーまーり、マリー様の気持ちに素直に行動してくださいってことです!相手が何歳で、どんな思惑で行動しようと何も宣言しているわけでもないのです。まだ4歳のマリー様がどのような行動をしても相手には攻める権利も何もないのです。いつの世も男性は花を愛でるために必死になるものなのですよ。わたくしも色々な恋愛を経験して、全く同性との恋愛に興味の無い方へ迫ったことも多々ありますしね。恋愛は動いた者勝ちですし、何事も経験ですわよ!あ、ちなみに貴族間で家を通さない贈りものは確実に恋愛絡みだと思って問題ないですよ。さぁ休憩は終わりです。今日は基本のステップくらいは踏めるようになっていただきますよ。」


 ジュリーンは話はこれで終わり、と言うように早口で捲し立てて切り上げる。

 大きくなったら自由に恋愛など出来なくなってしまうことがほとんどだ。ユークラテス家ならば、本当に嫌な相手と無理やり結婚させるようなことは無いだろうし友人として合わせている以上、結婚する可能性はある程度考慮されているだろうが未来など分からない。

 ジュリーンはなんてこと無いように話したが、初恋と失恋が同時というのはなかなかにトラウマものである。結婚のお知らせの手紙を読んだ時は絶望し、それと同時に自分の先生に対する好意が恋愛感情だったと知ったのだ。ジュリーンは後悔した。何故もっと早く気付かなかったのか。

 結婚式に参加したのは、意地と先生を落とした男を見てやろうという思いからだった。結婚式で幸せそうな先生の横にいる男性を見て、思わず憎く思ってしまったが、同時に自分が惚れた女性はどうしてあの男性に惚れたのだろうかという好奇心が生まれた。

 初恋が女性なのに、その後は男性とも恋愛出来るようになったのは、その時の好奇心が色々と複雑な変化を遂げた結果だったのだろうとジュリーンは思っている。


 心の中で、私みたいな後で後悔するようなことはしないで欲しい。そう思いつつマリーの手を引いてダンスホールの中心へと戻り、音楽に耳を傾けながらレッスンへと身を投じる二人であった。

マリーちゃん頭の整理回プラス家族の設定紹介回です。色々説明入れたいことあるんですが、説明だらけの小説なんて面白み無いでしょうし、うまく話しに入れるのは難しいですねー。ジュリーン先生の話ももっと入れたい。

お父様は空気になりました。


色々初心者なので、アドバイスを頂けると非常に助かります。

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