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僕は女に生れて正解ですね。  作者: どんとこい人生
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銀髪の彼

誤字修正はもうしばらくお待ちください。

「ステイル君が前世持ち……?」


 目をつぶり、学院に入ってからずっと同じクラスの銀髪の彼のことを思い出す。

 銀髪でいつも冷めた様な顔をして、クラスメイトともあまり話さない。それでも美形なおかげで女の子からの人気は無くならない。頭が良く、武道にも精通している。武術、知識それぞれ別でライバルになりそうな子はいるが両部門となると彼にかなうものは無く、不動の総合1位を欲しいままにしている少年。学院に関係あることを話掛ければ最低限の返答はしてくれるが、それ以外はシャットアウト状態。人間関係を築くのも学院における重要な目的なのだが、彼はその気が無いらしい。


 彼は有名人だ。ほとんど関わりを持ったことの無いマリーでもこれくらいの情報を持っているくらいには噂も評判も周っている。


「もしかして、前世持ちのせいで年下の子供と関わるのが嫌、とかそういうことないかな?」


「さぁなー?元々コミュ障だったって可能性も高いと思うけど?なんでそう思うんだ?」


 マリーの質問に対して質問し返す。


「……うん。1人が好きな人って確かにいると思うよ。でもね、彼はちょっと過剰というか異常というか……。まだ他の人から嫌われてる、いじめられてるからって理由ならわかるけど、憧れてる人すらいて話しかけられてるのにまともにコミュニケーション取らないって、やっぱり特別な事情があると思うんだ。」


 前世では友達が少なかったマリー。普通にそのことを寂しいと感じていたし、その反動で今世で色んな人から好意を向けてもらうのは余計に嬉しいのだ。そんなマリーだからこそ、ステイルの行動が理解できない。きっと特別な事情があるのとしか思えないのだ。


 そんなマリーの言葉とまっすぐな視線を受けてルミウスは納得してなさそうな表情で口をとがらせる。


「そんなに珍しいかぁ?クラスに一人くらいあんな感じのヤツいるでしょ?」


 実際にそんな人物が過去にいたのか、彼の声は少し不機嫌そうだ。


「1人が好きな子もいたけど、その子だって友達はいたよ。……前世の記憶を持っている人が自分しかいないと思ってて、そのことで孤独を覚えているとか。記憶があったせいで小さい頃に奇行をとって両親からの対応が冷たいとか……何か困ってるかもしれないよ?」


 友達の少なかったマリーは図書館で無料で読める小説は友達だった。その小説で吸収した知識を動員してステイルのことを想像した結果は、フィクションでよくありがちなことだった。

 それに対してルミウスの反応は冷めたものだ。「うーん」とだけ唸って、テーブルの上にだらしなく上半身を倒した。両手をテーブルの上でパタパタと遊ばせるとぺちぺちぺちと静かな部屋に音が響く。


「ルミウスだって私が前世持ちって分かって声を掛けたってことは同類と話してみたいって思ったってことじゃないの?ステイルに話しかけようとは思わないの?」


 マリーとしては同じ境遇にあるのなら是非話してみたいし、何か悩みがあるならみんなで考えて協力しあいたいと思っている。何故、ルミウスが渋っているのか理解が出来ない。

 ジッとルミウスを見つめていると、一旦テーブルに顔を伏せてはぁぁぁぁぁぁと長く深いため息を吐いてから勢いよく体を起こす。あまりの勢いにマリーは少しのけぞった。


「マリーは既に友達だったし、話しておこうって思ったんだよ。面白いし。でも他のやつにわざわざ伝えるメリットないだろ、俺に。」


 そう言いながら、日本の女子高生のように指先で毛先をくりくりをいじる。


「それに前世持ってたって俺みたいに封印しちゃってる場合もあるし、単なる夢と思ってる可能性だってあるわけだ。そもそもアイツとは話したことないんだから、前世持ってるからって話掛けに行って無駄に警戒されたりしたら、それこそ将来に響くかもしれないだろ?ここでいくら苗字隠したってアイツの家のレベルなら高位の家柄ってことくらいは分かる。うちは伝統と知識はあるけど格自体はそんなに高く無いんだ。良い所のお嬢さんとして生活してる以上、偉い男に目を付けられたくないし、メリットも対してない賭けなんてゴメンだね。」


 ルミウスの言っていることも一理あるので、マリーはうう……と小さく唸りながら視線を膝に落とす。白魚のような手をぎゅっと握る。


「でも……。」


「でももだってもへちまもありません。」


 マリーが言い募ろうとすると、ぴしゃりと跳ねのけられてしまった。

 落ち込んだマリーの姿を見て多少は罪悪感が湧いたのか、ルミウスはぼそりと言葉を付けたす。


「そんなに気になるならマリーが声掛けたら良いんじゃない?」


「え?」


 それはマリーも考えたことだ。しかし、対して親しくもない女性から男性に声を掛けるのはマナー違反だ。マリーが尻軽と思われてしまう可能性が十分にある上に、今は思春期真っ盛りなのだ。そんな時期にあのマリーがあのステイルに声を掛けたら……どんな噂話が広がるか分かったものではない。

 そんなことをルミウスが知らないハズがない。マリーは困惑した眼差しを向ける。


「セッティングだけしてやるよ。最近まで男で通ってた俺ならそこまで波もたたないだろう。談話室に呼んで、後は2人でどうぞってな。そしたら適当に周りも誤魔化してやるし。」


 マリーの視線に負けたのか、ルミウスがやれやれといったいった感じで提案をしてきた。それはマリーにとってはありがたい提案ではあるがルミウスは本当に大丈夫なのかと考えていると、ルミウスは「心配すんな」と余裕の表情を見せる。


「そもそも、俺はずっと変人で通ってからな。病気で可哀想だった子っていうのも今後増えるのかな。だから多少は、あールミウスかーで終わるよ。」


 マリーは少し悩んだものの、その提案を受け入れルミウスがステイルを誘うことが決まったのだった。





「え、マリーが2人でステイルと話すの?」


 マリーのうっかりミスだった。久しぶりに帰りが一緒になったアルと2人で下校をしていたマリーはルミウスの話題から、うっかりアルにステイルと会うことを話してしまったのだ。

 ステイルに話しかけたい一番の理由は前世持ち同士であること。それが無ければわざわざ女の子であるマリーがステイルに積極的に話しかける理由などほとんど無いのだ。たとえば恋人になりたい、結婚したい、など恋愛くらいしか。

 マリーとしては広い意味で同郷の人物と話す感覚だったので口が滑ってしまったが、アルの反応で自分の失態にやっと気付いたのだ。

 流石に2人で会うのはまずいと思ったマリー。どう話そうかと悩んで、ルミウスを巻き添えにすることにした。


「えっと、2人じゃなくて……ルミウスと3人。そう3人で会うの。まだ確定じゃないけどね。」


 心の中でルミウスに謝罪しつつアルの反応を盗み見る。アルは腑に落ちないような表情をしながらマリーをちらりと見てから外を見る。また少ししてマリーに視線を戻す。


「……ねぇ。まだ予定が決まってないなら僕も参加できないかな?」


 マリーは困った。その言葉を聞いてからの一瞬でものすごく悩んだ。

 ステイルと話したいのは、前世のことも含めてなのだ。正直な話、アルがいると困るというのが素直な思いだ。出来れば断りたい。

 しかし、それは容易にできる事ではない。いくらルミウスがいるとしても女2人から男1人を誘っている状態なのがここの常識で考えれば忌避すべきものなのだ。そこにアルという男が参加するのなら普通なら歓迎すべきことだ。

 必死に頭を回転させて、思考を巡らせる。いくつか案は出てきた。しかし、それはルミウスに許可をもらわずに言っていいようなことではないものばかり。あまり待たせてもアルが不審に思うだろう。


「……えっと、ルミウスもいるからルミウスに聞いてみないと……。」


 とりあえずマリーは答えを先延ばしにすることにした。これもある意味ルミスの負担を増すものだったが、それ以上に適当な答えが見つからなかったマリーの苦肉の策だった。

 アルはむーんと唸った後、確かにルミウスの意見も聞くべきかと納得したようで「わかった」とだけ言ってその話題は終わった。



 家に帰ってからも作戦を考えるマリーだが妙案は浮かばず、結局次の日の朝を迎えた。放課後にルミウスを捕まえて、アルのことを早速相談をする。


「あー、もー仲が良い幼馴染だからって油断しすぎだろ。」


「うーごめんなさい。」


 事情を知らない人が見たら、ルミウスがマリーをいじめているように見えかねない構図だった。

 しょんぼりと肩を落としながら報告するマリーの表情はひどく落ち込んでいたのでルミウスも必要以上に責め立てたりはしないが、流石に小言の一つもこぼしたくなる。

 前髪を書き上げながらはぁーとため息を一つ。マリーは思わずビクッと肩を震わせてから顔を上げる。その小動物めいた言動に、うっかりときめきを感じて間の抜けた顔になり掛けるが、キリッと顔を引き締める。


「しょうがないから、俺が惚れてるから2人で話したがってるって言っとけ。マリーはその付き添い。男が他にいるとやりづらい~ってな。」


「え、いいの?」


 ルミウスの提案したものはマリーも考えたものだった。しかし、本当は好きでもなんでも相手なのに勝手に言うのは問題だろうと遠慮したのだ。


「別に。だって学院中に言いふらす訳でもないし、アルなら口固いだろ。アルだけに秘密を守ってもらう感じになるけどな。」


 視線を泳がせ、悩むマリー。アルを騙し、その義理堅い気質を利用するようなことに対する罪悪感。そこまでして本当にステイルと話すべきなのかと、二つを天秤にかける。


 静かに1人で考える。


 友達が目の前にいるにしては長い時間考えた結果、マリーはその提案に乗ることにした。マリーの返答を聞くと分かったと言ってルミウスも了承する。


「しかし、お前さんがステイルを優先するとはね~。まだ前世の方が大事か?」


 素朴な疑問だった。


「ん。ステイルが前世のせいで何か悩んでるなら、それを本当の意味で手助けできるのは私たちだけかもしれないかなって。それに私じゃなくてルミウスが好きってことならアルは傷付かないかなって。」


 素直に答える。それを聞いたルミウスは意外そうな表情を浮かべる。


「へぇー。別に鈍感ってわけじゃないのか。まぁあそこまで露骨だと流石に気付くか?」


 からかうというよりかは純粋の疑問のようだ。それに対してマリーは苦笑しつつ「告白されたことあるしね」と答え、ルミウスも既に告白されていることに驚きつつも納得をした。

 その後は前世も今世も込みで恋愛トークになり、これも女体化の影響なのだろうかと思いつつマリーも久しぶりに(心は)男同士の会話を楽しんだのだった。


 そして、次の日。早速ステイルと会う日が決まったのだった。

来週は更新難しいです……。再来週もどうかなぁ……(遠い目)

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