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僕は女に生れて正解ですね。  作者: どんとこい人生
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新事実ラッシュ

さっき気付いたんですが、この小説も書き始めて1年経ったんですね。時の流れは早い。おかしい……本当ならもうクライマックスのハズなのに。まだ半分くらいしか話が進んでないぞ!

「うー……中身はとっくに成人なのに大人げなかったなぁー。」


 1人、とぼとぼと教室へと向かっているのはマリーだ。体調の落ち着いたマリーはいつも通りに登校をしているわけだが、昨日のことを未だに反省していた。

 アルは心配して見舞に来てくれたのに最終的には追い出す形になってしまった。ノートもありがたかったのに……と昨日の夜に風呂に入った後からずっと後悔と反省をしているのだ。

 周りには聞き取れない程度に声量だが、ぶつぶつと独り言をつぶやきながら歩く人など不審人物でしかない。しかし、幸いにもマリーは非常に優れた容姿をしている為、物憂い気な表情で歩く美少女でしかない。人の思い込みなど現金なものである。


「でも、どうなんだろ本物の女の子でも生理って言われたら照れるし嫌だよね?男だったらコイツ夢精したぜー!と同じレベル……いやいやいや、そこまでじゃないのか?うーん、謎だ。」


 正直、言っている内容をファンの子が聞いたらドン引きして100年の恋も冷めかねないものだった。


 だが、そんなマリーの反省会も教室に入り、自分の席へと向かうと止まることとなる。




「おはようございます。」


 脳内では悶々とした想いを抱えながらも、教室で声に出すほど愚かではないマリーはいつも通り爽やかな挨拶をする。

 他の子と話していたクラスメイトもマリーの方へ顔を向けて挨拶を返してくれる。健全で爽やかな光景だ。


 いつも通りに席へ向かうと違和感があった。それはいつも空いているマリーの傍の席が埋まっていたからだ。優秀な生徒が集まるこの教室では、他人の席に座ることは無い。つまり本人、ずっと休んでいた彼が来ているのだ。

 マリーは少し歩調を速め、座っている彼の肩に軽く手を乗せて声を掛ける。


「おはよう、久しぶりだね?ルミウス。体調はもう大丈夫なの?」


 と、ここまで声を掛けてマリーは違和感を覚える。そうだ、制服が違うのだ。マリー達は学年が上がり、制服が変わっていた。そして、その変わった制服は男女でブレザーのデザインが違うのだ。


 目の前のルミウスであるはずの子はブレザーのデザインが女子のものだったのだ。


 声を掛けてから相手が振り向くまでの一瞬でそこまで至ったマリーは固まる。本当にこの子はルミウスなのか。その答えはすぐに分かった。


「おはよう、マリー。体調はもう大丈夫。こんな恰好だからマリーに声を掛けてもらえないかと思ったよ。マリーも昨日休んでたけど大丈夫?」


 確かにルミウスだった。初対面で女の子と勘違いしてしまうくらい可愛い顔をしていたルミウスだ。以前のように優しい頬笑みを浮かべて挨拶をしてくれている。改めて全身を見ると、確かに女子の制服を着ている。スカートを履いているのだから間違えようがない。

 そしてルミウス限定で大きな変化がもう一つあった。いつも大事そうに抱えていた本を持っていない。


 頭に大量の疑問符を浮かべながらも会話を続ける。


「体調はもう大丈夫。えっと、その……なんだか変わったね?」


 とりあえずマリーが言えたのはこの無難な言葉だけだった。周りの生徒が特に変な目で見ていないのだから、きっと正式に許可の下りた格好だとは思うのだが……。

 それに対し、ルミウスは少しだけ困ったような表情を受けると頬をカリカリと指で掻きながら、放課後に話すよ、とだけ言った。

 まだ気になることがたくさんあるが、きっと授業開始までに話しきれないほどのことなのだろうと自分を納得させると素直に席に着いた。

 しばらくすると、他の訓練や用事で遅めに来た生徒も集まり授業が始まった。授業に集中することでマリーはともすれば質問しそうになる心を抑えていた。

 昼休みは特に時間が長いので、思わず声を掛けて聞きだそうかとも思ったが、本人が放課後と言っている以上は我慢すべきだろうと食事と当たり障りのない言葉で場をしのいだ。一緒に食事をしたアルは何か訳知り顔をしているが、あらかじめルミウスが伝えておいたのだろうか、何か言いたそうな顔をしているがルミウスについて何も言う事はなかった。

 

 マリーは悶々としながらもなんとか堪え切り、放課後になった。

 まだ、うっすらと青さを残した空の光りを浴びながらマリーとルミウスの2人は空いていた談話室を一つ借りて集まっていた。


「で、男の子であるはずのルミウスは女子の制服を着ているのか、説明をしてくれるのよね?」


 丸い机を2人で向かい合うように座っている。机の中央には和ませるためだろうか、花が飾られている。花を挟んでルミウスを見つめながら問いかける。

 口調はきつくならないようにしているつもりだが、どことなく責めているような雰囲気なのは気のせいだろうか。


「えっと、なんて言ったらいいのかな……。うーん、とりあえず簡潔に言うと僕、いや私は最初から女の子だったってことかな。」


 その可能性は最初に会った時から可能性の一つとして考えていた。女装しているか、元が男装しているかのどちらかなのだろうと。

 だが、改めて言われるとなかなかの迫力の事実だった。とりあえず、マリーは気になるところを聞く。


「えっと、まぁ色々聞きたいことはあるけど……。」


 どこからどう切り出すべきか、というかそもそも突っ込んで聞いていいことなのだろう、放課後に別に時間を取ったということはそれなりに質問を受け付けるためではないのか、色々な予想が脳内を駆け巡る。

 だが、そんなマリーの思考も無駄になる一言がルミウスの口から放たれた。


「体は女で前世が男、ってだけなんだけどね。」


「ええぇぇぇぇぇぇ!?」


 全然予想通りではなかった。


「え、待って前世って、あの……あの、あの!!」


「ていうか、マリーも前世持ちでしょ?」


「えええ、えええぇぇぇぇ??!?!」


 もうマリーの脳内は怒涛の混乱模様だ。幸い、この部屋は完全とは言えないものの、かなり防音性の高い部屋なのでマリーの叫び声は外に響かなかっただろう。

 マリーは口を両手で押さえながらパクパクと口を動かす。何をどこから説明してもらえばいいのか、未だ混乱は収まらない。


「あ、ちなみに学校では本人が自分を男だと思い込んでいた。まぁ性同一性障害?みたいな感じで説明してたわけですよ。それを昨日のうちにクラスで話しておいて、デリケートな話題だからみんな勝手に口にしたり、変な態度取らないように気を付けてたんだよ。」


「そ、そうなんだ……。あと、その私の前世がどうのこうのって……。」


 マリーには聞きたいことがたくさんあったが、一番聞きたいのはやはり自分のことだった。ルミウスにはわかるような要素はなかったはずなのだ。


「うんとさ、この世界って魔法みたいな感じで神術ってあるじゃん?まぁ、私にもその才能があったんだよ。で、その才能の中になんていうか物を見極める、とでもいうのかな?そういう能力があって、前世がある子ってオーラ、魔力、生命エネルギーとでも言うのかな。それが全然違うの。だからすれ違う人見てて、前世持ちの人は一目瞭然な訳さ。」


 驚きの新事実だった。神術など、道具に利用されていることくらいしか普段はほとんど意識しないものだ。かろうじてアルの母親が才能のある人なので普通の人よりは馴染みがあるのかもしれないが、知り合いに2人目がいるだなんてすごい確率だ。


「ひ、一目でわかるの?もしかして国内に結構いる?」


「うーん。少ないよ?思ったよりかは多いけど。とりあえず学内では私とマリーを含めて3人かな。街を歩いた感じだと1人しか会わなかったけどね。前世持ちは優秀な人多いのかな?」


「学院にもう一人いるの!?」


 もう今日は驚きの連続だ。まだルミウスが元男の女だという事実もしっかり受け止めきれていないのに、まだ学内に前世持ちがいるとは……。

 マリーは目をぐるぐると回して混乱しながらも、新たに知った事実を受け止めようと深呼吸をする。すーはー、すーはー、何回か呼吸をすると多少は落ち着く。ルミウスも急かすことなくマリーが落ち着くのを待つ。


「えっと、何から話すべきかな……。」


 ニコルの時のように前世の自己紹介でもすべきなのだろうか、それとも先に学内の別の前世持ちの子について質問してみるか。

 ちらりとルミウスに視線を向ける。ルミウスはマリーの考えていることが手に取るように分かるのか、両手を机の上に組んで話始める。


「とりあえず自己紹介しとくか?()は金田浩二、死んだのは21歳の時だ。イケメンの大学生だったんだぜ?生粋の女好きでなー。そのせいもあったのか、生まれて自分が女であることが受け入れられなかったみたいでな。ちょっとおかしな状態になったわけだ。そこで高名な両親が用意したのが、あの本だ。あの本には特殊な加工がしてあってな、あれを持っているだけで精神を強制的に落ち着かせる作用があるんだ。その代わりに、ちょっとぼんやりした人間になるけどな。んで、落ち着いたところで俺の脳味噌はこの事態を受け止めるために前世の記憶を封印してた、らしい。まぁそれでも女の恰好は拒否してたみたいで制服は男だった、つーことだ。いやー水着が男も上を着るタイプで良かったね、ルミウスちゃん。」


 一気に説明し終えると、ふぅー……と長い長い溜息を吐く。


「えっと、してたらしいってことは今はもう封印されてないってことだよね?どうして突然前世の記憶が戻ったの?」


 色々聞きたいことはあったが、とりあえず記憶に付いて聞いてみた。


「まぁ長期休みで実家に帰っただろう?その時に海に行ったんだが、津波に襲われてな。もちろん俺はピンピンしてる訳だが、その時に本を落としたわけだ。それで精神が本来の状態に戻った。その時点で10年以上この体で過ごしてたからな、やっと心も脳みそも受け入れたんだろう。俺の推測でしかないけどな。そんで、やっと俺の意識が戻ってきたんだ。ちなみに生まれてからの記憶もばっちり残ってるぞ。で、お前は?」


 そう問われて、ニコルの時と同じような自己紹介をする。お前死んだの早いな、などと言われたがなんとなく憎めない雰囲気で笑い話になってしまった。きっと前世ではコミュ力の高いクラスの中心にいるタイプの大学生だったのだろう。あまりコミュ力の高くないマリーでもある意味初対面なのに和やかに会話しているのだから相当のモノだ。元大学生だし、困ったことがあったら相談しても良いんだぜ?などと兄貴肌を発揮しているあたり、面倒見が良いタイプだったのかもしれない。

 だからこそ、マリーもついでに聞いておこう、くらいの気持ちだった。


「あ、そう言えばもう一人学院に前世持ちがいるって言ってたよね?それって誰なの?」


 そう問われたルミウスは一瞬止まると、ニヤリと口角を上げて、したり顔で言った。


「ステイル。あの入学からずっと総合主席を守っている銀髪君だ。」

来週も投稿するぞー。いい加減、週1は守りたいですね。

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