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僕は女に生れて正解ですね。  作者: どんとこい人生
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暑い季節、冷たい食事、そして水

遅くなってすいません。

 季節は変わり、太陽は眩しく、額には汗を滴らせ、制服も薄手で露出の増えたものに変わっていた。

 マリーとアルは連日ルミウスと食事を共にしている。ルミウスは慣れてくれば聞き上手で話上手な男の子だった。やはり常に本を持ち歩いていることで多少の悪評はあるものの、それ以外は実に穏やかなものだ。

 仲良くはなったがアルは友人が多く、マリーは性別が異なる為、相変わらず授業中は必然的に1人になることが多いようだ。それでも本を抱えて授業を受けているルミウスはそれなりに幸せそうだ。


 3人は今日も穏やかな、食事の時間を楽しんでいた。話すことはさまざまだが、一番話すことが多いのは食事についての話だ。今日も出されたメニューに付いて話してしている。


「今日もおいしいな。だいぶ暑くなってきたから冷製スープの回数も増えてきたね。」


「うんうん。メインもさっぱりとしてて酸味の効いた物が増えてきたよ。デザートもシャーベットとかゼリーとか増えたし。」


「ソイルに入ったからからかな。冷たい食べ物のバリエーションも増えたよね。」


 ここまで食事ばかりの話をするグループは少ない。それでも、それなりに料理好きが集まっているため毎日違うメニューの出るお昼ごはんは会話の種としてちょうどいいのだ。しかし、今日は少しばかり違う方向へと話が変わっていく。


「ソイルの季節と言えば水浴びの時期だね。」


「あーそうだね。僕も良くお兄様達と湖で遊んだりしたよ。」


「やっぱり男同士で湖とか海に行くとびしょびしょにされちゃうよね。はは、僕もいっぱい水掛けられたなぁ。」


 アルとルミウスの始めた会話にマリーは呆然としていた。別に会話に付いていけない訳でも、海や湖の存在を知らなかったわけでもない。ただ、水浴びの習慣が初耳だったのだ。家族で湖に行ったことはあるが、水には一切入らず、傍で食事をしたり釣りをしている兄を見ていることしかしなかった。

 マリーは楽しそうに湖や海での思い出を話す2人に割り込む。


「あの、2人は水浴びとか水遊びは良くやってたの?」


「え、うん。やっぱりソイルは暑いからね。みんな海とか湖に行って水着になって遊んだり、涼みに行くよ。」


 何を当たり前のことを聞いているんだ、とでもいいたそうな表情でルミウスが答える。アルも首をかしげている。マリーの頭に更なる新事実で衝撃が走る。


(水着の文化があったのか……。)


 マリーは今まで7年間こちらの世界で生きてきて、一度たりとも水着を見たことも無ければ聞いたことも無かった。マリーとしては地球でも昔は水着の文化などなかったので、こちらの世界もたまたま無かったのだろうと思っていたのだ。

 無言で思案に暮れているマリーを見てアルは何かを察したのか、おずおずと話しかける。


「マリーってもしかして水遊びしたことない?リディア様ともメイドとも?」


 アルの問いかけにマリーは頭を横に振る。その様子を見てアルとルミウスは顔を見合わせる。アルとルミウスは困ったような顔をしてマリーへ言っておいた方が良いであろう事を伝える。


「マリー。ソイルになったから水泳の授業があるよ。マリー泳げる?」


「……わ、分からない。普通はおよげて当たり前なの?」


 不安げな大きな瞳をアルへと向ける。その弱った様子にアルは内心ドキっとしたが、流石に不謹慎だと思ってごまかすように咳払いをする。


「結構みんなおよげるかな。女の子は泳げない子が男の子よりも多いって聞くけど……。ただ、マリーって役員目指してるんだよね?なら最初から泳げないと、それだけで後に響くかもって兄様が言ってたよ。だから僕も泳ぎの練習したよ。ね、ルミウスもしたよね?」


 アルの問いかけにルミウスが肯定する。この2人の当たり前のだという態度を見る限り、水遊びは特別なことでもなければ、水着も破廉恥なものとして認識されていないのだろうと考える。

 マリーにとって問題なのは最初から泳げないと役員になろうとする時に足枷になりかねないというところだ。未だに女子では主席をキープしているマリーだが、今後はどうなるかわからない。

 単純に精神年齢が高いおかげで理解力が高く、真面目に取り組めているためスタートダッシュが早いだけなのだ。能力自体は特別なものではない。そのため家事を除く歴史や宗教などの日本の知識を引っ張ってこれない科目は今後、他の子に抜かれる可能性が十二分にあるのだ。そのことを考えれば、この水泳の授業で評価がマイナスになってしまうのは問題だ。前世では問題無く泳げたが、この世界ではどんな浮力で、水着で、泳法なのか未知数なのだ。体も前世とは大きく変わっている。女性のほうが脂肪分が多く、男性よりも浮きやすいなどと聞いたことがあるが、この年齢ではまだ関係ないのか。マリーがもんもんと考えているとルミウスが1つ提案をする。


「んー不安なら練習したらいいんじゃないかな?水泳はソイルの下月にやるからまだ間に合うと思うよ。ソイルとデイルとハイルは上月と下月の中間に6日間の休暇が入るからね。」


 その提案を聞いてアルも楽しそうな笑みを浮かべて案を出す。


「そうだ!マリー、一緒に湖に行こう!僕の家の別荘に凄い水が綺麗なところがあるんだ。静かだし、景色も綺麗だよ。そしたら僕もマリーに泳ぎ方を教えてあげられるよ。」


 普段、マリーに何かを教えると言う機会がほとんどないアルはマリーに頼ってもらえるチャンスだと鼻息を荒くする。鼻息を荒くしても可愛らしいのは歳のおかげか、アルの美少年と言ってなんら遜色ない容姿のおかげか。

 アルの提案にマリーはふむぅ、と唇に手を当てて考える。アルが一緒に泳ごうと提案したということは男女で入っても問題無い文化なのだろうと考える。それなら一緒に行って遊ぶのも一興だと考えるが、そこでマリーは待てっと自分の思考にストップを掛ける。


(もしかして、うっかり最初から泳げたら問題がある?というか見たことも無い泳ぎ方とかを無意識にしたら問題あるのかな?無かったとして、子供特有の感覚とか色々あるし、実際水着を着てみたら恥ずかしくなったりするかも知れないし……よし。)


「うーん、とりあえず初めてだし、お母様に相談してみるね。それで問題なかったら泳ごう?もし、駄目だったとしても3人で遊びたいな。」


 マリーのその言葉にルミウスは歓喜と驚愕をアルは歓喜と悲哀を胸に抱きながら頷いたのだった。

ちょっと短いですね。ガッツリ1週間くらい休みたいです。

そろそろ恋愛をもっと入れたいですね!もうちょいしたら一気に数年飛びます。

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