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僕は女に生れて正解ですね。  作者: どんとこい人生
18/42

1年生

0時更新間に合いませんでした……ズルズル更新遅れないように気をつけます(`・ω・´)キリッ

 無事に式を終えたマリー達新入生は教室へと移動していた。ちなみに保護者達は別室で説明や、顔見せなどを行っている。


 扉の上に1‐1という板が貼ってある。清潔感あふれる白い壁と綺麗に磨かれた木製の床、前には黒板らしきものと教壇がある。後ろには木の掲示板のようなものがあり、縦長のロッカーらしき木製の扉がズラっと並んでいる。マリーを含めて部屋にはおよそ15人ほどの生徒がいた。成績順にクラスが分かれており、アルと先ほど注目されていた2人も一緒だ。成績優秀者の集まりということもあり、みんな先導してくれた先生の言う通りに大人しく席に着いている。

 しかし先ほど主席の少年に怒鳴りに行った眼鏡の少年は音は出さずとも、凄まじい形相でジッと主席君を睨んでいる。それに対して、気付いていないのか、気付いていてあえてスルーしているのか分からないが主席君は何もリアクションは取らない。

 自分があんな目で睨まれたら意識せずにはいられないだろうなとマリーが2人を怖々と見ていると、手元の資料を確認しながら生徒たちが落ち着くのを待っていたらしい先生がコホンと1つ咳払いをした。その声に反応して眼鏡君も睨むのをやめて先生の方へと向き直る。


「皆さん、はじめまして。私が皆さんの教室での先生となる、クレイオル クライアスです。わたくしの事はクレイオル先生と呼んでくださいね。これから5年間よろしくお願いします。」


 頭をきっちり団子頭にした厳しそうな女の先生だ。少し手芸の担当をしてくれているサラ先生に似ている。よろしくと言う時の顔はとても優しそうな慈愛に溢れたもので、少しおっかなびっくりといった状態だった生徒達も釣られて笑顔を浮かべた。

 クレイオル先生はキビキビと動いて紙を席の先生から見て左端の席に座っている3人へと手渡す。


「今度からクラスで何かを配る時はこちらの席に座った子に渡して、隣に受け渡すようにします。そんな悪い子は居ないと信じていますが、けっして乱暴に投げたり、叩きつけたりしないように。」


 紙を受け取った3人が隣へ渡し、バケツリレーのように右端まで紙が渡る。


(国が変わっても席に座ってる限り、どこも似たようなものなのかー。結局これが一番効率良いんだろうな。貴族の子供ばっかりだから執事みたいな人が全部1人1人に手渡しとかするかと思ってた。)


 マリーは日本でのプリントを回すときの事を思い出して、懐かしく感じてジーンと感動していた。マリーは一番窓際の席なので渡す相手はいない。そのことを少し寂しく思っているとマリーの隣の女の子がそっと紙を手渡す。


「あの……はい。」


 大人しい子なのか顔は林檎のように赤く、声は糸のようにか細い。胡桃色の髪を太めの三つにしている。鶯色にさらに乳白色を溶かしたような色の瞳を溢れんばかりに潤ませてマリーを上目遣いに見詰める様はまるで小動物のようで庇護欲を誘う。

 思わずキュンとときめいてしまったマリーは反応が一瞬遅れるが、すぐに笑顔を作っり一言ありがとうと告げながら紙を受け取る。その時に見た手は白魚のように綺麗な手だと勝手に想像したマリーを裏切って、小さな傷がちらほらとある、思ったより使い込まれた手だった。

 少女は紙を渡すとすぐに手を引っ込めて俯いてしまった。


(うーん、昔は私も相当恥ずかしがりでこんな感じだったな。)


 などと昔の自分と重ね合わせて、今後の学校生活ではフォローしてあげようと勝手に決意をした。

 決意をしたところで回ってきた紙を見る。B5サイズほどの多きさで、一番上に多きな文字で『自分の事を紹介してみよう』と書いてある。その下には名前、趣味、特技、苦手なモノ、好きなモノと続いて最後に何か一言と書いてある。


「はい。みなさん紙は持っていますね。そこに書いてある項目を埋めていって下さい。ただ、気をつけてほしいのは名前は家名や領地名は書かないようにすること。名だけですよ、いいですか?はい、では書き始めてください」


 そう言ってクレイオル先生がパンと手を叩くと、みんな試験の名残なのか一斉に鉛筆を走らせて書き始める。


(えーと、マリアンヌに趣味は裁縫かな。特技は……裁縫でいっか。苦手なのは大勢の人の前に出ること、好きなのは、うーん、お茶会……かな?一言……こういうのって悩むよねー。無難にみんな仲良くしてください、っと。)


 マリーはサラサラと書ききると静かに鉛筆を置く。周りを目線だけで見渡すと半分以上の生徒が書き終えていた。意外にも眼鏡くんはまだ書き終えておらず、猛烈な勢いで手を動かしている。それとは対照的に主席君はぼーっとしている。視線の先をマリーも追ってみると、そこにはシンプルな時計が掛けられている。早く帰りたいのだろう。クールなのかやる気が無いだけなのか判断に悩む少年だ。アルはマリーと同じくらいのタイミングで書き終えたのだろう、姿勢を正して大人しく待っている。ただ、やはり周りが気になるのかマリーと同じように目だけで周りをチラチラと確認していた。

 少し長めにアルと見ていたせいか、アルと視線がぶつかる。アルは小さく肩を揺らしたが、口角を少しだけ上げて右手を周りにばれない程度に小さく振る。マリーも小さく振り返す。その時にクレイオル先生の視線を感じたが、騒いでいたわけでは無いためスルーしてくれたようだ。

 もうしばらく経って全員が書き終えたのを藍色の瞳で確認したクレイオル先生は頷くと紙の回収を指示する。


「はい、結構です。皆さんしっかり書けていますね。流石です。」


 回収した紙を流すように見て、満足気に微笑む。もう一度紙をトントンと揃えて、教壇の上へと置く。


「この集めた紙は後で後ろのボードに張っておきます。皆さん、クラスの事を理解するために見るようにしてくださいね。今日は名前だけ言ってもらって終わりです。明日から改めて色々とやっていきますよ。」


 では貴方から、と言われて扉に一番近い生徒から順番に名前だけの自己紹介をしていく。言われてすぐに出来るあたりは流石、1組、というよりは流石学院といったところか。すでに厳しい選抜を潜り抜けてきた子供たちである。今更この程度で動揺しないようだ。

 アルも当然お手本のような挨拶をする。マリーにとって意外だったのは主席君ことステイルが無難に自己紹介をこなしたことと、眼鏡君ことスヴァルが実ににこやかに自己紹介をしたことだ。

 最初に見た時の印象が強くて、典型的な神経質なガリ勉君かと思っていたのだが、どうやら高圧的な態度になるのはステイルだけのようだ。あまりに爽やかな笑顔に申し訳ないが少し引いてしまった。

 そして、マリーの隣の子の順番がきた。やはり彼女は照れ屋さんなようで、また顔を真っ赤にしている。今までが滞り無かったため彼女の間は逆に注目を集めてしまう結果となった。


 流石にこれ以上はまずいと本人もわかっているのだろう、椅子から立ち上がり、ささやくような声で自己紹介をする。


「ハ……じゃ、じゃなくて……えっと、ルミウスです……お願いします。」


 最後は隣にいるマリーが聞き取れるギリギリの音量だったが、なんとか自己紹介を終えた。クレイオル先生はその学院生にあるまじき弱気な態度に一瞬渋い顔をした。しかし、ルミウスの涙目に多少は心が痛んだのか、一応は自己紹介をやったからなのかは分からないが着席を許可した。

 順番が来て、マリーもそつなく挨拶をこなす。自分より緊張している人を見ると落ち着く、というやつだ。周りの反応も上々でマリーは安心する。

 視線を動かすとアルがニコニコしながらマリーを見ていて癒される。ふにゃりと解けた笑みを浮かべたマリーに一部の生徒が湧きたつ。囁きレベルで、うるさいというほどではなかったが今までに無かった浮ついた反応にクレイオル先生がきつめの視線を送ると、みんなビクッと体を震わせた後に黙る。マリーが最後だっ為、これで終了だ。


 クレイオル先生の号令で挨拶をすると、移動するように指示が出た。みんなでぞろぞろと廊下を歩いて別室へと向かう。なんとなくだが既にグループが出来ており、2人から5人ほどのグループが出来ていた。号令が終わり、指示が出ると同時にマリーの元へと駆け寄ってきたアルとクラスの印象を小声で話しながら歩いていると、唯一1人で歩いている生徒がいた。あの綺麗な胡桃色の三つ編みは……


「あ、ルミウスさん。」


 他の生徒の背中で隠れているルミウスへと声を掛けようと近寄る。アルも焦ったようにマリーと一緒についてくる。


「ちょ、ちょっとマリー。待って待って。ルミウスに声掛けるつもりなの!?ってちょっと待って。駄目だってば。」


 いつにない強い否定にマリーは思わず足を止めてアルの方へと向く。


「え、なんで?」


 マリーとしては1人になってしまった子に助け舟のつもりでもあるし、友達を増やすことが悪いことだとは思えない。アルの行動に疑問を抱いていると、それはすぐに解消された。


「……マリー。多分マリーは勘違いしてるよ。」


「何を?」


 どこかもったいつけるような言い方に、マリーはさらに問いかける。


「あのね、マリーがルミウスに声掛けたらマリーの悪いうわさが広がっちゃうんだよ……。」


 ぐったりしたようなアルの顔には嘘やからかいの気配はない。それなのにこの台詞は、ルミウスが何か家に問題でも抱えているのだろうか。どんな理由かは分からないが、こんな小さな子供同士で話しかけるだけで悪い噂がたつなんて既にいじめでも始まっているのか。訝しげにアルを見ると、アルはその視線からマリーが勘違いしているとことを感じ取る、必死に首を横に振る。


「ねぇマリー……。ルミウスのことしっかり見てみてよ。」


 隣で既にじっくり見たというのに、と思いつつもルミウスの全身をしっかりチェックする。ふんわりとした髪質なのか揉みあげのあたりが軽くカールしているのが可愛らしい。身長は周りの子より少し高めだ。長めの髪をふんわりとまとめた三つ編みが靡く様が文学少女的雰囲気を出している。そしてそのまま視点を下げると見えたものは。


「………………ズボン?ん?学院って女子のズボン着用駄目だよね?」


「うん。」


「……ん?」


 完全に思考がフリーズしてしまったマリーを見かねてアルが助け舟を出す。あのね、そう切り出してアルは小声で、しかしはっきりとした発音でマリーへと告げる。


「ルミウスは男の子、だよ。」


 その時の事を(のち)に振りかえってマリーはこう語る。


「目覚めるところだった。」


ちょっと読み返すと誤字がorz もしも見つけたら教えてくださると助かります。長いこと放置してから気付くと「うぉぉぉぉぉ!!」ってなります。

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