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第6話 オリックスファンは世界にいったい何人いるのか

オリックスが大好きです。

第6話



 ちんちくりんの色白少女が、今日もタロットを切る。今日はお客(一般生徒)がいるようだ。

「今日のあなたのラッキープロ野球選手は、平野佳寿(05年希望入団枠)でしょう」

 『やったー』と言って、お客さんは大喜びで部室を後にする。ノキアから、BBHというゲーセンで使うプロ野球カードが渡された模様。


「お前ね、そんなテキトーな占い、かわいそうだろ?」

「なにがだね? 小生は『当然のこと』をしたまでだ」

「そうですよ。さっきの方には平野投手のような剛速球的積極性が必要でした。大胆にど真ん中をつけば、相手に想いも届くと思います」

 なになに? 恋愛相談だったのか? じゃあなおさらプロ野球選手で占っちゃだめだろう。


 我らが部長、花澤ノキアのタロット占いは、ほんとに何でも当たると校内でも評判らしい。ノキアのおばあちゃんは、オレも会ったことがあるけど、世界的な占術師だそうで。のほほんとしたかわいいおばあちゃまだったけど、第2次世界大戦の時も連合軍側について重要な占いをしていた顧問占い師だったそうだ。そのテクをノキアは受け継いでいるってわけ。


「しっかし、そんなになんでも当たるのかね?」

「君は昔から小生の占いを見ているだろう? 小生が外しているのをみたことがあるのかね?」

 う、たしかに無い。3才くらいから知ってるけど、真似事で始めたよーわからん奴もふくめて、ノキアの占いはことごとく外れたことがないのだ。

 さすがは、血族といったところか。


「じゃあさ、この小説のタイトル、占ってやれよ。作者困ってるっぽいぞ」

「タダでか? 甘ったれるでないよ。タダなのは、ソフト◯ンクの基本料だけで十分なのだよ」

 く、ライバル球団のスポンサーじゃないか。おのれノキアめ。

 だがオレはへこたれん。

「いや、イマドキ『おりっっっっくす(占)』ってさ、そのまんまのタイトルで誰が釣れるの? って感じじゃん?」

 ここで、後輩のピロコが愛用のノートPCを開けながら会話に入ってきた。

「……ふうむ、私も同じことを思っていました。そもそも、このような小説サイトを見ている方というのは、女子率が7割超のはずです。全国のオリッ◯スファンが1万人として……、そのうち、女子は3割くらいかと……。人口比に換算すると、この小説のファンになってくれる可能性のある方はざっと23人くらいかと……」

 いや、おい、さすがに1万人は少なすぎだろ。日本の総人口、1億2800万人を超えようとしてんだぞ。まあ、少子化で今後さがるかもしれんが。


 それに、なにより、去年のホームゲーム観客動員数平均は19,458人もいるんだ。

「そんなの、人気球団を見に来た三塁側ばっかにきまってるじゃないですか。みんなダルビッシュを見に来たんですよ。ダルビッシュ!」

「いや、そんなことねーって。さすがに3万人くらいはいるって!」

「三万人いたとしても、ざっと69人ですよ!」

「なんで『ざっと』で1の位まで正確にでてんだよ! もっといってるって」

 なんでオレは、こんなに必死にオ◯ックスの肩をもってるんだ?


「わかった」

 ノキアがやおら立ち上がり、部長机の上に登った。

「小生も去年からだが、オ◯ックスファンの端くれ。一肌脱ごう」

 おお。わかってくれたか。やはり持つべきものは、異能主人公とヘタレ主人公でも慕ってくれる幼馴染だよな!

「皆で良いタイトルを占おうではないか」

「そ、そりゃ妙案だぜ!」


 でも過去、名前変えをして成功したのは、『くりぃむ◯ちゅー』くらいであって、『モン◯ッキー』にいたっては、目も当てられん状況だぞ。これは、慎重を期さねばなるまい。


「はい!」うわ、あっきー先生、いたの?

 『こんなのはどうかしら?』といいながら、フリップを出す。まだフリップがあんのね? コス◯コでまとめ買いしたのか?


<みんなで第4文明の太陽神、ゴットゥーザ様を信仰しよう!>


 バカか。大体、この界隈でゴットゥーザ様つったら、朝比奈みくる役のアノ人になんだよ! しかも、アヤシすぎて誰もタイトル、クリックしてくれんわ!

 『もぉーわがままねえ』といいながら、まだ出すおばはん先生。滑ったらウケるまでやる、という根性の持ち主らしい。


<魁!後藤塾> 


 ダメだ。萌え要素がねえと、平成のこの世の中はわたっていけねえよ。いいかげん、ドラフト10位入団のイケメン3番バッターから離れろ。


<おりっくま>


 ばかやろ。うちの部のどこに、後ろにファスナー付いた愛らしいマスコットがいるんだ、あん? ベルちゃん(球団マスコット)で我慢しろ。



「しょうがないですね……。ここは私がデータ収集に基づいた、完璧なものをば……」

 おお、期待できそうだ。やはり我がライトアーム(右腕)は頼れる。今日もデータに基づいた、安心感のある占いを期待しよう。


<とある占術の憂鬱☆のきあマギカ(イケメン)>

 

 怒られるわ。


<イケメンオール阪神巨人ヤンキース


 こら。ベテランお笑いコンビになっとる! 人気球団並べりゃいいってもんじゃねえのよ。


<がんばれダルビッシュ君{(とたまにユウちゃん)イケメン}>


 4コマのタイトルか貴様。イマドキ、人気イケメン選手をタイトルに入れて、釣れるような読者がいるのかね? あと、イケメンってつけりゃ女子釣れると思ってね? 

 中括弧使ってるって細かいボケ、誰か気づいてくれるの?

 しかもコレだと、日本ハムFIGHTERSの小説になっちゃうから。



「ふぅ……。まだまだだな。野田くん。その程度の占いでは、小生には遠くおよばない」

 そもそもデータ占いなんてものが存在していいのか、という根本的な疑問もあるが……。


 タロットを一枚抜き、その絵柄を確認するノキア。そして、『ふむ』と一言。

「今から小生の占術で出た、すんばらしいタイトルをくれてやろう。これで書籍化、アニメ化、ドラマ化、ハリウッド化までなんでもござれだ。メモの用意をしたまえ」

 おおっ、そいつはすげえ。

 これで、オ◯ックスのファンも1万5千人くらいにはなるかもしれん。

 安心しろ、寸分たがわず、このフリップに極太のマジックで書きつけてやるさ。

「そのかわり、聞いたからには、絶対にタイトルに反映するのだ、よいな」

「わかったわかった、そりゃまあ、どうせこのままじゃ23人しか読んでもらえないんだろ? やるやる!」


 遠くから、あっきー先生の声がしたことに、あの時のオレはどうして気づかなかったのだろう。


「あ、はなざわさーん、ついでに今日のあたしのラブ運も占ってくれるかしら?」「もちろんです」


<もちろんです。今日のあなたのラッキープロ野球球団はオリックスです>


 と忠実に書き取りましたが何か?

いつも読んでくださってありがとうございます。

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