第4話 なぜ君はオリックスファンなのか
もっと、ノキアのキャラを立ててあげたいです。
第4話
「もう! 5回裏になっちゃったじゃないすか」
金子千尋投手(2010年度最多勝)の1球目は何だったんだろうか。ってか、もう夜もふけまくってんすケド。部活、こんな時間までやってていいの?
気を失ったノキアたちを介抱していると、試合が終わってしまった。2-0でオリック◯の勝利だ。見事に開幕戦を飾ったな。オレの人生とはえらい違いだよ。
「おお! 勝ったのか? さすがはチヒローなのだよ」うれしそうなノキア。
おいおい、地方球団のエースを、メジャーリーグで最多安打したあのスーパースターと同じような呼び方にすなよ。
「何言ってるんですか。イチロー選手は元オリックスのライトフィールダーですよ」
「え、マジ?」そういえば、96年あたりの選手名鑑にあったような……。
なんてこった。あのスーパースターがこんなマイナー球団から? 世も末だね。
さりげにピロコがオレの心をまた読んでるのが気になるが。
オレたちは荷物をさっさとまとめ、帰ることにした。
「そういえば、なんで先生はオリッ◯スファンなんですか?」
「は? なにいってんのあんた?」「せ、せんぱーい……」
ノキアとピロコがこちらを刺すような哀れな目で見ていた。夜道でなければ、オレはあまりの痛さに逃げ出していたかもしれない。
「元々、あっきー先生が顧問になってくれるのと引き換えに、小生らが『オリッ◯スファンになる』という条件だったじゃないか」
「ええっ!」
ちょっと待て、じゃあ何か? 今オレたちがこのオリック◯地獄に迷い込んでいる理由の100パーセントは、この女のせいだってのか?
「そうよ。あんなにすんばらすぃい球団を応援できて、君も楽しいでしょ?」
「はぁ、まあ、前よりは……」やることが増えたな。データ収集とか。
「でもなんでまた、オ◯ックスなんです? オレたち埼玉県人なのに?」
「ば……」「な……」固まる女子二人。
え? え? 何なに? この雰囲気。
地雷のどかーんって音が脳内でしたんですけど。
「ふぅん……。聞きたい?」
「え、ええ、まあ……」
思えばオレも春休み特有の毒気に当てられ、魔が差したのかもしれん。いや、そうだ。魔が差したんだ。うん。そういうことにしておこう。春というのは不定愁訴もよく起こる季節だそうじゃないか。
けっして、ちょっとあっきー先生ってば、パイオツが大きいから何かを期待したわけじゃないんだよ。
あっきー先生は、やおらオレの肩に手を回し、言った。その瞬間、大人の女の良い香りがした。
「じゃー、今日は帰さないからァ……」キュピーン。目、光った?
あっきー先生の元カレが大のオ◯ックスファンだったということを知ったのは、この13時間後だった。
人生初の徹夜。一睡も許さぬ鬼とすごした貴重な青春の1日と引き換えに、オレは知った。
世間の荒波と、「ミツタカ」という謎の男の名前を。
いつも読んでくださってありがとうございます。