第1,2話 占い部です
はじめての投稿です。何も考えずに楽しく読めるような小説を書いていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
おりっっくすっす(占)
第1話
さて、行くのだよ。
3月29日。目の前の女子は、色白な肌を真っ赤にそめながら、息を弾ませて言った。
「今年こそは……、勝ち越すぞ」と。
またこの季節が来たんだ。温かい空気がイヤミなくらいの花粉と共に、オレの鼻孔をくすぐって。
むずむずする感覚とともに、オレの身体も、蒼い稲妻が僕を責める、炎カラダ、ふるわせる、ってな感じで。
「ばかやろ。『ほのお〜、からだ〜、焼き尽くす』だ」
うーん、さりげに人の心、覗くかね?
「うるせー。今年こそ、お前に約束を守ってもらうからな!」
「ふふん。それはチミが小生に勝てれば、の話であろう?」
ち、自信たっぷりかよ。ちんちくりんのくせに、態度だきゃでけーんだからよ。
まあ無理も無い。昨シーズンまではオレが完全に格下だったからな。
でもな、今シーズンからはわけがちがうぞ。秘策だってある。
完全に未完成だがな。
完全なるトーシロだったオレが、2年間の峻厳たる部活ライフの末、ここまでたどり着いたんだ。
いいか、ブレちゃだめだ。逃げてもダメだ。敬遠なんて許さないし、こちらからも絶対にしない。
オレはな、今年こそ、人生のAクラス入りを。
つかむんだ!
え? 何でつかむかって? ばかやろ。オモテの看板見たのか?
「さーてー、占い部、はーじまーるよー」
なんて抑揚のない声だ。もうちょい、声張れ。
第2話
「さて、今シーズン最初の占い対決です。今年の開幕投手(オリッ◯スの)は誰でしょう?」
部長花澤ノキア(14)は、いつものように淡々と話す。数名いる占い部の部員たちはおとなしく壇上のノキアに眼差しを注ぐ。
くくく。いいか、ノキア。春休みにまではるばる登校して来たところ悪いのだが、いきなり開始数ページで死んでもらうことになる。
幼馴染のよしみだ。一瞬でカタをつけてやるから安心しろ。
フハハハ。今年のオレには、こころづよーい味方がいるのだよ。
「せんぱーい。『死ぬ』ってのはあんまりですー。たかが占いじゃないですかー」
こら、いきなりオレにチェンジアップ投げるようなマネすんじゃねえよ。大きく振りかぶって空振りしちまうわ。
いきなり後輩に水を差されたが、こいつこそは、今年のオレのリーサルウェポン。最終兵器後輩。
「よし、頼むぞ。ピロコ」
「せんぱーい。リーサルウェポンってのは、最後にでてくるんですよー。電子辞書、かしますかー?」
「なんでお前はオレの心の声が聞こえちまうの? いたいけな少年の心を無残に蹂躙するおつもりですか?」
「ふふふ。なにいってんですかぁー。私の『占い』にかかればちょろいもんです」
おおそうだった。部内で部長のノキアに継ぐ実力者は間違いなくコイツ。
一コ下でこれまたちんちくりんの、いつも髪を三つ編みにしてる(それはまあまあ似合ってる)野田ヒロコ。通称『ピロコ』なのだ。
「はやくフリップに書かんかー。バカどもー!」
目の前には、真っ白なフリップと、油性マジック。極太。当然のように極太。なんでフリップ?
あ、フリップたって、ロバート・フリップ(King Cr◯mson)じゃねえから。って誰がわかるんだこれ。
すげえ、このマジック、太いなぁ。ニールのバットより太いんじゃね?
って、これ、あっちのバットじゃねえから。
「うるさい。早く書くのだよ。このばかちんが!」
うわー、厳しい、ノキアのやつ、粋がっちまってまあ。
「せんぱい。トロイ・ニール(Troy Lee Neel , 1965年9月14日 - )は、アメリカ合衆国テキサス州出身の元プロ野球選手(内野手)。1995年〜2000年までオリックス・ブルーウェーブに所属し、主に指名打者としてプレーした選手ですね?」
「くく……。さすがだ、まるで瞬時にググったかのような鮮やかなデータ。ピロピロよ、我が後輩にして最大の右腕。特別に『ザ・ライトアーム』と今日はよんでやろう」
「結構です」
は、疾い。
なんだいまの一迅の風のごときスルーテクニックは。
春休みに入って、これまた一段と腕をあげたようだ。油断ならぬ奴。
さて、ここで我が占い部のルールを説明しておこう。
我々は『校内生活を明るく健全に過ごすための手助け』をするために組織された部活であり、創設者は目の前の花澤ノキア(乙女座14才)である。
ノキアつっても、こいつ、ふつーにコムってるから注意ね。
で、腕を磨くため、オレたちはいろんなこと(諸事情により主にオ◯ックス関連)を占っていってるわけだ。
今日はまあ、プロ野球の某マイナー球団の開幕投手を当てようというわけ。
で、占いの結果によって「うらなーいぽいんと☆」が入る。年間順位や月刊順位を竸い、互いに切磋琢磨しようというわけだね。
一応、大会なんかもあるらしいからさ。
1回の占いでは、各自5点満点で評価がなされる。得点基準はノキアが完璧にマニュアル化しているので、おいおい公開していこう。
「ふぅむ……」
ノキアが得意のタロット占いを終えたようだ。
「『太陽』……か……ぬぅ」
バカめ。迷っているな。お前の実力など、そんなものだ。アルカナに翻弄されるがいいわ。
いいか、真に力のある占いとは、迷いなど無いものなのだよ。
オレは、昨夜から用意していた『答え』をささーっとフリップに、書く。鮮やかに書く。極太で。ぶっとくだ。
なぜオレが90年代のオ◯ックスの外国人選手のことなどを知っているか。なぜオレが、ここまで地方マイナー球団ごときに労を費やし、選手名鑑を読み込んだか。
それはオレの完璧なる『占い』のためなのだよ!
「それではフリップをお開けください。一斉にどうぞー」
覇気のねえ声だなー。ま、それはいいとして。
オレがフリップを開けた瞬間、部室の僅少の部員たちから『おお』という声が上がった。
はっはっは。見たかね? 驚きのあまり声も出まい。
さあ、とくと味わえ。オレの完璧な『占い』を。
「今年の開幕投手は『中◯慎也』投手だ。昨シーズンは貴重な先発型左腕として主に後半8月以降頭角を表した、若手のナンバーワン投手だ。去年は打線に恵まれなかった感があるが、安定感は抜群。今年の活躍は間違いないね」
しーん。静まり返る部室内。
くくく。あまりの完璧さにぐぅの音もでまい。ふ、高すぎる能力というのは罪だぜ。
そう、オレの占いは『データ占い』。
この右横に座る後輩の専売特許占いだったものを、今シーズンはそのテクをオレが譲り受けたのだ。準備期間3ヶ月。ついにここまでたどり着いた(キラッ)。
データは嘘つかない。そうさ。無二の親友さ。サッカーボールよりは友達になれる可能性は高いはずだ。
これで、世界最強のタロット占いの使い手、花澤ノキアに勝るとも劣らぬはずだ。
「せ、せせ、せんぱーい……」小声で真横のピロコが話しかけてくる。心なしか声が震えているようだ。
「あんだよ? お前もビビったろ? あまりの完璧さ華麗さに」
「あ、あの……」
いいにくそうにするピロコ。なんだよもう、まだるっこしいなぁ。
「なんだよもう。言いたいことあんならはっきり言えよ」
「パ・リーグなので、『予告先発』です。もう新聞に明日の先発、載ってましたっっ!」
ばびょん。
やっぱ、開幕投手は金子千◯(04年自由獲得枠入団)さんだよねー。
いつも読んでくださってありがとうございます。