第34話:ゴーレムと力試し
まず、開けてくださった方ありがとうございます。そして、長く足踏みしてしまい申し訳ないです。仕事と勉強と物書きを両立できるよう頑張っていきたいと思います。では、このまま読んでいただけたら幸いです。
大精霊が棲むと思われる洞窟に突入した八人。実際は七人と犬一匹だが。
洞窟を進んでいくと前方に冷気を感じ、そして頭上には小さな氷柱が姿を現した。更に進むと周囲は全て氷に包まれ、氷点下に近いほどの冷気が漂う場所にたどり着くと目的の大精霊が現れた。
その大精霊は『ゴーレム』だとアイラが見破ると、二人は二つ三つ言葉を交わす。そんな二人を前に、忍三人娘がアイラとコイルの在学時代の噂を話し始めた。
「三級は精霊に関する基礎的な筆記に下級魔術を扱えること、二級は応用的な筆記に中級魔術。一級から召喚が入り、小・中精霊の召喚に上級魔術」
「えっ? 大精霊の召喚は?」
そう、ノイが言った通り級には今までコイルやアイラがやってきた大精霊の召喚は一級召喚士には許されたことではないのだ。
試験内容を見ても分かるように、実際、召喚士として認められるのは一級から上の者だけ、他は下位魔術士、もしくは召喚士見習いと呼ばれ召喚士とは異なった対応を受ける。
例えば、学園卒業生で在学中に召喚士と認められた者には多額の祝い金が渡される。下位魔術士等として卒業した者の約五倍の祝い金が渡されると言われている。
「その上の下位、中位、上位からよ。だから、本来ならコイルさんやアイラさんは扱うことは許されていないし、まして、コイルさんが王都警備部隊、しかも召喚部門三将という地位につけることはないはずだった」
「例外中の例外か…」
それは、級取得者ではまだ実力が伴ってなく、精霊が暴走、又は術の暴発が起きるものと考えられてきたからである。
しかし、二人は特別に国王と魔術・召喚士推進委員会の会長の連名により特別に大精霊の召喚が認められたのだ。二人は一級にとどまらず、中位、もしくは上位の実力を持っていると判断された。
「二人が在学していた学園ではこんな噂があったそうです」
「噂?」
星羅がさらに話始める。『噂』という言葉はどんな状況下にあろうとも、誰もが興味を持ってしまう。そう、たとえ目の前に噂の対象になっている人が居ようとも。
「コイル・セラフィーとアイラ・インフェルノは力があるにもかかわらず、その先を欲しない。二人はその先に興味はないらしい。そして、二人がこの学園に来た目的は地位の獲得より大切なものらしい。と」
「大切なもの?」
ドールが素直に聞き返した。それに答えたのは星羅ではなく、アイラ、本人だった。
「大事なものを守る力が欲しかったのよ」
皆に振り替えって当然のように答えるアイラ。
彼女達の考えは当たり前のことだと思うが、学園に通い、魔術士、召喚士を夢見ている者の多くは一攫千金のために地位や名誉を手にしようとする者がほとんどだ。実際、酪農や農業が一とすると魔術士が十、召喚士が十五の収入が得られると言われている。ちなみに商人は二、地主は三、兵隊は五、大臣だと魔術士と同じく十言われている。
そのため、彼女達のような者は異質だと学園では言われる。
「アイラ…」
名前を呼んだ彼を見て自分の意思を伝える。誤解が無いように、彼に余計な傷を負わせないように―。
「ノイ、言っておくけど、あの事件が無くても私はこの道を選んだわ。だからあんたのせいじゃない」
「だが…」
更に口を開いた彼にアイラは一度目線を外し、戻した。
「男がぐじぐじしないでよ…あんたがそんなんだと私、言いたいこと言えないじゃない…」
「……」
悲しげに微笑んだ彼女を前に、ノイは何も言い返せず、口を閉ざした。
忍三人娘は事情が分かっているらしいが、あえて口を開かないらしい、シード兄妹は聞きたいが皆の顔色を見て発言を控えているようだ。
「さて、お話はすんだかい?」
静かになった人間達に一応確認するゴーレム。
「えぇ、おかげさまで」
「では私の意見を述べさせてもらおう。私も今のルイの行動は危険だと思う。アイラの能力も認めよう、しかし、他の者達の実力が分からぬ以上私はお前達とともには行かない」
はっきりと自分の考えを述べたゴーレムにウィークがからんできた。最終的な結論がうやむやにされている上に、自分達を見下したような言い方が気に食わなかったようだ。
「おいおい、随分と遠回しな言い方だな。はっきりと俺と闘えって言えばいいじゃんか」
「そう言って、お前達は私に立ち向かえるか?」
ゴーレムはあくまでも、自分の方が上だと言うかのようにウィークに向かって言う。氷のように冷たい目がウィークを射抜く。
「私たちはあなたと手を取ることは目標を達成するための通過点としか考えてない。けど、目標を達成するためにはあなたの力が必要なの。だから怖じ気づいたりしない」
反論したのは百合だった、恐れを知らないのか、ゴーレムを真っ直ぐ見て返答した。これにゴーレムは薄く笑った。
「そうか…」
「俺達の準備は万端だが?」
大きく伸びをしながらノイは言った。
それを聞いてゴーレムは真剣な表情になり、右腕を前に伸ばし手を開く。アイラは直ぐに下がり戦闘体勢になる。
「では、力を見せてもらおう! 吹雪!」
ビュオォォ…
ゴーレムの開かれた手から冷たい雪と風が飛び出してくるかのように現れ、洞窟内に吹き荒れた。
「くっ…ドラゴン!!」
すかさずアイラはドラゴンを召喚。
「なんだ!? この吹雪は…視界が悪くて見えん」
ゴオォォォ…
ドラゴンは炎を作り出し、始めに周囲、その後洞窟内を移動させ吹雪を相殺させた。吹雪はもちろん洞窟内の氷柱や氷までもが消え、溶けた後の水さえも蒸発してしまったようだ。
氷で滑る心配がなくなった地面を走り、ゴーレムの懐に入り込む。そして、ノイは技を放った。
「雷神拳!」
ドンッ
「ぐっ!」
技をまともに食らったゴーレムは倒れることはなかったもののよろめき、標的を絞り込んだ。
「アイス!」
キィンッ
「星羅!!」
狙われた星羅はあっという間に氷漬けにされ、百合の悲痛な叫びもむなしく氷でできた彫刻のように動かなくなった。
「グロー丸! 火炎刀!」 藍が自分のクナイをくわえさせて指示を出す。グロー丸は何処からか作り出した炎をくわえているクナイの刀身に宿らせ、ゴーレムに突っ込んでいった。
「ガゥッ!」
しかし、彼が身に纏う冷気によりグロー丸の炎は威力が下がり、怪我を負わせることはできずに左腕の服を裂き、少し焦がすことしかできなかった。
「…何をしたい?」
「グルルル…」
自分の横を通りすぎていったグロー丸を振り返り、小さな彼を見下ろす。そして、右手のひと指し指を向けられると星羅と同様に凍りついてしまった。
しかし、この瞬間を待っていたかのように、百合とウィークが続けて技を放った。
「土破!!」
「秋沙雨二連斬!」
百合は相手の足元から新たな岩を生み出し持ち上げ、ウィークはバランスを崩した相手に素早い連続の突きと斬撃をお見舞いする。
ドカッ
「ぐわぁっ!」
反応が遅れたゴーレムはまともに二人の攻撃を受け、壁に叩きつけられた。
ぼろぼろになったゴーレムは最後の二人の攻撃が効いたのか、口の端から血を流しながら壁に寄りかかったまま口を開いた。
「私の敗けだ。仲間になろう…」
その言葉と同時に彼は青色の淡い光に包まれた。
。。。確申。。。出さなきゃいけない人はちゃんと出そうね。