第33話:氷の洞窟
お久しぶりです。深海瑠璃です。大幅に更新が遅れてしまいすみませんm(__)m学業に仕事に私生活に色々とゴタゴタしてさらに二話同時更新しようとしたけど全然間に合わず、急いで今更新させていただきました。自分を追い込んでもなかなか文章が書けず。。。こんな私が書いた作品ですが、読んでいただけたら幸いです。
真っ暗な洞窟の中、眩い光が一つ。その後を追うようにして歩いているのは七人と一匹の旅の一行のみ。
「ねぇ、何でだろうね」
前から四番目を歩いているアイラが、この場にいる全員に問いかけるように言葉を発した。すぐに返事を返したのはアイラの前方を歩く百合。
「どうしました? この自動照明が気に入らないんですか?」
彼女は半分顔をアイラに向けながら、自分達の前方を照らす光を指さしながら問い返す。
それを、苦笑いでアイラは返した。少し元気が無いようだ。
「違うよ。何でコイルさんは私達を置いて街の図書館に行ってしまわれたのか…」
アイラの言葉に、すかさず星羅が言う。
「コイルさんはかなり頭の良い方だと私は思っています。きっと何かあったんですよ」
星羅のフォローも無駄にするように、ドールが更にため息を吐きながら不安を口にした。
「でも、私達だけってかなり不安です…」
そして最後は歳のわりに思考回路がかなり大人な藍が、前方のドールの服の裾を引っ張って言った。
「コイルさんが自分が居なくても大丈夫だと言っていたのですから大丈夫ですよ」
藍に次いで彼女の愛犬、グロー丸が一つ吠えた。そうだよね、とアイラとドールは納得した様子。
「まてまてお前ら」
ここで声をあげたのはノイ。ウィークと並んでこちらを見ている。
一人じゃ怖くても、仲間が居れば大丈夫という感じだが―。
「何よ」
「いや…そんなに俺たちじゃ頼りないかって聞きたかっただけなんですが…」
あまり意味は無かったみたいだ。男二人で肩を並べて意見を述べようとも、アイラのちょっと不気味な声と顔で一気に縮こまる。
二人は絶対、亭主関白にはなれないタイプであろう。いや、アイラ達の存在がそんなことさせません。
「頼りない」
「相手は大精霊よ? 普通の人間がどれだけ強くなろうと、大精霊に勝つのは難しいわよ。だったら同じ大精霊か、強力な魔術で対抗しないと」
ドールのきつい一言の後にアイラの男性陣に優しいのか優しくないのかわからない論説。また静かになった男性陣を無視して歩き出す女性達。
「たしかコイルさんは一級召喚士で王都警備部隊召喚部門三将でしたっけ?」
思い出しながら星羅はアイラに聞いた。アイラは大きく頷いてふと、足を止めた。
「アイラさん?」
ドールは彼女の顔を覗き込んで聞いてみたが、アイラは眉をひそませて聞き返してきた。
「ドール。寒くない?」
「え…、そういえばちょっと寒いような…」
言われて初めて気付いた微妙な寒気、前方からきているようだ。前を歩く百合が更に歩みを進めて天井を見上げる。
「…これじゃ寒くなるのもわかります。皆さん、あれを」
他の皆を呼び、自分の頭上を指差す。その先を見てそれぞれが急に口を開く。
「つらら!?」
「なんでここから急に…」
「おそらく、ここからが大精霊の縄張りみたいなものなのでしょう」
ノイは楽しみでしょうがないのか、急に軽いストレッチを始めた。
「縄張り…いよいよってことか」
「ドール! せめてこれでも羽織っておけ!」
そういってドールに渡されたのは一枚の薄めの布。この布はテントで寝るとき、兄が使用しているものではないかと考える。
布を受け取っても何も行動に移さない妹を見かねて、兄が渡した布を掴み、妹の肩に羽織らせて前で合わさった所を軽く結び、ポンチョを完成させた。
「お前寒い格好してるからそれでもしとけ、少しはましだろ」
ちょっと照れてるのか、顔を逸らして頭を掻くウィーク。
「お兄ちゃん…」
彼が顔を上げた先にはちょっとうつむきがちな妹の姿。彼は焦った。
「い、嫌だったらほどいていいんだぞ?」
妹の言葉を待つ。きっと、そんなお節介いらない! 迷惑! などと言われ、おまけに平手打ちなどをもらうのだろうと覚悟をしていた。だが、
「……ありがとう!」
「うわっ!」
返ってきたのは罵倒ではなく感謝の言葉。平手打ちではなく抱きついてきた。ウィークら顔を真っ赤にして固まってしまった。
「バカだ…」
「シスコンがいる…」
「ブラコンがいる…」
「藍。見ちゃダメよ」
「なんで?」
「クゥン…」
上からノイ、アイラ、星羅、百合、そして藍とグロー丸が口を開き、大半が当然の如く呆れていた。
それから暫く歩き、頭上にあった氷柱も長くなり、壁や足下も氷に覆われ、辺りも先程とは比べ物にならないくらい気温が下がっているように思える。
『何しに来た?』
突如、脳に直接問いかけられているのか、氷に反響していのか分からない誰かの声に、七人は辺りを見渡す。
しかし、辺りには七人以外に誰も居なかった。
『答えよ』
また誰かの声が問う。
「私達は旅をしている。世界の崩壊を目論むルイ・スベアを倒すべく、仲間を集め力を集めながら向かっている」
アイラは見えぬ相手に臆することなく、冷静に自分たちの本来の目的を答えた。
それを聞いて、冷気が一ヶ所に集束し始める。初めは手足が出来ていった。そして瞬く間に胴体、顔。完全に人が出来上がっていった。
現れたのは肌の色が妙に白いが標準的な背格好をした男性。彼の髪は白に近い水色、服はこの場には似つかわしくない青い半袖のジャケットにその下には白の長袖、そしてジャケットと同色のスラックスを身に纏っている。
『…ルイを? そういえば、彼は目を覚ましたらしいな』
「そうなの。だからゴーレム。あなたの力も借りたいの」
「えぇ、ゴーレム!?」
軽く手足を動かし、身体をほぐす相手、ゴーレムの名を当てた。そのことに驚いたのは、百合と星羅を除く者達、当てられた本人は目を大きく見開きアイラに尋ねる。
『私の名を知っているのか…お前は召喚士か?』
「ええ、私はアイラ・インフェルノ。一級召喚士」
アイラは相手に微笑んで答えたが、ゴーレムは眉間にシワを寄せアイラわ頭のてっぺんから爪先まで何度も目を往復させ、顎に手を添えて言葉を吐いた。
『人間の目は腐ってるのかな? 君のような逸材が一級止まりなわけないだろ』
ゴーレムの言葉にありがとうございます。と返してからまた微笑んで言う。
「いえ、私は本当に一級。その先には興味がなくて試験はそこまでしか受けなかったわ」
彼女の言葉に彼は笑い、呟いた。
『…面白い。磨いたら光る宝石の原石だな』
二人の会話を他の皆は見守るように立っていた。一人はひたすら頭に疑問符を浮かべてたが…。
ノイが急に隣に居るウィークの服の裾を引っ張る。
「なぁ…一級より上ってあるのか?」
ウィークは耳元で呟くようにして聞いた彼に、少しばかり失礼だが、笑いをこらえながら答える。
「あぁ、あるぞ」
「召喚士は三級から上位まであるんです。一般的には一級で一人前と認められるんです」
ウィークに続いて補足を言う百合。ノイはウィーク以外に聞かれないように言ったのだが、忍である百合にはそんなのは意味ないらしい。
更に続けてドールが言う。何故みんながこんなに詳しいのかノイは疑問に思ったが、きっと馬鹿にされるのではないかと思い言わなかった。
早く次が更新できるよう、番外編も本編も頑張ります!