第三十一話 再出発
なんかもうすみません。言い訳はあとがきに書いておきます。。。絶対怒られること覚悟で。。。数少ない読者様には申し訳ないと思っています。このまま読んでいただけたら幸いです。
雲ひとつない青空の下、旅の一行は忍の里を出発するため里の入り口である門の前に立った。
里に来たときの仲間は五人だったが、今は八人と一匹になった。頼もしい忍の三人娘と忍犬が加わったのだ。
「皆さん、改めまして、これからよろしくお願い致します」
百合が深々と頭を下げ、星羅、藍も続いた。
「そんなかしこまらなくても、俺たちはもう仲間なんだから」
ノイの言葉に三人は顔を上げ、驚きの表情を向けた。
「はい…ありがとうございます」
星羅が嬉しそうに頬を緩めて言った。他の二人も優しい顔になっている。
「ねぇ、そういえば何処に最初の巻物があるの?」
確かに、三人からは体力が落ち、術が使えなくなったために修行をし直すため付いていきたい。そして、術を覚えるための術式が描かれた巻物を集める。ということしか話されていない、目的地を言われていないのだ。
「それは…」
ドールの質問に三人で顔を付き合わせて悩む。どうやら三人も聞かされていないらしい。
「良かった、まだ居ったか」
そんな八人と一匹に声をかけたのは一人の老人。
「長!」
「斑さん!」
その姿には全員、見覚えがあった。里の長、黒龍ノ斑その人である。
「実はの、最初の巻物を渡すのを忘れておったんじゃ」
そう言って懐から四つの巻物を取り出した。四つとも違う色をしており、それぞれ橙色、緑色、青色、赤色をしている。
「最初は斑さんが持ってたんですね」
アイラが言うと斑は微笑んで頷いた。そして、巻物を一つずつ渡していく。
「百合は『土破』、星羅は『風切』、藍は『氷手』、グロー丸は『火炎刀』」
「ありがとうございます」
「わん!」
巻物を受けとると三人と一匹は礼を述べ、巻物を開くと巻物が光りそれぞれの二の腕部分に吸い込まれていった。後から聞いた話だと、これで巻物に書かれていた術を覚えたらしい。
いちいち何かを覚えずとも、身体が勝手にその術に必要な気の量などを調節してくれるようになったとのこと。すごい。
三人と一匹のその儀式らしきものが終わったのを見届けると、ウィークが斑に訊ねた。
「あの、次の巻物はどこに…」
「巻物はお主らが行くべき場所までの道のりにある。行けば巻物が手に入るじゃろう…」
「ってことは戻ったりする必要はないわけか…」
ノイがそう呟くと、斑が手を二回打って彼らに言う。
「早く行かないと陽が暮れるまでに次の街に着かなくなるぞ」
「は、はい。斑さん、ありがとうございました」
「こちらこそありがとう。気をつけてな」
微笑んで手を振る斑と言葉を交わし、八人と一匹は里の門をくぐり、目の前の森へと足を進めた。
灼熱の太陽が上から、その太陽の陽が下の砂から反射し、上下から五人を苦しめる。さらに、太陽の直射を防ぐために全員フード付きのコートを被っている。三人と一匹ほど足りないが、ただ今わけあって別行動中である。
「暑いアツイあつーい! なんでこんなに暑いの!? 干からびる…」
「…砂漠だしなぁ」
叫びながらも歩く、いや歩かされているアイラにぼそりと呟くノイ。もちろんその言葉にアイラは眉をつり上げたが暑さのため何も反論せずに歩き続けた。
そんな二人の後ろを歩く他の三人。
「ドール! しっかり歩きなさい!」
だらだら歩くドールに、半袖の袖を肩まで捲りあげたコイルが叱咤する。
「むりぃ…」
「ほら、俺の水やるから」 そんな妹の姿を見てウィークは自分の水筒を渡す。ドールは奪い取るように水筒を手にすると、蓋を開けて水をがぶ飲みした。それを見てコイルは心の中で、一回にそんなに飲むから直ぐに水筒がからになるのでは。と思ったが口にはしなかった。
「んぐ、んぐっ…」
水筒から口を離し、所有者である兄に渡す。しかし、その水筒はドールに渡した時より明らかに軽い。
「…ぜ、全部飲みやがったな…」
耳の近くで水筒を揺らしても、水の音はしなかった。そして、がっくりと肩を落としたウィークの歩くスピードが落ちた。
「さぁ、行きましょ」
「急に元気になりやがった…」
テンションの高さが違うシード兄妹はもうほっとこう。そう兄妹以外の三人が思っていると、目の前に三人と一匹が突如姿を現した。
「お待たせしました」
「百合さん!」
百合が現れたことで、一番テンションが高くなったのはもちろんウィーク。ついさっきまで飲み水を全て飲まれてしまったことで下がっていたテンションも、一気にはね上がった。
「まだ距離はありますが、この先にオアシスがありました」
「やったぁ…」
彼女の言葉に反応したアイラが、覇気がない声で喜んだ。しかし、そこで百合の後ろから顔を出した星羅。
「あと十五キロほど歩かなければいけません…」
「頑張ってください」
「わん!」
残念なお知らせが入り少し悲しい気持ちになったが、歩かなければ着くところにも着けない。ということで歩き出した。
オアシスを目指し歩いていた一行だが、先程告げられた距離の約半分まで来たところで陽が沈んでしまったため、足を止めた。
「結局オアシスには着かなかったね」
「十五キロもあるんだからしょうがないよ、砂漠だから歩くスピードも落ちるし」
アイラが砂の上に腰をおろし、自分の横に立っているノイに話しかける。二人とも寒いのか身を縮めている。
「寒い! こんな中、外で寝ろと…?」
急に騒ぎ出したのはウィーク。どうやら『野宿=外で寝る』という考えができてしまい、一気に気温が下がった砂漠に危機を感じたらしい。
一人騒ぐ兄を妹は変なものを見るような目で、忍三人と一匹は最初ぽかん、としていたがすぐに笑い出した。そして百合は腰に着けている鞄から二つほど何かを取り出して、ウィークに見せた。
「長テントを二つ渡されました」
「ありがとう斑さん!」
コイルが持っている一つと百合が持っている二つ、計三つのテントをなるべく平らな所に建て、人を割り振り全員テントの中に入っていった。
ウィークのいるテントの中にはウィークとノイ、それとグロー丸が入っています。人間二人は向かい合って座り、何やら論議中。
「で? なんで犬と一緒なわけ?」
嫌そうな顔をしてグロー丸を指差すウィークを、ノイがため息を吐きながら答える。
「しょうがないだろ、一つ三人までだけどグロー丸を外に追い出すわけにはいかないんだから…」
何故か動物に優しいノイ。ウィークはいじけて床にのの字を書きながら呟きだした。
「…百合さんが良かった…」
「いやいや、それ一番ダメだから」
彼の呟きにノイは少し顔を赤らめながらも返す。さて、何を考えているのでしょうか。
「…何言ってんの? 俺はただ一緒のテントが良いって言っただけで、そこから何をしようとかは思ってないし…ノイはいやらしいなぁ」
「ば…!」
「さぁて、寝よう。毛布はどこかなぁ」
ウィークに言われて反論しようとしたが無視され、そのままコートを自分に掛けてノイは横になって寝はじめた。
「わん!」
前足の前に毛布を二人に見せるグロー丸。そんな姿に少し心が癒される人間二人だが。
「お、偉いじゃないか。俺たちのために?」
「わふ?」
グロー丸はいつの間にか畳まれていた毛布を寝やすいように崩し、そこに体を寝かせていつでも寝れるような体勢に。一度は癒されたウィークだが。
「違うのかよ! 自分で探せってか?」
「ウィーク、毛布はグロー丸が持っているやつだけみたいだぞ」
「なにぃ〜!? 毛布を貸しやがれ馬鹿犬!」
今はお怒りの様子。グロー丸から毛布を奪い取ろうと必死だ。
「ちくしょう…この!」
毛布を引っ張っても、グロー丸を持ち上げても、毛布とグロー丸は一心同体なのか離れない。ウィークがいろいろと頑張っていると、さすがの煩さに頭にきたのかノイが怒鳴った。
「お前らうるせぇ! 静かにしやが…れ」
「あ、待て!」
「…ちくしょう…」
やはり無視されて一人いじけるノイ。
結局ウィークは諦めてノイと毛布なしで寝たが、二人が寝静まったころにグロー丸が毛布を二人に掛け、自分は毛布の端に丸くなって寝たというのは朝起きて知りました。
言い訳いきます。10月から中途出社しまして、学校と会社、それに小説書き。なかなか両立が難しく、少しずつ書いていたらこんな。。。そして、この三十一話は1ヶ月前に完成していたのに送っていませんでした。。。ごめんなさい。こんな作者ですが、中途半端にこのお話は終わらせたくないので、引き続き読んでいただける方がいらっしゃいましたら泣いて喜ばせていただきます。