第24話:露天風呂
こんばんわ、合宿免許でぐったりしている深海です。でも音楽を聴いて癒されています☆Mステに好きなアーティストが居なくて少し残念な気持ち…さて、そんな中で書いた今回。このまま読んでいただけたら幸いです。
長の斑に会い、同盟も結んだ。そして今は百合達の家で夕飯をご馳走になり、まったりと過ごしている五人。
ズズ
今は小さな机をみんなで囲んで、お茶をすすっている。
「…お茶おいしい」
ドールは顔をゆるませ、ほっ、と息をつく。
「お食事は口に合いました?」
居間のすぐ横にある台所から食器の片付けをしながら星羅が尋ねてきた、もちろんドールがにこにこで答えた。
「それはもちろん! こういうお料理は初めてだったんですが、とてもおいしかったです」
それを聞いた星羅はにっこりと笑い片付けを続ける。
五人がご馳走になった料理は初めて見るものであった、魚を煮付けたものや野菜を茹で、何かで和えてあったりする『和食』と呼ばれるもの。
自分達が普段食べるものより、少々色合いは少ないがとてもおいしく、味わい深い品々。アイラが気に入って、今度レシピを教えてほしいとお願いしたほどだ。
「星羅さん、百合さんは一体どうしたの?」
コイルが片付けを終えて居間に帰ってきた星羅に聞いた。ノイが思い出したかのようにコイルの後に続いた。
「そういえば、さっきからずっといないな…」
「そういえば、とか言うんじゃねぇ!」
パシン
ノイの言葉に頭にきたのか、ウィークがノイの頭をひっぱたく。
そう、居間には五人と星羅だけ、百合は食事を摂るとき以外はずっと玄関にいる。
「…百合は十才になったばかりの妹を待ってるんです。山に入ってしまって帰ってこないので」
少し躊躇いがちに口を開く星羅。
「こんな所でまったりしている場合じゃないじゃないですか! 助けに行きましょうよ!」
ガタン
ウィークが勢い良く立ち上がり、自分の妹でもないのに顔を白くさせ、焦っているのがすぐにわかった。
それに静かに首を振る星羅。
「ダメです」
続けて話す。
「彼女はまだ小さな子供ですが、立派なこの里の忍。一人で出掛けたということは、決して他の人の助けを拒んだということ、その意志を汲んであげねば…」
沈黙が六人の間に流れる。
「こんな話は止めましょう! 皆さんお風呂入りません? 露天風呂があるんですよ」
テンションを変えた星羅が五人に風呂を勧めはじめる、五人は星羅の心情を察してか、誰も反対する者はいなかった。
「いいね、行こう!」
「私、露天風呂って初めてです」
ウキウキ気分のアイラとドール、テンションが上がっているのは気遣いからなのか、それとも心から本気で喜んでいるのか。
二人の様子を見れば、後者だという事がよく分かる。
二人は早く早く、と星羅が手を引っ張っている。
「そ、それでは皆さん付いてきてください」
星羅は引っ張られながら、残りの三人に伝える。
居間と隣接している台所の横にある引き戸を開ける、その先には庭に囲まれた長い廊下があった。
「この先に露天風呂があります」
先頭にたって歩きながら星羅は説明した、さらに続けて、
「この家は代々、長が住んでいました。しかし、現長である黒龍斑がここに住まわれるのを頑なに拒否しまして、里の者が自由に使えるようにしたのです」
「え、でも斑さんからはあなた達の家だと…」
彼女の言葉にノイが疑問を称えた。それに
「あー」
、と言って答えた。
「私たちがここの管理を任されているので、私たちの家、権利は私たちということになるので長はそうおっしゃったのです」
五人が感心の意をこめ、何度も頷いた。そしてコイルがまた、あの言葉を言ったというのは言うまでもない。
そう、
「どっかの国の王様とは違う」
という言ってはいけない一言。
庭には小さな池があり、周囲の木々や石がその場所に独特の雰囲気を作り出し、五人の心を和ませた。その長い廊下の先には小屋が一つ、ひっそりとたたずんでいた。
小屋の戸を開けると、中は二つに仕切られており、それぞれ『男』『女』と書かれた布が仕切られた入り口に掛けられていた。
「ここが脱衣所です。見ての通り、男女別ですのでくれぐれもお間違えのないように。もちろん湯も別ですので」
注意するように男性陣を見て言う星羅。二人は忠告を受け、互いの様子を伺うかのように目だけで見る。
ノイは顔をほんのり赤く染め、ウィークは複雑な表情をうかべる。
「おにぃちゃーん?」
突然、ドールが下からウィークの目の前に現れた。彼女は疑った顔で兄に詰め寄る。
「覗かないでねぇ?」
その言葉に一瞬驚きの顔を見せたが、すぐにふざけたような笑いで言葉を返した。
「…はっ、アイラさんやコイルさんだったらあるかもしれないけど、おまえのペチャパイなんか誰が見るか」
ドールの胸元を指差しながら言うと、ウィークの左頬に小さな衝撃が走る。
バチンッ!
赤くなったウィークの頬。叩かれたのだとすぐ分かる手のあとが付いた。
「いってぇ、何すん…」
赤くなった所をそのままに妹を見ると、彼女はよほど頭にきたのか、照れとは違う赤さが顔に出ていた。
「お兄ちゃんのバーカ!! アイラさん、コイルさん行きましょ」
彼女は頬を膨らませ、二人の手を引いて『女』の布の奥に消えていった。
取り残された男性二人と星羅は暫し、その場で固まっていたがノイが星羅に一言かけ、『男』の布をくぐっていった。そして、脱衣所で我に返ったのかウィークは叫んだ。
「殴ることねぇじゃんか!」
悲しい兄の叫び、どちらが悪いかと聞かれたら全ての人がウィークだと答えると思うが、彼の心境を考えたら同情してそうとは言えない。かもしれない。
―女 湯―
岩石で作られた広い浴槽、そこから眺める絶景。
女性三人は湯の中に身体を沈める。
「あったかぁい〜」
ドールは普通に入って胸の辺りまでしかない湯の中に、無理矢理肩まで浸かり顔をゆるませていた。
「ごくらくぅ…」
パシャパシャ
「アイラ、少しは静かにしてくれないかな?」
そして、アイラは半身浴状態になりながらも足をバタバタさせ、湯を揺らす。
―男 湯―
男性二人も湯槽に浸かろうとしていた、はずだったが…。
「! ウィーク…」
ノイはウィークの行動に気付き、彼の名を呼ぼうとしたが全てを言う前にウィークに口を塞がれた。
彼は右の人差し指を立て唇の前に置き、静かに、と合図を送ってきた。
彼、ウィークは何をしよとしているのかというと、男女の浴槽を仕切っている竹でできた柵から、向こう側の女湯を覗こうとしているのだ。
「んーっ! んんっんー!」
ノイは必死に自分の口を塞いでいる手をはがそうと暴れながら、違う意味で顔を赤く染め叫ぶ。
(ばか、静かにしろって。あと少しなんだからな…)
ノイの口は塞いだまま耳打ちする。さらにノイは騒ぐ。しかし、今までの騒ぎ方とは違いウィークの上を指差し、見て焦った感じの騒ぎ方だ。
何だ、とウィークが指差す方向を見ると、そこにはアイラの怒りに満ちた顔。
「うわっ! …あ、アイラ…さん」
驚きのあまり、ウィークの口から手を離す。
「うわっ! て何よ。人を化け物みたいに…てか、覗くな言ったでしょ!」
シュッ コーン
「いてっ!」
バッシャーン
ウィークの頭にアイラが投げた桶が当たり、足を滑らした彼はそのまま湯槽の中に。
「なんでオレばっかり…」
湯に浮いているウィークを、ノイは合掌をして一言。
「まぁ、アイラも俺たちを覗いてるけどな…」
アイラはすでに女湯に戻ったらしく、アイラとドールの明るい声が聞こえてきた。
本日のウィークは踏んだり蹴ったりですね、でも大半は彼自身がいけないのですが。