第23話:忍びの里と長
開いてくださってありがとうございます。感謝and感激です!公約通り月に3話投稿するため、学問と両立できるよう頑張っている作者です。今回は新キャラ登場!次話も新キャラ登場!毎回新キャラ登場ですね…では、このまま読んでいただけたら幸いです。
「ここが私達、黒龍流の忍が住む里です」
五人が連れてこられた場所は小さな集落であった、他の街とは違い、この集落は自然と共に生きている。そう思わせるほど集落の外も中も、木々や草花が自由に生きているのだ。
人間がこの場所に住まわせてもらっている。そんな基本的なことが今の他の街には忘れてしまっているような気がした。
家の造りは一階のみの木造、こんな狭いところで生活できるのかと思うほどであった。
集落の広場では子供たちが訓練に励んでいた。剣術、武術だけでなく、魔術のようなもの(百合いわく、あれは忍術らしい)の訓練をしている。
集落の端では、大人達が畑や田んぼで野菜や米を作っていたり、豚や牛の世話をしている者もいた。
そんな集落を歩いていき、集落の一番奥の家に辿り着いたと同時に、百合が口を開いた。
「ここで長が待ってらっしゃいます」
他の家と変わらないくらいの大きさの家、変わっているところといえば玄関前に真っ白と、真っ黒の犬が座っているということ。
二匹の犬はおとなしく座っているため、一見、よくできた置物のようにも見える。
ノイは思ったことを素直に口に出す。
「へぇ、お偉いさんなのに家ちっちゃいなぁ…」
その言葉に百合は愛想笑いかもしれないが、会って初めての笑顔を見せた。
それを見て顔を赤くした兄に、妹は思わず心の中でつっこむ。(お兄ちゃんにじゃないって…)と。
「長は特別とか嫌いなので。任務にも自ら志願もしますし、畑仕事も家事も、自分ができる範囲のものなら全ておやりになります」
「素晴らしい人ね、どっかのぐーたら王様とは違うわね」
百合から聞いて、コイルは関心したようだが後に続く言葉は言ってはいけないし、聞いてもいけないような内容。
全員が誰のことか気になった。
「コイルさん…一体誰のこと言ってるの?」
大体は予想が付いているが、アイラは一応聞いてみる。
「もちろん大り…く…」
「それ以上はダメ! 例えそう思っていても」
別に相手が見ているわけではないのに、急いで手で口を封じる。
黙ったコイルの口から手を外すと、彼女は大げさに息を吐きだす。そしてにやりと笑って一言。
「…アイラも同罪ね!」
「えぇ!?」
防いだことでコイルと自分が同じことを考えた、という結論が彼女の中で出たらしい。おそらくコイルが言いたかった人物は自国の王様、アイラも同じ。これはもう同罪です。
コイルにやられたアイラはがっくり、そんな中、早く中に入ろうと言いだすノイ。
「…ちょっと待っててください」
「?」
それを止めたのは百合だった。彼女は五人に待っているように伝えると、家の横に回り込む。
すると、直ぐ様腕を振り、屋根の上に向けて何かを投げた。微かに見えたそれは刃物であった。
「わわっ!」
刃物が屋根の上をかすめる、それが合図かのように人がノイ達のいる玄関前に落ちてきた。
ガササ ダン
「いたた…」
「だ、大丈夫ですか?」
見事、両足で着地したその人は女性であった。
金髪のポニーテール、服装は百合とほとんど変わらなかったが、はちまきだけが紫色と違った。
「何やってるの? 星羅」
玄関前に戻ってきた百合が、屋根から落ちてきた女性に尋ねた。星羅と呼ばれた女性は両足で着地したためか、痺れる足を押さえて立ち上がる。
「いや、どんな人達か気になってね」
そういうと星羅は後ろに居る五人に振り返り、ノイ、ウィーク、コイル、アイラ、ドールと順番に見ていく。
ふーん、と鼻で反応を示した。
「私は黒龍流の忍、黒龍ノ星羅。百合とは親戚」
星羅と名乗った彼女は、百合が名乗った時と同じように、右手を左胸に置き、少し俯く。
「どうも…」
ノイがつられて会釈をして返す。
「星羅。私が言いたいのは、藍はどうしたの? ってこと」
百合は半ば切れ気味に星羅に再び尋ねた。星羅は百合を背にしたまま話し続す。
「藍ならグロー丸と森に行った」
「そう…」
百合の顔が少し曇る、星羅が百合の頭を叩いた。
パシ
「大丈夫よ、私の忍犬が一緒なんだから」
「そうね…では皆さん付いてきてください、長の部屋に案内いたします」
星羅に言われ、五人の客人を家に招き入れた。
ガララ…
玄関のドアは引き戸で、靴を脱ぐスペースが広くとられている。やはり一階建ての小さな家、玄関の前はすぐ台所と居間がある。居間の奥にはさらに部屋があるらしく、玄関と同じような引き戸がある。
「この奥で長がお待ちしております」
星羅が先頭を歩き、百合がコイルと並んで一番後ろから付いていく。
百合は星羅と話してから、何だか元気がなくなったようだ。顔は俯き、目は泳ぎ、落ち着かない様子。
さすがにコイルが話し掛けてた。
「百合さん。何かあったんだったら、私たちのことはいいから行って?」
コイルのやさしい言葉に百合は顔を上げた、その顔は先程とは違い、森で出会ったときと同じ顔を見せた。
「いえ、大丈夫です。さあ、長に会いに行きましょう」
百合はさっさと前を歩いて行くが、無理しているのが分かった。
「長、星羅です。五人を連れてまいりました」
引き戸にむかって話し掛ける、とすぐに声が返ってきた。
「通してください」
「はい」
戸の向こうから聞こえてきたのは優しい老人の声。
スッ
開けられた戸の向こうには茶色の着物を着、その上から暗い赤紫色のはんてんを羽織っている老人が一人、部屋で待っていた。
「よくいらっしゃった。ワシは黒龍流の長、名は黒龍ノ斑。歓迎致す。どうぞ、中に入ってくだされ」
「どうぞ入ってください!」
グイグイ
「そんな押さなくても…」
グイグイ
五人が斑に部屋に入るよう言われると、百合と星羅が押すように五人を部屋に入れる。
「どうぞ」
入り口につっ立っている五人に、斑が座布団を勧めてきた。座布団はちょうど五枚、群青色の座布団に座る五人。
「百合です。お茶を持って参りました」
「うむ…」
百合はお茶を六人の前におき、また部屋を出ていった。
「本題に入ろうかのう? あらかたは百合から聞いたじゃろう、ルイを葬るために同盟を結びたいと」
ゆっくりと問う斑の質問に深く頷く五人。
「ワシはその返事が聞きたいだけ。同じ目的を果たすための同盟じゃ、悪くはなかろう?」
そう言うと、一枚の紙を懐から取出し真ん中に座っていたコイルに提示した。その紙は調印書であり、すでに斑のサインと血判が押されている。
「誓うならお主の名を書き、血で」
「はい」
コイルは斑が話しおわる前に調印書を彼につき返した。
「答えはイエス。ルイを倒すなら仲間が多いほうがいいし、断る理由がこちらにはないしね」
突き返された調印書にはちゃんとコイルのサインと赤々とした血判が押されていた。
斑はにっこりと優しく笑い拍手を二回した。
「およびですか?」
戸の向こうから百合がそれに答えた。
「客人を泊める、案内しておあげ」
「はい」
スッ
ドアが開けられ二人が待っていた。
「今日は二人の家にお世話になるといい、ここよりかは広いぞ」
そう言われてコイルは深く頭を下げた。それにつられ他の四人も頭を下げる。
「ありがとうございます」
斑の家を出て百合達の家に向かう。
斑は真っ白な髪に、真っ白な髭が印象的だった。だが不思議に思ったのは自分達と話している間、一度も目を開けなかったということ。
キャラ総数は作者自身、まだ数えたことはありませんが、かなりいると思います。