第22話:忍(しのび)
こんにちわです。作者は昨日決めました、心に誓いました!連載モノは、月に3話ずつ出していくと。。。!つまりは、ただ今連載中が2作あるので、月に6話。頑張りますので、今後もよろしくお願いします。では、このまま読んでいただけたら幸いです。
森の中をいろんな道を歩いてるはずなのに、ぐるぐると同じ所を歩いているかのように、ずっと同じ景色。歩いてもひらけた場所、里にはいっこうに着かない。
ただ一つ救いなのは、暑くないことと泉があるということ。
一行は黙々と森の中を進む、
「ねぇ、気のせいかしら。同じところをぐるぐる回ってない?」
疲れた足を引きずるように歩くコイルが、仲間に問い掛けた。これにドールが深いため息を吐いて答える。
「コイルさん、それは言ったらダメですよぉ…」
他のメンバーが頷く、皆分かっていたが信じたくないため黙っていたらしい。
「あ、…ごめん」
精神的な疲労感は増えたが、一行は止まることなく歩き続けた。
「ちょと、止まって…」
ノイが小さな声と手で、全員の足を止める。
「どうしたの?」
アイラが疲れた顔で聞いてきた。
「えっと…」
困り、言葉を選ぶノイ。
「…なるほど」
ノイの様子から辺りの気配を探るウィーク、微かな気配に気付き声をもらす。荷物を妹に預け、手は自然と剣の柄を掴み、いつでも抜けるような体勢になる。
相手は近くの樹の上から、こちらを見ているようだ。
「ふん…一人か」
タッ
口だけで笑い、ウィークはその場所目がけて走りだした。
「なになに!?」
今だ分かっていないのはアイラだけ、他の全員はウィークが走りだす前に気付いている。
ガサッ
ウィークが樹の五メートル近くまで近づいたとき、目的の場所が動いた。
「あ、なるほど!」
手をぽん、と叩いて満足気な顔で頷いた。
ザッ
ウィークが剣を抜こうとすると何かが飛び出してきた。すかさず剣を納め、捕まようと進行方向をかえ、走りだす。
剣を納めたのは、相手がどんな者か、分かったからだ。
それを追い、他のメンバーも走る。だが、前を走る二人には追い付けそうもないほど速い。
ウィークはぎりぎりで相手が視界に入る位置を走る。いや、相手がそうさせているのだ。
「くっ、速いな…」
相手は器用に樹の上を飛び移る。時々こちらの様子を伺うように立ち止まることがある。
「なら…」
―そこを突いてやる…
ウィークもは再び柄に手を掛け、剣を引き抜く。
―1、2…ここだ!
相手が次の樹に移ろうとした瞬間に、ウィークが着地すると予想した枝に剣を投げる。
シュ ドッ
剣は見事に相手が着地する直前に枝に突き刺さり、枝を落とす。
バキッ
相手は次の樹に移ることは考えていなかったらしく、そのまま体勢を崩して下へと落ちる。
「くそっ…!」
ザザザザザザザ…
「やっぱりな…女か」
落ちた本人は地面に落ちたはずなのに、体中のどこも痛くない。しかも、自分を追ってきた男の声が間近ですることを不思議に思い、目を開く。
目の前には男の顔、というか、自分は男に抱き抱えられている。ぞくにいう『お姫さまだっこ』の状態。
「わっ!? 馬鹿者! 下ろせ!」
ウィークの腕の上で暴れる女、顔を真っ赤にして手足をバタバタしている。
「ちょっ! 分かったから暴れんな」
ゆっくり女を下ろしてやるが、女は地に足が着くなり後ろに跳びずさり、ウィークを警戒しながら服に付いた木の葉を払い落とす。
「ウィーク!」
「よっ」
後を追ってきた仲間達がやっと追い付いた。ノイが声を掛けると、ウィークは手を挙げて応える。
女子メンバーはみんなぐったりといったように、肩を上下させて息をしている。
ノイは多少息があがっている程度のようだ。彼はウィークの視線の先に目を向け、驚きの声をあげた。
「女だったのか!」
「そ、女の方だったのだよ。しかもあの身なり、俺が酒場で聞いた忍と同じだ」
そう、目の前にいたのは真っ黒な髪の女の人。白色の薄手の着物のような服、だが、着物というには丈が膝上と短い。帯は藍色で、額には鉢巻きのように、赤い布が巻かれている。靴は動きやすいようになのか、ぴったりとしたショート丈のブーツを履いている。
ウィークは満足したかのように、口だけで笑う。
女が口を開いた。
「ノイ・クローゼ様、アイラ・インフェルノ様、コイル・セラフィー様、ウィーク・シード様、ドール・シード様ですね?」
すらすらと全員の名前を言っていく彼女、自己紹介も何もしていない相手に言われると当たり前だが、なんだか気味が悪い。
「なんで…私たちの…名前を…?」
まだ整っていない息のまま、コイルが訊ねた。
聞かれた彼女はしばらく考えているのか分からないが、無表情のまま立っている。
そのうちにウィークは地面に突き刺さった剣を取りに行き、鞘に納めまた元の位置に戻る。
全員の息が整ったころ、やっと彼女が動きだす。懐に手を入れ、何かを取り出そうとしている。メンバー全員が身構える。
それに気付いた彼女は別に何を言うわけでもなく、何かを取り出した。その何かは、小さな紙切れ。
「私の部下に調べさせたものだ、あなた方のことが全て書かれている」
紙をひらひらさせて答える。
「で? あなたは何故わざわざ私達のことを調べ、あなた自ら私達に会いにきたわけ?」
紙をまた懐にしまおうとしている忍に、コイルは一気に聞いた。かなり警戒していることがコイルの顔からも分かる。
「…私達はあなた方と手を結びたいのです」
この言葉は誰も、想像していなかったであろう。彼女は続いて、右手を左胸に置き、少し俯いたまま話した。その口調は先程よりやわらかくなったような気がした。
「申し遅れました。私は『黒龍ノ百合』、黒龍流を扱う忍であり、黒龍家の長女でございます」
そういうと、姿勢を正しノイ達に近づいてきた。
「長からの命により、あなた方を調べ、尾行させていただきました」
まず、コイルが聞いた。
「いつから?」
「大陸の城を出てからです」
「気付かなかったわ…」
アイラが反応を示す。
「気配は消していましたので」
続いて、ドールが質問をした。
「なんで私達なの?」
「世界を脅かさす悪魔を倒すためです」
「目的が同じってわけか…」
ノイが納得したように腕を組み、頷いた。
そして、最後にウィークが聞いた。
「歳は?」
(ナンパかよ!?)
百合、ウィーク以外のそこに居たメンバーが心のなかでつっこみを入れました。
さあ、百合は答えるのだろうか。彼女はまた、無表情な顔をでウィークに向けて立つ。
「……………」
長い沈黙。
「…まずは長に会ってください」
完全に無視されたウィークは一気に覇気が無くなり、暗いオーラを出す。
「ついてきてください。里に案内します」
百合を先頭に歩きだすメンバー、ただ一人を除いて。
「ウィーク! 行くぞ」
ウィークはその場から一向に動かない。
「…もう…」
痺れを切らしたアイラが百合に耳打ちし、何かを聞き出す。
そして、ウィークに近付き、また耳打ちをした。
「ウィーク、百合さんは十七だって」
「えっ! てか、七つも下じゃんかぁ〜…」
一回は持ちなおしたウィークだが、歳の差にまたショックを受け元に戻る。
埒が明かないのでノイが引きずっていくことになった。
妹いわく、ウィークがナンパして振られてもいつもはそれほど落ち込まなかったという。
ということは
彼は今回、本気の恋をしたようだ。
さて、ウィークの恋も忍の長との対面もどうなることやら。