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第20話:過去〜シード兄妹〜

お待ちっ!(←誰も待ってないってね)ついに来ましたねぇ、第20話目、今回はなんだか暗い感じになってしまったのでお気を付けて。。。では、このまま読んでいただけたら幸いです。

 山を一つ越えた所にある港を目指し、山道を歩いていた一行だが、陽は完全におちてしまい辺りは真っ暗。仕方なくテントを張る。もちろん一台しかないので、男たちは外で寝る。

 山の中の気温は思っていたものよりも低く、火を焚き毛布に包まる、これでなんとか寝付けるくらい。

「今日の見張りどっちが…」

 ノイは枝や落ち葉を火にくべながら、隣で頭から毛布に被っているウィークに話し掛ける。だが、当の本人は。

「………」

 既に夢のなか。日中は妹をおぶってここまで歩き続けたのだからしょうがない気もする。

 しかし右手は直ぐに剣を抜けるように、柄に手が掛けられている。多少は見張りをしようという気持ちはあったのだろう。

「俺が先っすね…」

 寝ている相手に勝手に話を進めて再び火に枝をくべる、パチパチと音をたてながら燃えていく枝。火を燃やしていれば魔物はくることはないのだが、問題は盗賊。金品目的に襲ってくる連中は最近多くなってきている、一瞬たりとも気が抜けない。

 ふと、後ろを見るとテントにはまだ明かりがついていた。そして微かに話し声。

「…元気だな」

 小さく息を吐いて、また見張りを始める。


 一方、テントの中。女性三人は、横にはなっているもののまだ寝る様子はない。なぜなら元気いっぱいのドールが、ひたすら話し掛けてくるのだ。

 どれもこれも他の二人の意中の相手を探るような質問で、話題を変えても戻してくるというしつこさ、しまいには自分ののろけ話。逆に感心してしまう。

 話し初めてから三つ目の質問。「皆さんのご両親はどうしていらっしゃいます?」

 少し悲しそうな顔で二人に聞いてきたドール、まずはコイルが答えた。

「私の家は雑貨屋。でも父が病気で寝たきりだから母が看病して、弟が店の仕事やってるわ」

 続いてアイラが話し始める。

「私には親が居ないの、私が小さい頃に二人とも死んじゃって。でもノイの両親が私を引き取ってくれたから、私の親はノイの両親かなドールは…亡くなってたのよね。ごめん」

「良いんですよ、生前は私たち兄妹にとても優しく、そして厳しく接してくれました。けど、私が五つの時…」


 ここは魔族と人間が協力し合って共存している小さな村、十世帯、人口三十人強で成り立っている村。男は必ず人間、女は必ず魔族、この村では昔からそうなっている。

 この村の者はドラゴンが棲む洞窟の番人であり、周りからは西の守人グリムと呼ばれた。彼らは男子は剣を使い、女子は氣を使う。

 氣を使えるのは魔族の血を受け継いでいるから、氣はのちに純粋な人間にも使えるようになる。それが、魔法。氣を発する時に額に浮かび上がる印を、村の女性が人間の身体に描いたのが始まり。

 その力は次第に広まり、周囲の者達はその力に怯え、または欲し、権力者達は賊を雇い、村の者達を殺し、連れ去る。

 そんな日々が続いていたため村民の警戒が強くなる。警戒心が強くなるに比例して一回に使う氣の力は強くなり、それは繰り返されていく。

 ある日、村は賊に襲われ、跡形も無くなった。

 なぜ村民達は力を持ちながらも敵対することができなかったか、それはその日が『新月』だったから。

 約一ヵ月に一度月が見えない日、それが『新月』。なぜだかその『新月』の日と呼応して女性達も氣を使えない。

 その情報は村外に出ないよう気を付けていたのだが、知られてしまい、今回の悲劇が起きた。


「早く部屋の奥に!」

 一人の男が全身でドアが開かぬように押さえながら言った。部屋には男と女、それにまだ十にもなっていない子供が二人。

 男と女は黒髪で男は三十後半くらい、女は二十前半だろうか。二人ともシード兄妹に似ている。二人は夫婦であり、ウィークとドールの親である。

 外は火の海。この村に突然来た男たちが放った火は全てを焼いた。

 男たちが抵抗し剣を振るが、腕はこちらが上でも向こうのほうが圧倒的に人数が多かった、村民の男の三倍はいるようだ。

  ガァン ガァン

「おーい! ドア開けてくんない?」

  ガァン

 男が外からドアを叩く、その声は陽気で、まるでこの状況を楽しんでいるようだ。

「ぐっ…」

 叩かれるドアを必死に身体で押さえ付ける父、しかし、それももう限界だった。家族を守り、戦い、疲れ果てた身体で長時間ドアを押さえ付けていた。

  ガァン……

 いきなり音が止む、本当はここで気を弛めてはいけないのに、長く神経をすり減らしてきたため体中の筋肉が弛む。

 一瞬できてしまった隙、それをつかれてしまった。背にあるドアがいきなり開き、父はドアに押され部屋の中央へ移動する。

「あなた!」

 妻の緊迫した声に弾かれるように剣を鞘から抜き、振り替えるが遅かった、そこには部屋の扉に立ちふさがる一人の大男、その大男が大剣が振り下ろしていた。

  ザンッザンッ

 剣を握り締めた腕は切り落とされ、左肩から右の腰辺りまで浅く斬られた。

  ドサ

「っうぅぅ…」

 床に落ちた腕にはまだ剣が握られている、父は先に転がっていた腕の横にうずくまるようにして倒れ、体中を突き抜ける鋭い痛みに唸る。断面からは血が滴り床に池を作る。

「ごめんなぁ、一発で斬ってやらんで…くくっ」

 大男は床にうずくまる男にそう言い放ち、次ぎなる獲物に向かう、それはもちろん、女と子供。

「そうだ、お前にいいもんを見せてやろう、目の前で家族が斬られる。これほどいいもんないよなぁ?」

 剣を部屋の端に固まっていた三人に向け、振りかぶる。

「やめろーー!!」

  ギィン

 父は力を振り絞り立ち上がり、元は自分の腕だったものから剣をはぎ取り、馴れない左手で持った剣で、振り下ろされた相手の剣を受ける。

「ぐぅ…」

 やはりおされる、父の剣は段々下がり、ついには

「ふん!」

「かっ…!」

 剣が完全に負け、それと同時に相手が素早く剣を持ちかえ、心臓を貫く。

  ドサ…

「あなた!」

 目の前で崩れ落ちた夫を引き寄せ、必死に呼び掛ける。しかし、既に動かぬ人形になってしまっていた。

 気丈にも母は子供を連れ、家の裏口へと走る。しかし、ドールが固まってしまい動かない、母がドールを脇に抱えて走る。

「頑張るねぇ」

 男は剣を肩に担ぎゆっくりと追い掛けてきた、母は裏口に着くとウィークにドールを渡し、子供とドアを背に男に立ちはだかる。そして母は顔だけを向け、

「かあさん?」

「ウィーク、ドールと一緒にこの扉から出て、隣の村まで走りなさい」

 ウィークはドールとしっかりと手を繋ぎ大きく頷いた、その目には涙が溜まっている。

「何やってんのかな?」

 男が既に近くまで迫っていた。

「行きなさい!」

 その声にウィークは走りだすが、ドールが嫌がった。

「いや! わたしママといっしょにいる!」

「ドール! おねがいだからこっち来て!」

「やだぁ!」

 ドールは泣きながら母の下に行こうとするが、ウィークが開け放たれたドアの向こうから引っ張る。

「逃げようってか? んなことさせねぇよ」

 男が剣を構え歩み寄る。

「この子達は殺させない」

「ママ!」

 娘の声に母の心が揺らいだ、だが男は既に剣を下ろそうとしている。

「お兄ちゃんと…仲良くね」

 顔はそのまま前を見据えて表情を見ることはできなかったが、いつもの優しい声で私たちに言ってくれた。


「その後私たちは村から離れ、森の中で疲れて寝てしまったんだけど、近くの村の人が通りかかって助けてくれました。その人のうちで住みはじめて三日後、私たちの村の人は皆痛々しい姿で死んでいたと聞きました。そして村を襲うよう指示を出したのが、王族の人だと聞きました」

 ドールの目から涙が流れた。

「王族の人を恨んでる?」

 コイルの言葉にドールは首を振った。

「恨んでいないです。恨んではないけど、どうしてこんなことを起こしたのか、理由を知りたいです」

 涙を拭って、コイルを見る。

「今まで襲われたことは?」

「何度もあります。でも私たちは正々堂々とやりあってきました。私は自分の種族に誇りを持っていますし、隠さなきゃいけないほどいけないことをした覚えはありませんからね」

 赤い鼻のまま胸を張ってドールは言う、この子はもう大丈夫。そう二人は思った。


 その時、外で寝ていたウィークが一粒、涙を流し呟いた。

「お前は俺が守るからな、ドール」

朗報;小説家になろう〜秘密基地〜さんで、私、深海瑠璃がイラストを受け付けております。頼んでやろうじゃねぇか!と、勇気がある方は、同サイトのイラスト依頼の私のレスに書き込みくださいm(__)m

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