表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/35

第2話:盗賊団

 草村から出てきたのは男が三人。年齢はバラバラのようだが、まったく同じ青の服を着ている。右の男は黒髪で誠実そうで、真ん中の青年は茶髪で多少つり目。左の少年は金髪でたれ目なのが印象に残る。三人の真ん中にいた青年が一歩前に出た。

「俺の名前は晋蒔しんじ、次男!」

 晋蒔が名前を名乗りはじめた途端、両側の二人も後に続く。

「僕は哉芽かなめ、三男です」

 金髪の少年が少し前に出る。最後に黒髪の男が少し前に前進した。

「私は磔碼たくまと申します」

「三人合わせて、盗賊団『ブラックデビルズ』だぜ!」

 何かポーズを決めてきたのだろう、晋蒔が一人でポーズをとっている。両側の二人は冷たい目で晋蒔を見る。何故か可哀想に思ってしまう。

 そんな時、哉芽が晋蒔に小さな声で、

「晋蒔兄貴・・・引いてるよみんな」

「なっ・・・!?お前らがやんねぇからいけないんだろ!」

「僕らは嫌だって言ったじゃないか!」

 一人の声が大きくなると相手もつられて大きくなる。

「何いってんだ、俺が団長なんだ、団長の命令は絶対だろうが!」

 口喧嘩から段々手がでる、どこにでもよくある兄弟喧嘩の様子。兄弟喧嘩をのんびりと聞いているような暇はない、アイラがノイの袖を引っ張り、行こうと誘う。

「おい、二人ともいい加減にしないか!」

「だって・・・あっ!」

 ノイとアイラがこの場を離れようとしている姿を哉芽に気付かれてしまった。

「言っとくけどねぇ、私たちはあなた達の遊びに付き合っている暇はないの」

「遊びだとぉ!?」

「そうよ、盗賊とか言っちゃってるけど、本物なら自分から名乗らないし、三人じゃあ団体にしては少ないでしょ?」

 開き直ったかのように淡々と忠告しはじめるアイラは多少いらついていた。

「言いたいだけ言いやがって!遊びじゃないことを思い知らせてやる!!」

 晋蒔が手で合図をすると、磔碼と哉芽が鉄パイプを取出し、こちらに走ってきた。

「はぁぁぁ!」

「やぁ!」

 向かってくる二人を尻目にアイラはノイの後ろに隠れた。

「アイラ!?」

「ちょっと時間稼いで、詠唱が長いの」

「わっわかった」

 ノイはすんなりとアイラの言うことを聞く。

「精霊の神よ」

 ふわっ アイラが詠唱を始めるとまわりに風が吹きはじめ、アイラを中心として回る。

「共に戦い助け合うことを誓った者よ」

 アイラの目の前ではノイが懸命に戦いを挑んでくる三人をアイラのほうに行かせまいと食い止める。

「力を貸したまえ」

 大地から光が沸き上がり風と共にアイラを包む。

「我名はアイラ・インフェルノなり・・・」

 刹那、まわりの空気がピンッと張り詰める。

「クラッシュ・ハンマー!!」

 敵の一人、哉芽を指差す。ヒュー  哉芽の頭上が丸く陰る。 ゴン! 鈍い音が哉芽の頭から鳴る。 どさっ 哉芽はそのまま俯せに倒れこんだ。

 哉芽の上から巨大なハンマーが落ちてきて、そのまま哉芽の頭に衝突したのだ。

「すっげー・・・」

 思わずノイがこぼす。その場にいる全員が動きを止め、離れた場所にいるアイラに目を向ける。

「私は攻撃系を得意としてるの」

 彼女は得意げに胸を張る。

「哉芽!ちくしょう・・・!!」

 磔碼がノイに殴りかかる。 ガッ!!

「・・・いってぇ・・・」

 ノイは油断していた。磔碼の鉄パイプが頭にあたり、血が頭から流れ、あまりの痛さに膝をつき頭を押さえる。

「ノイ・・・?」

 表情が見えないノイに、後ろから恐る恐る声を掛ける。地に流れた血を見て力が抜けていく。

「大丈夫。」

 手を挙げ、アイラに答える。

「たっ磔碼、お前」

「そんなつもりじゃあ・・・」

 血の付いた鉄パイプを握り締め固まったまま顔は青ざめていく磔碼を晋蒔が腕を引く。

「ずらかるぞ!」

 言われるがままに磔碼は歩きだし段々とスピードを上げ、晋蒔は哉芽を担ぎ走る。

「ちょっと!待ちなさいよ!」

 くんっ 下から裾を引っ張られる。ノイが顔を上げている。

「いい、行かしてやれ」

「でも・・・」

「あいつらも傷を負った、おあいこだよ」

「・・・うん」

 それから二人はノイの傷の手当てをして、その場から離れた。ノイの傷は磔碼から受けた最後の攻撃だけではなかった、鉄パイプで攻撃してくる三人相手に一人で対峙していたのだから無傷というわけにはいかない。




 一本道を抜けると草花溢れる街に着いた。『アンブル街』というこの街にはノイ達のような旅人が多いらしく様々な格好をした人々が街を埋め尽くしている。市場には隙間なく人が押し込まれている。

「すっごーい!あっこの果物おいしそう」

「アイラ!そんなことしてる場合じゃないだろ、今日の寝床を探さなきゃいけないし、医療品も・・・!なんだこいつ!?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ