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第17話:片道の兄妹愛

ちわっす。今回はちょい危険な感じになってしまいました。。。兄妹が、こんなはずでは(泣)こんな始まり方ですが、このまま読んでいただけたら幸いです。

 ウィークが妹、ドールの精霊に憑かれやすい体質を和らげることが出来るものがあると言い、自分の寝室から出してきたものは、小さな箱に入れられた金の輪が二つ。

 アイラが箱から取り出して手にとってみる。

「これってピアス?」

 手に取った金色の輪のつなぎ目らしき部分を見つける。

「はい、このピアスは特注で作ってもらったんです。本当はもっとドールに合うデザインにしたかったんだけど、お金が足りなくて」

 照れ臭いのかなんなのか、周りに顔が見えないようにそっぽを向いているが、少しだけ顔が赤くなっているのが分かる。なんだか今までに見せたこともない表情で語りだすウィーク。

 妹のために特注で作ってしまうあたり、かなりドールのことがウィークにとって大切な存在なんだろう。

「お兄ちゃん、ありがとう!」

 ドールは立ち上がってウィークに飛び付いた。さらに彼の顔は赤くなる。

 というか、だいの大人の二人が一番子供っぽいです。ちなみにウィークは二十一、ドールは十九。

 その時、コイルが手をたたく。

「はいはい! お二人が仲がいいのは分かったから、コレは一体何の鉱石で出来てるの?」

 コイルはわざと言ってみたのだが、

「あ、はい。それはこれから行く『光海』だけに生息する貝の殻です」

 ウィークはコイルの質問に対しあくまで普通に接する。ドールはまだ兄にとっついたままだ。

 ノイがアイラからピアスを取り、光にかざしながら感心したように言う。

「へぇ、それってすっげぇ貝だな」

 貝でできたピアスは光を受けると、少し金色がかった半透明になる。

「それはともかく。ほら、着けてみなよ」

 ウィークはアイラとノイからピアスを取り返し、ドールの手の中に渡す。

「うん!」

 ドールは今着けている小さな宝石のピアスを外し、兄からプレゼントされたピアスを耳に着ける。

 耳に着けられたピアスは彼女に良く似合っていて、余計な装飾なんて逆に無くて良かったと思うほどだ。

「でも本当に抵抗力がつけられたか分からないわよね」

 そう言うとコイルはシルフを呼び出す。

「はいな! 何ですか?」

「シルフ、ドールの中に入ってみて」

「了解!」

 指示を受けて、シルフは勢い良くドールに体当たり。しかし、シルフは弾かれて机の上に落ちる。

「無理ですぅ〜」

「ありがと、お疲れさま」

 机の上に俯せているシルフをさっさと還すコイル。

「これでドールも連れていって良いですよね」

 ウィークが笑顔でドールの頭を右手で撫でながら訊ねる。ドールは兄の手が嫌なのか、頭から手を外そうと必死。

「そうね。実践して確認が取れたから、同行をお願いしようかしら」

「ありがとうございます!」

 ドールは深々と頭を下げて礼を言った。

「ところで、これからどうすんの?」

 ノイが頬杖を付きながら言った。

「さっき言った通り、これから何人もの精霊達に会いに行きます。そして、仲間になっていただけるようお願いして行きます」

 ノイの問いに一息で答えるコイル。アイラは既にどうにでもなれ、という感じでため息。

「そんで手始めに、この島のもう一人の精霊『光精霊・ボーグドッグ』にお会いしに、『光海』っていう岬に行くんだ」

 既にコイルから紙を見せられていたため、ウィークが更に詳しく話してくれた。

「ふーん」



 ノイが理解したのか、していないのかは明確ではないが、こういう経緯があり、今シード兄妹が共にいるのです。

「さぁ、着いたぞ。ここが『光海』だ。」

「暗くてよく分かんねぇな…」

 そうこうしているうちに目的地についたようです。陽は完全に沈み辺りは暗く、頼りになるのは月の光だけ。

「とにかく、今日は遅いし疲れたから明日の朝会いに行きましょ?」

 コイルは鞄の中から何かを取り出しながらみんなに提案する。

 賛成したのか、ドールとアイラはその場に座り込んでしまった。

「あったあった」

 コイルが取り出したのは手ひらサイズの布地の塊。

「なんすか? それ」

 ノイはコイルの手のひらに乗っている物を指差して言った。

「これ? テントよ」

「テント!? これが?」

 そう、この布地の塊はテントなのです。この塊をぽいっとそこら辺に投げるとスイッチが入って、三人用テントになっちゃうんです。

 もちろん、畳むのも楽々。テントの端にある紐を引っ張ると布地の塊に、王国の技術開発局が最近発表した優れ物。

 と、宣伝はここまでにして。

 コイルはさっそくテントを建て、アイラとドールの背中を押す。

「さぁ、寝ましょうか」

 しかし、テントが建っているのは一つだけ、まさかと思いながらもノイは聞いてみる。ウィークもちょっと気になるらしく、耳を傾ける。

「あのー、もしかしてテントって…」

 するとコイルはにっこりと笑って、

「一個だけだけど?」

 やっぱり。という顔をするノイとウィーク。ウィークは無駄だと分かっていたが聞いてみる。

「俺らはどこで寝たら」

 今度はテントに入っていたアイラが顔を出して、

「外。野宿」

 淡々と言う。そしてテントの中に戻り、代わりにドールが顔を出し、

「毛布使って下さい。おやすみなさい」

 なんだか天使のようなほほ笑みを向けてくれたが、言っていることは物凄くきつい。ドールが毛布を兄に投げ付けるように渡し、完全にテントの中に入ると、コイルが素早く入り口を閉めた。

 この女性達の辞書に優しさという言葉はないのか。

「寝るか」

 ウィークが妹に渡された二枚の毛布を手に取り、ノイに一枚を差出しながら言う。

「そうだな」

 ノイは毛布を受け取り頷く。二人はテントのすぐ近くの岩の横に毛布を敷いて寝ることにした。

 獣や山賊が襲って来ることも考え、交代で見張りをすることを決め先にノイが眠りに着くことになった。



 次の日、太陽が昇り始めた頃女性達がテントから出てきた。外でこの時起きていたのはノイだった、今日の先頭に備え体を動かしている。

 ウィークは毛布を体に巻き付け、岩に寄っかかるようにして右腕で膝を抱えて座って寝ている。剣は直ぐに抜けるように左手に持たれていた。

 直ぐにウィークは起こされ、全員で昨日街で購入した保存食(乾燥パンや鳥肉の塩漬け)を食べ、早速岬の先端まで行く。

「わたしに何用だ?」

 声がしたのは崖の下、そちらに目を向けると白い犬が崖の下から宙に浮いて出てきた。

「ボーグドッグ様ですか?」

 アイラが一歩前に出て訊ねた。

「いかにも。そなたらはあの悪魔を再び封じるために旅をしておる者達であろう?」

 ボーグドッグは全員の姿を確認するとアイラを見て言う、彼女はやはり驚いたようで目は見開かれていた。

「わたしの力が欲しいのだろう? 協力しても良いが、一度手合せ願おうか。わたしは人間は信じられぬのでな」

 どうやらこちらの考えは全て筒抜けのようで、言いたかったことも言われ、しかも相手が勝手に自己解決してしまったのでまったくもってついていけない。

 その時、例のごとく勝手に出てきた精霊が一人。

  ポン

「あかんなぁ、いつになっても変わらへんなぁあんさんは、もうちょい周りに気ぃ使えや」

 人間の姿で出てきたクロックキャット。そしてそんな彼を、顔をしかめて嫌そうに見るボーグドッグ。

「うるさい…貴様には関係無かろう」

「関係あるわい! こいつらはわいの主人やさかい、主人を困らすようなやつに何も言わないで居れるわけ無いやろ!」

 思わずクロックキャットが叫ぶように言うと、ボーグドッグは耳をふせて訴える。

「怒鳴るな、頭が痛くなる」

「何やてぇ」

 過去に二人の間に一体何があったのだろうか。

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