第15話:VS ドラゴン
こんにちは、こんばんわ、おはようございます。毎話来てくださっている方も、初めて読んでくださる方もありがとうございますm(__)m知識不足ながらここまでやってこれました。もちろんまだまだ続きますし、私もやる気満々ですのでよろしくお願いします。
「あなた…誰?」
アイラのその言葉にドールの影が反応し揺れる。
別に後ろから歩いていたノイ達も、ドールの異変に気付いて駆け寄ってきた。
「人間よ、わしに何を望む? わしはおぬしらに従うてみようかと思っておる」
「ドラゴン…なの?」
ドラゴンに憑かれたドールはにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「おい…」
声はウィークだった。声色はとても低く、怒りに満ちていた。手はすでに剣の柄を掴んでいる。
「ドールから離れろ…」
「ほぅ…確か、西の守人の子だな」
ジャッ
剣を鞘から引き抜き、切っ先をドールに向けた。
「早く離れろ!」
「おぬし、わしに剣を向けるとな? よかろう」
シュゥ
ドールから黒い煙のようなものが出てくる。
とっさに全員が身構える。
「ちょうどおぬしらの力を試そうと思っていたところ」
大量の煙はドールから放れ、宙に浮く。
ドールは支えが無くなったのか、膝から地面に崩れた。
「いたたた…」
煙は大きな蛇のような形を型取り始める。
「ドール!」
カシャン
そんなドールの姿を見るなりウィークは剣をしまい、ドールの元に駆け寄った。
巨大な蛇の煙は煙では無くなっていく。 パキキッ パキッ 煙は固まり尾のほうから色が付き始める。
「私は大丈夫。ほら、早く構えないと」
兄が自分の横に居るのが分かると、自分の意志では思うように動かせない重い体を隠すため、ドールは気丈に振る舞って見せた。
形を成してきたものは緑色の鱗をまとい、鋭利な爪と牙をむき出しにし、宙に漂っていた。
「あぁ…」
ジャッ
本当はドールの変化に気付いていながら、ドラゴンに再び切っ先を向ける。
「皆さん! ドラゴンは闇・炎の属性です!」
「了解!」
ドールはドラゴンの属性を伝えると、壁を伝い、なんとか立ち上がる。
「ドール、あなたは後ろに下がって」
アイラは前を見据えたまま冷たい声で言い放つ。
「! アイラさん、私も戦います!」
「そんな体で?」
「……」
少しだけ振り返ったアイラから見える冷たい眼がとても痛い。だが、アイラはずっとドラゴンを見据えていたはず、ドールを背に。
「大丈夫、後ろに下がって」
「…はい」
ノイのやさしい声と笑顔でゆっくり後ろに下がる。肝心なときに役に立てない自分が歯痒い。
ドールが安全なところまで下がりきったのを確認すると、ノイが先手を打つ。
「雷神拳」
黄色いエネルギーに覆われた右の拳を勢い良く前に突き出す。突き出された拳からエネルギーが放れ、ドラゴンに向かっていった。
ガァン!
「ふっ、痛くも痒くも無い…」
確かにドラゴンに当たったはずなのだが、相手には傷は何一つ着いていない。それどころか、片手で振り払われてしまった。
「シルフ! クロックキャット!」
コイルは急いで二人(匹)を呼び出す。
ボフッ
「は〜い! お呼ばれですねぇ」
小さな精霊は陽気に、
ボンッ
「フン…負けへんで!」
黒猫の精霊は鼻で笑う。
どちらもドラゴンより、かなり小さいのにもかかわらず気負いがない。
「おぉ、久しいな。何年ぶりだ? クロックキャット」
「さぁ? 忘れたな」
龍と猫の会話、ありえない組み合わせですが対等に話すその姿。
実は洞窟に入る前にクロックキャットとシルフにドラゴンの事を尋ねたところ、
『ドラゴンさんですか?』
『あいつのことはよお知っとる。任せときぃ』
だそうだ。
「お前ジタバタしとらんではよう仲間にならんかい」
なんか、強制的。
「いきなりだな、だがお前もわしの性格知ってるだろう? 残念だが主となろう者の力量を見るまでは従えない」
「やろなぁ…コイル! やっぱムリやった」
はぁ、とため息を吐きながら自分の主であるコイルの向くと、無責任な言葉をはく。しかも、コイルを呼び捨てで、二人の間に主従関係なんて一切無いんだろうか。
「はぁ!? あんたが任せろとか行ったんだから何とかしなさいよ!」
「ムリ言わんといてぇな」
首を横に振りながらドラゴンに背を向け主人の下にもどる。
「…せやけど、このままっちゅうのもわいの立場無いからな、ちぃと頑張るかいな…」
クロックキャットは歩を進めながらそう呟くと振り返る。
「稲妻!」
ドォォオン
「ぐっ…」
いきなり術を発動させられてはドラゴンも対処のしようがない。
「わいの力は主人の力。わいが戦ってもええやろ?」
「…そうだな、しかし、その頭にくる性格変わってないな」
「おおきに」
ドラゴンは目を閉じ淡々と話すものの、先の攻撃で身体中の鱗は焼け、剥がれ掛けている所もある。痛々しい。
ドラゴンが術を発動させた。
「ファイヤーブレス!」
ガパっと開かれた大きな口、咽の奥まで見える。しかし次の瞬間、その奥から赤々と燃える炎が現われこちらに飛び出してきた。
ゴォォオオオ!
炎は周りの岩や空気を熱しながら進む。
「バリアー」
すかさずクロックキャットは目の前に巨大な防御膜を張る。
バァン
炎は勢いづいたまま膜に激突する、行き先を阻まれた炎はその場に留まる。
それは消えることなく周りの気温を上げ続ける。クロックキャットのおかげで直撃は免れたものの、じわじわとくる暑さもきついものがある。思わず声を上げたのはノイだった。
「あっつ!!」
だらだらと止めどなく汗が出る、このまま十分でもここに居たら脱水症状で倒れてしまいそうだ。
「ねぇ! どうにかなんない? このままじゃ薫製? 蒸し焼き? になっちゃうよ」
「そないなこと言われてもなぁ…」
手で自分を扇ぎながらクロックキャットに訴えるアイラ。人間達は暑そうにしているが、クロックキャットはいたって普通。
「ちょっとぉ! みなさん私をお忘れでは? 私の風でビューんと」
「おぅ。忘れとった」
「ショックぅ〜」
シルフもいつもと同じテンションで喋る。精霊は基本、暑さや寒さは感じない。
「じゃあその後は俺が」
「俺にやらしてくれないか」
「ウィーク」
ノイの言葉を遮り申し出るウィーク、ただ前だけを見据えて。
「俺が奴に売ったケンカだ、俺がしめる」
彼は少しだけ後ろを振り返った。それは、後ろに居るノイやアイラを見たのではなく、その後ろのドールの様子を確認したのだ。
ドールはぐったりとして、岩壁に身体を預けている。
「わかった」
ノイはウィークの気持ちを察し、答えた。ウィークは小さく、ありがとうと言ったようだ。
「いっきますよぉ!」
「3・2・1、で解くで。3…2…」
カウントが始まるとシルフは力を溜め、ウィークは柄を握り直ぐに走りだせるように足を前後に開き、体勢を低くする。
「1!」
「やっ!」
ゴゥッ!
シールドを解除すると同時に突風が洞窟内を駆け抜ける。炎は風に押されて主人の下に戻っていく。
「ぬっ。風で飛ばすか、だが隙だらけでは…何!」
ドラゴンは隙を見せた。
「はああ!!」
一人の剣士が既に自分の懐に入り込んでいた。剣士はドラゴンを睨み付けたまま飛び掛かる。
「二連斬!!」
ガガッ ドオン
ドラゴンはバランスを崩し、倒れた。
ウィークの攻撃は相手に深手は負わすことはなかったが、かなりのダメージを与えられたようだ。
「うぬ…よかろう。仲間になろうではないか、して、誰に仕えれば良いのだ?」
ドラゴンはよろりと身体を起こし訊ねる。体中の傷は既に回復を開始していた。どうやら周りに居る小精霊が治療を行なっているようだ。
「あ、私に」
アイラは促されるように前に出る。ドラゴンはじっとアイラを見てから、
「ふむ…よろしく頼むぞ、主人」
と言った。
そして、無事アイラはドラゴンと契約を結ぶことができました。ちなみにアイラの精霊収納はピアスだそうです。
五人は新たな街を目指して歩きだしました。…ん? 五人? その理由は次話に。
さてさて、次はどんな出会いがあるのでしょうか。
ごめんなさい。また長くなってしまいました。これからも読んでいただけましたら幸いでございます。では。