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第12話:幼き心と小さな燈

滞納。。。懲りないですねぇ、ワタシ。その分、ちょっと長いので覚悟しといてください。このまま読んでいただけたら幸いです。

 ここはグランド王国の城内にある広々とした庭園、草木が生き生きと太陽の陽を浴びて美しいその緑を見せ付ける。中央にはもちろん噴水、鳥達が水浴びをしてはしゃいでいる。

「クローゼ様、どうしたんです?隣にきてください」

「あぁ」

 赤や黄色のバラが咲き誇る中に一つの青い花。あまりにも美しく、はかなげで見とれてしまった。

 彼女の傍に行き腰をおろすと、彼女はすぐに口を開いた。

「そういえば私の名前をお教えしていませんでしたわ、私はシフォン・ル・マラディアですわ」

「オレはノイ・クローゼ、クローゼ様なんて堅苦しいからノイでいい、よろしくな」

 ノイは当たり前のこと、思ったことを言っただけなのだが、なんだか違う意味でとられてしまったらしく彼女の頬はみるみるりんごのように赤くなっていく。

「ノイ…」

 ぽそ、っと確かめるかのように呟く。

「そ、ノイ」

 それにやさしく応えるノイ。

「あの、ノイ」

「ん?」

「私のことは、その…」

 彼女は今自分が考えていたことをノイに言うのが恥ずかしいのか、段々と声は消えてしまうほど小さくなる。ノイはそんな彼女を見てなんだか苦笑。彼女が何を言いたいのかは分からなかったが、彼女を落ち着かせる意味も含めて話し掛ける。

「じゃあ、シフォン。って呼ぶよ、君のこと」

「は、はい」

 逆効果だったらしい、シフォンの顔は真っ赤、そんなような会話がノイがコイルに呼ばれるまでつづいた。




 三人はシフォンと別れ、買い物は事前に済ませておいたので、すぐに王国を出て『緑の泉』に出発する。

 そして今は王国の門の前。

 全員の準備が整ったので歩き始める。場所が分かるのはコイルとアイラだが、アイラがなんだかふてくされているので、コイルを先頭にノイとアイラが付いていく。

「コイルさん!『緑の泉』ってどこにあるんすか?!」

 何故だか辺りは風が強く、風下なのでビュービューうるさいため、前を歩くコイルに声を張り上げて尋ねる。

「あぁ、実は王国の裏手にあるの」

「近っ!!」

 逆にコイルは風上なため、声を張り上げずに話せる。

「王国特別保護区域だかんねぇ、『緑の泉』は六大大精霊の青龍様がお住まいになっていらっしゃるから王国で保護されてる区域なの」

「ふーん。それじゃあ、なんか許可もらわないといけないんじゃ…」

「わかってますって、だからわざわさ国王様にお会いしたんでしょ」

 そうこうしているうちに目の前に小さな森が見えてきた。

「もしかして、あれが『緑の泉』ですか?」

 チカッ…ポンッ

「ですよぉ、あれが私たち風精霊の故郷です!」

 突然コイルのブレスレットが光ったと思ったら、シルフが現われた。彼女は何故かウキウキだ、故郷に行けるからだろうか。

「シルフ、答えてくれるのは嬉しいが…どうやって出てきた?」

「…えへ」

「もどれーーーー!!」




 そして、緑の泉の中に入るとそこはやはり名前のとおり、緑ばかりだ。そのお陰で空気はおいしいわけだが、緑以外には湧き水で出来た小さな川があるだけ。

「なぁ、コイルさん。青龍さんにいつ会えるわけ?」

 緑の泉に入ったものの、青龍の下に行くため小一時間は歩いている。

「もうちょっと頑張って!あと少しで『湖』に着くはず、そこに必ずいらっしゃるわ」

「へーい…つーかアイラ。そろそろふてくされてないで普通になってくんない?」

「…………」

 ノイは目の前を歩いているアイラを気に掛ける。しかし、依然とアイラは何も話しはしない。

「…コイルさん、アイラは何に怒ってるわけ?」

 思わずコイルに助けを求めるも、返ってきた言葉は。

「自分の心に聞いてみなさい」

「??」

 のみ。何が何だか分からないノイ、とにかく考えるが、アイラの機嫌を損ねるような事柄が全然出てこない。ノイが悩み歩いていたとき、コイル緊張した声が意識を現実に引き戻した。

「ノイ、そろそろ気を引き締めてよ…」

 目の前を見ると、綺麗な泉が姿を現していた。

そして泉の横には一人の女性が立っていた。彼女は藍色の腰に届くほどの長い髪が印象的で、服装は水色が基調のワンピースといったような格好でベルトだけは緑色。背はシルフとは違いアイラと同じくらいはある。額には不思議な紋様が刻まれている。ジグザグに真ん中に横一線入っている、そして優しい緑色をしている。

「あの方が青龍さまよ」

 女性の周りと他では空気が全然違うように見えるのはたぶん気のせいではないだろう。

 三人が遠くから青龍に見とれていたが、それに青龍が気付きこちらを向き微笑んだ。

「コイル・セラフィー、アイラ・インフェルノ、そして、ノイ・クローゼ。長旅お疲れさまです、どうぞこちらに」

「「!?」」

 三人は目を見開く、まだ自己紹介すらしていないのにすでに名前を把握している青龍に驚いたからだ。

「どうしたのですか?」

 青龍も三人が全然こちらに来ないのを不思議に思ったのだろう、首を傾げる。

「い、いえ。何も…ありがとうございます、青龍さま」

 まず、一番にコイルが青龍の下に歩み寄る。それと同時にコイルのブレスレットが輝きシルフが現われる。

「青龍さま!お久しぶりですぅ!」

 シルフは挨拶もそこそこに、青龍の下へ飛んでいく。

「失礼いたします」

 それだけ言い、アイラも歩み寄る。

「し、失礼します!」

 一方のノイは緊張しまくり、ガチガチに固まってしまった体でゆっくり青龍に近づいてゆく。

「ここにいらしたということは、シルフの未知なる力を欲しているのですね?」

「はい」

 青龍の確認にしっかりとした声で答えるコイル。

 青龍はゆっくりと手をシルフにかざしはじめた。手は青色の光に包まれ、次第に緑色に変わる。それを見て青龍はコイルに向き直り笑顔で告げた。

「…よろしいでしょう。ナジュールに新たな力を授けましょう。ユルザール、あれを」

「はい、ここに」

 次に青龍が目を向けた先には、自分の半分くらいはある深緑色のガラスの付いた指輪を持つ精霊がいた。背はシルフと同じ大きさだが、髪は肩ぐらいまでしかなくシルフと同じようにやはり緑色。シルフより遥かに大人びて見える。

「!ユルザール姉さん!?」

「遅かったわね、ナジュール。私はあなたより一年早く力を授かったわよ」

 真ん丸の目をさらに丸くして驚くナジュール。それもそのはず、彼女、ユルザールはナジュールの血の繋がった姉妹。会うのはユルザールが人に仕え、森を離れてから四年ぶり。

「ユルザール。指輪をコイルさんに」

「はい」

 スイ、と軽がるとコイルの目の前まで指輪を運ぶ。

「コイルさん、どうぞ受け取ってください。それを身につけていればナジュールの内に秘められた力を引き出してあげることができます」

 ユルザールから指輪を受け取り、指にはめている途中で手が止まる。

「引き出す…?ということは、元からシルフには力があったの!?」

「ええ」

 ちょっと混乱気味のコイルににっこりと笑顔で対応。

「じゃあなんでわざわざこんな…」

「コイルさん、実は私達シルフは生まれた時から力は与えられているんです。」

 ここでズイッとユルザールが近寄り説明、やはり姉妹だ。

「けれどその力は巨大過ぎて一人ではコントロールできない、そこで生まれた時に力をその指輪に封印してしまうのです」

「これに…」

 コイルの指に完全にはめた指輪を三人で覗き込む、指輪は変わらず深緑色を保っている。

「はい。シルフそれぞれに力の形は違います。私の力の形は『盾』ですが、ナジュールは『刄』です」

「『刄』…」

「ナジュールの力はこの先、必ず役に立つでしょう」

 何か意味ありげな言葉と笑顔でこの話は終わる。




「ありがとうございました」

「お気を付けて」

 コイルは深々と頭を下げてお礼を言い、それに応えるように青龍だが、ノイとアイラはせかせかと先を行ってしまう。は笑顔で手を振り見送る。

 あの後、コイルはシルフ(ナジュール)と共に青龍から詳しく力の使い方などをきき、ノイとアイラはユルザールから旅に必要そうなものを受け取った。

「青龍さま…」

 不意にユルザールが青龍の腕を引っ張る。

「あの方達、まだお若いのに…」

 不安そうな顔で三人を見送るユルザール。彼らのまだ幼い肩に乗っかった重い運命を見て、彼らに会う前よりさらに考えてしまう。この旅で彼らの未来が潰されてしまうのではと。

「これも運命。レッド・セラフィー、ゼルダル・クローゼ、シャイン・インフェルノ同様、全てはもう変えられぬ運命の歯車に巻き込まれてしまっているのです」




 風は若者を惜しみながらも、次の街へと若者を促してゆく。

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